094 アウストラル王国王宮 (下)
「こんちはー」
突如国王執務室にのんびりした声と共に子犬を抱っこしてトカゲのようなものをたけた女児が現れた。
剣を女児に向かって構えた王妃、
「誰だ?」
「冬だよ。お取り込み中だった?ごめんね。エルちゃんからの手紙を持ってきた」
邪気がなさそうなので剣を引いた王妃。
「エルちゃんとはだれだ?」
「恐妻家で愛人持ちのエルダーだよ。手紙の宛名はマックとクレスさんだよ」
剣を納刀した王妃。
「エルダー ハインツ クラッセンか?」
「当たり。はいどうぞ」
力関係を察した冬、手紙を王妃に渡す。
「やつは無頼のくせに字だけは奇麗だったな。確かにエルの筆跡だ」
「なんて書いてある?」
「黙っていろ」
黙ってしまった国王。
「冬ちゃん、私の部屋に行こう」
「いいよ」
王妃は剣を投げ捨てて冬達と王妃付きの侍女と部屋を出た。
「ここは国王執務室?」
「そうだ。無能の部屋だ。今日から暗愚の部屋と名前を変えた」
「エルちゃんよりひどそうだね」
「エルは愛人を作ったの?」
「そうだよ。職場で手近な秘書を愛人にした。愛人を秘書にしたのかどっちだかわからないけどね。奥さんに内緒みたいだよ」
王妃が笑った。
「気付いているわ」
「え、そうなの?」
「ほら着いた」
王妃の部屋に入る冬達。
「座って。チコは無事なのね」
「うん、無事だよ。女王と一緒にいる。夕方にはこっちに来ると思うよ。詳しい事はエルちゃんと女王が調べてくるよ」
「そうか。待っていよう。ところで冬ちゃんが連れているその子達は?」
「フェンリルとミニドラゴンだよ。マロンとドラ一だ。ドラ二はいま秋ニイの所にいる」
「どうやってここに来たの?」
「転移だよ」
「転移なんて神話の世界よ」
「お父さんとお母さん、秋ニイ、あたし、マロンとドラが出来るよ」
「凄いわね」
「うん」
「どうやってここがわかったの?」
「街道のどん詰まりが海でその手前の街に王宮があるって聞いたからね」
「でもピンポイントで転移してきた」
「この子だよ」
何か小さい虫が王妃の目の前に飛んできた。
「これは?」
「秋ニイが作ったてんとう虫型情報収集探察装置だよ。隠密って呼んでいるけどね」
「作った?こんな小さなものを」
「そう。秋ニイは魔道具馬鹿だからね。おだてるとすぐ作る。場所がわからないから隠密に調べさせて転移してきた」
「素晴らしいわ。でも世界が崩壊するわ。暗愚には黙っていてね」
「うん。クレちゃんはエカちゃん並に良く分かっているね」
「クレちゃん・・・。エカちゃんとは?」
「エカチェリーナ女王だよ」
「なるほど」




