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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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088 ロカーレでの女王披露会

 女王と侍女長は隊長と一緒に披露会の会場に向かう。

 披露会の会場はすでに招待者が揃っていてほぼ満員だ。


「皆さんお静かに願います」

 今日の司会は隊長がやるらしい。


「ご存知のように我が国の王都、街、村を守っていた結界が弱まり、その結果、強い魔物が人の領域の近くまで進出してしまっています。結界は結界石を交換し、往時の力を取り戻しましたが、強い魔物は本来の生息地の深い森に帰っていません。本来なら王都で女王披露会を行うところですが、魔物が往来を脅かしており、披露会を王都で行うとなると一斉に国内全ての往来の安全を確保しなくてはならなくなり、不可能となりました。そこで女王陛下におかれましては、自ら危険をおかし全土巡幸して披露会を行うことを希望されました。今日の披露会がその一つであります。王都の披露会ではごく限られた人しか出席できませんが、何ヶ所にも分けて披露会を行うことになりましたので多くの人に参加してもらうことができました。女王陛下におかれましては皆さんに会うのを楽しみにされていました」


「長いよー」

 どこからか声が聞こえ参加者の緊張が緩んだ。


「そう言うことですから、まずはご紹介いたしましょう。女王陛下です」

 拍手が起こった。


「私がエカチェリーナです。今日は肩肘張らずに無礼講としましょう」


「ありがとうございます。では早速、乾杯の音頭はーーー本部長は先発しましたので、僭越ながら私から。女王陛下、参加者の皆さんの健康と益々の繁栄を祈念し、乾杯」

「乾杯」


 パーティー会場は立食である。女王が参加者の間を回る。


 織物組合組合長はなんとなく侍女長に既視感があった。どこかでお会いしたのだろうかと頭を捻る。


 女王と侍女長が回ってきた。

「こんにちは」

「はは」

 女王に声を掛けられて深くお辞儀をした織物組合組合長。


「その節は」

 声が降ってきた。思わず顔を上げるとにこにこしている美人秘書さんがいた。服が違うので気づかなかったが昼間のファイター秘書さんだ。


「あ、あのときの」


「儲かりましたか?」

 言われてしまった組合長。


「いや、あの。酒代をいただきありがとうございました」

「面白かったですね」

「は、はい。あの髭面は仲間が軍に引き渡しました」


「軍が駐留している間にしっかりとした街の運営組織を作ってくださいね」

「はは」


 女王陛下と秘書さんが歩き去った。冷や汗が流れる組合長であった。


「儲かったかとか酒代とかはなんだい?」

 近くにいた参加者が興味津々で組合長に聞いた。


「それがだな」

 組合長は食堂と食堂前の試合のことを周りに話して聞かせる。


 以後、ロカーレとその周辺では侍女長天下無双伝説が語り継がれるのであった。


 会場を一回りした女王と侍女長、隊長に目配せする。


「えー宴たけなわですが、披露会の予定の時間を過ぎました。女王陛下におかれましては次の予定もありこれからこの街をお立ちになります」


「皆さん、どうぞゆっくりしていってくださいね」


 参加者が女王を宿の外まで送る。

 外には前後に騎馬を従えてセバスが御者の春人の馬車が待っていた。

 女王と侍女長が馬車に乗りこむ。


「女王陛下万歳」

 万歳の声に送られて馬車が去って行った。


「もう暗くなるのに大丈夫かね」

 参加者が呟く。


「松明を灯すのだろう。それに女王陛下には天下無双の侍女長がついているからな」

「天下無双か。その話を聞かせてくれ」

「ああ」


 参加者は地元と泊まりの人たちだから会場に戻っていく。女王と侍女長の話をお互いにしたいのだ。


 さて、ベニー行商人。長の家で思わぬ歓待を受けて数日長の家に泊まってから長の娘を連れてロカーレの自宅に戻った。


「お帰り。そちらの娘さんはお前がいつも話していた娘さんかい?」

「そうだよ」


「初めまして。お義母さん」

「おやまあ。そういう事かい。おめでとう。さ、中へ入りな。ここはお前の家だよ」

「ありがとうございます」


「他人行儀はなしだよ。今日から娘だ。それでめでたいが大分急だけど」


「それが村にかってに税をかけていた悪人がいて、税の代りに村の娘さんが何人も慰み者にされそうになった。そこに商会の会長さんと秘書さん達がやってきて悪人をやっつけてくれた。危ないから急いで連れてきた」


「それがいい。この街の悪人どもを軍がやってきて捕まえたがな、税を勝手に取っていた連中らしい。軍が掃除をしてから女王陛下とおつきの人達がやってきた」


 母親から女王陛下と侍女長の様子を聞くに、収納袋をもらった商会の会長と秘書にそっくりなことに気がついた。


 ベニーとその妻は二人になってから収納袋を上座に据え、深く礼をしたのであった。

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