080 城壁の街 ロカーレ (7)
秋人とドラ二、本部長を春人が転移させる。
「あれ、どうしたんだ。お父さん?」
「ちょっと手伝って欲しくってね。本部長さん」
苦い顔をした本部長。
「なんだ」
「この服を見てください」
「これは南の国の貴族の子供服だ」
「良くお分かりで」
「若いときに行った事がある。これがどうしたんだ」
「古着屋に売りに来た男がいて、これを売って粗末な服を手にしてこのあばら屋に入りましてね」
「男は下取り値段にご不満なようだったわ」
「故買屋に買いたたかれたか」
「一応古着屋でしたが店主が欲が出たのでしょう」
「それでわざわざトラブルを拾いこんだという訳か。俺に押し付けようと呼んだ」
「いやいや押し付けるのではなく、エカチェリーナ補佐として是非ご意見を頂きたく」
うんざりした顔の本部長。
「誘拐だろう」
「なるほど。さすがエカチェリーナ補佐。でどうします?」
「子供の身柄は確保してカチコミだ」
「さすが本部長。やる事が荒っぽい」
お前らの方がよっぽど荒っぽいと思った本部長。
「その前に食事にしましょう。冬達も食事にしたようですから」
「ではこのあばら屋にバリアを張っておこう。中の人は外に出られず、外から入ってくる人は入れる」
「悪人ホイホイだわね」
「沢山とれるといいが」
「餌がいいから寄ってくるでしょう」
「男の子にもバリアを張っておこう」
「それで秋人、監視装置を作れ」
「ええ、また」
「あれ、何か頼んだっけ」
「ええと頼まれたかな。まあいいや」
秋人が監視装置を作り出す。
「小さいほうが良いね。悪人ホイホイだからG型はどうか」
「やめてよね」
「お母さんに拒否された」
「なんだ、そのGとは」
「こっちにもいたわよ。夜の台所とか枯れ葉の下とかでカサカサと歩き回っている黒光りするやつ」
「ああ、あれか。確かにやめておいたほうが良いだろう。見つかったら問答無用で叩きつぶされる」
「そしたらてんとう虫型にするか。エネルギーはどうするか。魔石では大きすぎる。困ったな」
「待ってろ」
春人がピンポン玉ほどの魔石を握りしめた。拳が光る。拳を開くと魔石が一ミリにも満たないサイズに圧縮されていた。
「これを使え」
「お父さん、すげえ。この魔石ならずっとエネルギーを供給し続けられる。それなら簡単だ。出来た。てんとう虫型情報収集探察装置秋1号 バリア・映像送信・簡易攻撃機能付。踏みつぶされても壊れないぞ。映像中継はドラにやってもらおう。それなら三台作るか。マロンとドラ一、ドラ二に持っていてもらおう」
「後魔石二つだな」
春人が両の手にピンポン玉大の魔石を握りしめる。拳が光って圧縮魔石が出来た。
「ありがとう。出来た。てんとう虫型情報収集探察装置秋2号と3号。1号はマロン、2号はドラ一、3号はドラ二が持っていればいい。愛称はマロン隠密、羽に星七つだ。羽に星一つがドラ一隠密、星二つがドラ二隠密だ」
マロン隠密はマロンの頭の毛の中に潜り込んだ。ドラ二隠密はドラ二の頭にとまった。
「おい、スマホは置いて充電できるな。いつもマロンとドラの頭の上に留まっているのなら魔石にマロンやドラから魔力を充填できるようにしたらどうだ」
「あ、お父さん頭良い。そうしよう。出来た。留まって魔力充填機能をつけた」
「でもてんとう虫の大きさの装置にピンポン玉大の圧縮魔石を使ったのだから充填するほど魔力が減るの?」
「あーーー」
母親に言われてがくっとする秋人であった。
本部長はにやにやしている。
ドラ一隠密は羽を開いた。浮き上がってあっと言う間に飛び去って見えなくなった。
「おい、魔道具師、行き先がわかるのか」
「番頭さん、みんなの魔力を登録してあるからね。しかし小さな体にピンポン玉大魔石のエネルギーだから早いなあ」
「早いと言うが見た事のない速度だ。ほとんど転移だぞ」
「遅いよりいいだろう」
「それじゃドラ二はドラ二隠密を使って子供を見守っていてね」
春人に言われて、ドラ二があばら屋の屋根の上に、ドラ二隠密はドラ二の頭から飛び立って子供が捕らえられている部屋に窓から侵入した。
すぐ映像を春人達の頭の中に送ってくる。
「秋人、なかなかカメラの性能が良いな」
「お父さん、光学レンズではなく魔道レンズだからね。エネルギーが豊富だから性能が良い。広角で撮っているが周辺は歪まない。光量落ちもない。映像を拡大しても粗がでない。事実上望遠になる。つまり一つの映像から広角、望遠自由自在だ」
「各国の諜報機関が真似しそうだ」
「番頭さん。それは出来ないな。隠密のコントロールは僕らかマロンとドラしか出来ない。それに魔道レンズが作れない。羽は一応あるが、魔石のエネルギーを変換して飛んでいる。その機構は真似できない。バリア・映像送信・簡易攻撃機能も理解できない、作れない。それに普通の魔道具としての部分だけでも作るとしたら部屋一つぐらいの大きさになってしまうだろう。飛べない撮影できない動作しない。ただの置物だ」
「そうかい。簡易攻撃機能とは何だ」
「マロンとドラがビームで攻撃するだろう。あれの低出力・低性能のやつだ。人のような柔らかい生き物なら針で突いたような跡が出来るが死んでしまう。死因不明だ」
「危ないやつらだ」
「まあそういう事で昼食に行こう」
「ドラ二、おいで」
夏に呼ばれてドラ二が屋根から降りてくる。
「はい昼食」
魔物の大きい骨付き肉を渡されたドラ二。尻尾を振って屋根の上で前脚で器用に骨を持って食べ始めた。骨ごと食べている。
春人達は城外の森に転移、収納から食事を出し昼食にした。




