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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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090 南の国境の街リーメス (2)

 馬車と馬を転移させてきた冬。

「ただいまー」


「お、ありがとう」

 本部長が馬車に乗り込み特使らしい服に着替えた。影も交代で馬車の中で着替える。


「どうだ」

「馬子にも衣装だ」

「ふん。俺は貴族だ」

「それじゃ無頼貴族にも衣装だ」

「無頼貴族ではない。貴族の無頼だ」


 冬は本部長と秋人の言い合いは低レベルだと思う。

「どうでも良いけど行くよ」

 冬の掛け声で馬車が動き出す。


 近衛将校の格好をしたコレットと近衛兵の扮装をした影が馬に乗り先導、秋人、冬、本部長が乗った馬車が続く。御者は影だ。馬車の後ろは影が二騎。影は皆近衛兵の扮装だ。


 土手の坂を上って下って検問場所に近づく。

 王家の紋章入りの馬車だから兵がすぐ寄ってきて誘導を始めた。途中まだ検問を通過していなかった副隊長と兵を連れて検問を通過、街へ入った。

 検問の兵が知らせたのだろう。先発隊が迎えにきた。


 本部長一行は女王が泊まる予定の宿に案内され確保してあった部屋に入った。


「それでどうなっている」


 本部長に聞かれた先発隊。


「はい。王子といたのは侍従です。お忍びで川向こうの街まで来たのですが、王子が隣国の街リーメスが見たくなって侍従に無理を言って橋を渡ったそうです」


「それは誰が言っているのだ」


「侍従がそう言っています」


「ふん。無理を言って来たと言っているのか。たまたま来たのを侯爵家があらかじめ知っていて侯爵家の執事長まで来ていたのはおかしいだろう」


「確かに。侍従に会いますか」


「まだいい。それでアウストラル王国への連絡はどうなっている」


「侍従が連絡をしたと言っています」


「連絡した内容が問題だな」


「南の国はアウストラル王国と言うんだ」


「秋人は知らなかったろう。普通は南の国としか言わない」


「へえ、そうなの」


「王都はプロスペリータスというが、王都としか言わないのと同じだ」


「ふーん」


「先手を打つか。冬ちゃん、アウストラル王国の国王に手紙を書くから届けてくれるか」


「いいよ。だけど何処にいるの?会った事がないからわからないよ」


「王都からの街道は川を越えても南へと続く。そのどん詰まりが海だ。その手前に大きな街がある。そこが王都。王は宮殿にいるだろう」


「ふうん、王の名前はなんていうの?」


「王がマクシミリアノ アウストラル、王妃はクレスセンシア。囚われた王子はチコだ」


「わかった」


「多分急使が走っているだろう。その前に届けなければ不味い」


「おじさんは抜けているんじゃなかったんだ」


「冬ちゃん、今ごろ気がついたか」


「うん」


 がっかりする本部長。ぶつぶつ言いながら手紙を書き出した。


マックとクレスへ

 お前達の息子のチコが我が国のロカーレの街で囚われていたから確保した。無事だ。

 謀反の取引材料にしようとしたらしい。誘拐犯一味、謀反一味は女王が対応する。すぐ殲滅するだろう。

 誘拐された経緯がわからない。こっちも調べるがそっちでも調べてくれ。

 それじゃあな。

 なお、使いは王家の客人服部家の冬姫様だ。

    ○年○月○日

                 エル


「こんなところだろう」


 手紙をのぞき込んだ冬。


「あれ、マックとクレスさんってマクシミリアノ国王?クレスセンシア王妃?親しいの?」


「ああ、マックは次男坊でまずまず優秀なんだが、国王の次男がまずまず優秀だと問題があるからな。俺達と組んで冒険者をやっていた。長男は優秀だったが生まれつき体が弱く嫁さんをもらう前に亡くなってしまった。それでやつが呼び戻されて王太子になって父親が亡くなって国王になった」


「よくある兄弟の派閥抗争の毒殺とか」


「それはないな。王宮から出て無頼の俺と飲んだくれの冒険者をやっていたのだから貴族は誰も次男坊に近づかなかった」


「俺達って他に誰がいたの?」


「それはお前、その、家の・・・」


「奥さんだ」


「そうだ」


「ゲロ吐いて世話してもらって頭が上がらないんだね。良く愛人を作ったね」


「またそれを言う。優秀な女房のそばにいたんではたまには息抜きが必要だ」


「甲斐性があればいいか」


「そうだ。きちんと生活費は渡しているぞ」


「性活費なんてね」


「お前、幾つだよ」


「他に誰か一緒にいたの?」


「マックの今の奥さんだ」


「へえ、そっちも頭が上がらないの?大変ねえ。それで国王は愛人は?」


「侍女の寝室に行ってよろしくやろうとしたら後ろから握りつぶされ引きちぎられそうになったと言っていたぞ。それ以降女が寄ってくると縮みあがるようになってしまったらしい」


「裸になって覆いかぶさっていざ腰を進めようというときに後ろから白い右手が股間に、左手はナイフを首筋に。殺意があれば利き手がナイフだね。あれ尻と首、届くかな」


 冬が両手を左右に開いて長さを確かめている。


「お前、そんな具体的な見ていたような描写をするな。ナイフは首筋ではなく背中だ。浅く刺された」


 冬と本部長の会話でありありと状況はわかったがそんな話をしている場合ではないだろうと呆れて聞いていた秋人。


「あれ、お父さんからだ」


「本当だ」


「何だって?」


「王子といた南の国の侍従は王子誘拐の手引きをしたんだって」


「そんなこったろうと思った。追伸を書こう」


 追伸

 こちらの調べでは王子付きの侍従が誘拐の手引きをしたことが分かった。侍従から緊急の報告が行くだろうけどそちらもよく調べてくれ。


「よし、これを急いで届けてくれ」


「わかった。ドラ一隠密が王宮を見つけたみたいだから転移で行ってくる」


「いつの間に」


 手紙を持った冬がマロンとドラ一と消えた。

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