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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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091 南の国境の街リーメス (3)

「さて侍従さんと面会するか」


「じゃ僕は街に」


「秋人、お前も来るんだ」


「僕は特使じゃないよ」


「ふん、エルダー補佐とか誰か言っていたな。思い出した。お前の母親だ。反対しなかったからエルダー補佐だ。行くぞ」


「ええええ。失敗した。今度は反対しよう」


「反対できるか。夏殿は恐いぞ」


「・・・・」


「ふふふふ。それはそれとして、王子の確保や侍従の手引きの話は黙っていろよ」


「それはそうだ。面白そうだ」


 二人して浮き浮きと侍従の部屋へ兵に案内されて行く。


「お邪魔する」


「どちら様で」


「冒険者組合本部長のエルダーだ」


「チコ王子の侍従のセベロと申します。ところで冒険者組合の本部長さんが何用でしょうか」


「行方不明の王子様の捜索を頼まれましてね。ご存じのことを教えていただければと思っています」


「そちらの若い方は?」


「俺の補佐だ」


「王都から?」


「王都は遠い。まだ事態を知らないだろう。近くまで組合の監査に来ていたので捜索を頼まれてしまった。近くにいたのが運の尽きだ。しょうがないから補佐と捜索だ。迷子、迷い猫も冒険者組合の仕事といえば仕事だが魔物相手の方が気が楽だ」


「それはそうでしょうね。同情します」


「ありがとうよ。それで王子様のことを聞かせてくれるか」


「はい、国内を見て回りたいとの王子様の希望で、まずはこちらの国境の視察に来ました。隣国は友好国でまったくトラブルがない国境ですから最初の視察にはちょうど良いとの判断でした」


「ほうほう。それで」


「こちらから見るとリーメスの川向こうまで来ました。ちなみに我が国ではこちらは北リーメス、川を挟んだ我が国の街は南リーメスと呼んでいます」


「なるほど」


「それから王子様が北リーメスに行って見たいとの希望でしたのでこちらにやってきました」


「ふむふむ。王子様と二人かい?」


「はい、そうです。同じ街のようなものですから随行の者は残して二人でこの高級旅館に泊まりました」


「それから」


「朝起きると王子様はいなくなっていました。朝の散歩と思いましたがなかなか帰って来ず、駐留の軍に届けました」


「なるほど。それで捜索が始まってまわりまわって冒険者組合にも協力依頼が出されたのか」


「王子様が心配で心配で」


「そうかい。誘拐とかではなく単に見当たらなくなったと言う事で良いのか」


「はいそうです。誘拐なのでしょうか」


「わからんなあ。何か心当たりでも」


「いえ、心当たりは全くありません。そろそろ国に帰って報告しなければなりません」


「そうかい。王子様が見つかるまでここに滞在だな」


「あとはお任せして一刻も早く報告しなければ」


「あれ、たしか急使を出したと聞いているが。王子様が見つかって身内がいなければ心細いだろう。それで国王陛下にはなんと報告したのか?」


「もちろん、朝起きたら見当たらなくなったと報告しました」


「へえ、それに相違ないか」


「・・・・もちろん」


「急使を送ったのならここで待っていてくれ。そうだな、秋人、侍従殿が王子様がどうしたか心配で窓の外を眺めてうっかり転落するといけないな。格子をつけておいてやろう」


 にこにこと窓に近寄り外をのぞく秋人。一階である。窓枠を跨げば地面だ。


「本当だ。これは危ない。頑丈な格子をつけておこう」


 秋人が格子を窓につける。牢獄のようになった。


「侍従殿、王子様がいなくなってしまうような宿だ。暴漢が押し込まないようにドアの外も軍に見張をするように頼んでおく。安全、安心の部屋だ。心を落ち着けて待っていてくれ。外は危ないから部屋からは出ないように。食事も部屋まで運ぶように手配しておこう」


「・・・・・」


「では秋人、王子様探しに行こう」

「はいはい」


「お待ちください。私も探しましょう」


「いやいや、土地勘もなく地縁血縁もないだろう国境の街のことだ。ここで待っていてくれ」


 ドアを閉めた本部長。

「おい、ここも外から鍵が掛かるようにした方がいいな」


「はいよ」

 秋人がフックを内側からはずせないようにしてドアにつけた。


 もちろん軍に重要参考人として部屋から逃亡しないように見張っていてもらうように頼んだ。


「さてそれでは橋を渡って隣へ行こう」


「南や北リーメスと言っていた」


「こっちはリーメスとしか言っていないが」


「北も南もなくリーメス?」


「そうだ。昔は一つだったんだが、真ん中を川が突っ切って二つに分かれた。元は同じ街だ」


「真ん中あたりが低かったんだね」


「小さな支流が流れていたが大雨が降ってから本流になった。それから堤防を築いて国境が確定した」


「へえ、そうなんだ。馬車で行く?」


「いや、歩いていこう。歩くのもなかなか良いもんだ」


 橋のたもとには警備兵はいなかった。


「何で国境なのに誰もいないの?」


「元は一つの街だったからな。今も橋に国境検問所はない」


「国境警備はどうやっているの?」


「街道が街に接するところが警備所だ。川を挟んで北と南に一ヶ所、その間に街があり、街はいわば両国の共同管理というか自治だな」


「ふうん」


「したがって今回のような事があると川の両側の街が一緒に大騒ぎになるんだ。ほらあっちの街もぴりぴりしている」


 橋を渡って輪中の街に入る。


「どこに行くの?」


「王子の一行が泊まれるような宿は一つしかない。その宿だ」


 少し歩いた。衛兵が玄関を守っている建物がある。


「あそこだ。衛兵が警備しているから間違いない」

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