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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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078 城壁の街 ロカーレ (5)

 秋人と本部長。こちらも場所は違うが裏街に転移した。

「どこに行くんだ」

「魔道具屋」

「ふうん」

「あった。あった」


「こんにちは」

 若い娘さんが店番している。

「ちょっと魔道具を見せてもらっていいですか」

 店番の娘が頷く。


「珍しい魔道具があるかな」

「そんなにはないだろう。これは魔石ランプだ」

「そうだね。形は少し違うが魔法・・、基本は同じだ。ろう」

「苦しいな」

 咳払いをする秋人。


「これは何だ」

「うーん。音を出しているが」


 店番の娘さんが近づいてきた。

「良く分かったね。人に聞こえない音を出している」


「もしかしてこれを作った?」

「そう」


「へえ。凄いな。この音を嫌がる魔物でもいるのか」

「ただの蚊よけよ。あんまり効かない」

「なるほど。それにしても始めて見た」


「お兄さんにはこの音が聞こえる?」

「まあね。それにドラが鈍い顔をしている」


「すごい。人とは思えない」

「まあこいつは普通と違うからな」

「そういう問題ではないです。人に聞こえる音の範囲は決まっている。これは1000人いれば1000人に聞こえない音だ。これが聞こえるのは人ではない」


「おい、人でなしになってしまったぞ」

「ドラが教えてくれる」

「今更遅い」


 話をそらす秋人。

「それでこれは何だ」


「売り物ではないけど、何だと思う?」

「これは店に誰か入ってくると音がするのか」

「そう。わかった人は初めてだ」


「どうやっているか分かる?」

「人に聞こえない音を出して、その反射をとらえているのだろう。反射に変化があれば音が鳴る。これの工夫したところは出入り口に向けて範囲を絞って音を出しているところだ。それと蚊よけとダブらない音を出しているところが優れている」

「凄い。見ただけで分かるんだ」


「こいつは見ただけで魔法陣を盗・・」

 本部長が秋人に口を塞がれた。


「このおじさんの言うことは信じないでね。しかし良いものを見せてもらったお礼にこれの発展形を教えてやろう」


「発展形?」


「そうだ。作るのは難しいだろうがせっかくだから考え方を教えてやる。コウモリがいるだろう。あれは暗くても飛んでいる」


「夜目が利くのかしら」


「ちがう。あれはこれと同じで人に聞こえない音を出して、反射してくる音を拾って情報を得ている。だからそれと同じ事をすれば暗闇でも灯をつけずに動ける。だが情報を分析するところが難しいだろう」

 考え込んでしまった娘さん。


「それにもっと発展させると音では届かない遠くまで到達するある種の波を発生させる。原理は同じだ。ぶつかって帰ってきた波を分析する。そうするとかなりの範囲の動きがわかる」

 さらに考え込む娘さん。


 本部長が助け船を出す。

「もっと簡単なものはないか」

「ええと。魔石ランプが暗くなると自動的に点灯し明るくなると消えると言うのはどうだ」


「すごい。そういう発想はなかった」

「これは簡単に作れそうだな。魔石ランプが一定の明るさになったら消え、一定の暗さになったら点灯する。明るさ検出専用の魔法陣と魔石が必要だが便利だ。うまくすれば大儲けだぞ」


「とても作れそうにありません」


「見本を作ってやれ」

「分かった。魔石ランプを一つもらっていいか」

「どうぞ」


「それじゃ作るか。まずは魔石ランプを分解して、光センサーを取り付ける。光センサーは屑魔石でいいだろう。一定以上の光が当たると微量な魔力が発生する。光が少なくなると魔力が発生しなくなる。その魔力を増幅する魔法陣を作る。元の魔法陣の隣に書いておこう。そして元の魔法陣の点灯、消灯のスイッチの部分に繋げる。センサーが光を検出すれば消灯スイッチが入る。光が無くなれば点灯スイッチが入る。出来た」


「すごい」


「えへへ。今は明るいから魔石ランプはついていないが、この屑魔石が光を検出している。だからこうやって覆うと」


「ランプがついた」


「暗くなったからな。覆いを取ると」


「ランプが消えた」


「明るくなったから消えたんだ。薄暗くなれば点灯して、薄明るくなれば消える」


「凄すぎ。私はアネッテ、あなたの名前を教えて」


「秋人だよ。こっちのおじさんはエルダーハインツ クラッセンだ」


「アキトさんにエルダーハインツ クラッセンさんね」

 娘さんはすぐメモをしている。


「もしかして店主?」

「お爺さんがやっていたのだけど亡くなってしまって引き継いだ」


「新しい魔法陣を保護する仕組みはあるのか?」

「商業組合に申請すればいいのだけど、大抵揉み消されて大手の商会が発明したことにされてしまう」


「それじゃ申請書類に、発明確認者 王都在住エルダーハインツ クラッセンと書いておけばいい」

「それで揉み消されないのでしょうか」

「大丈夫だ」


「紙をかせ」

 奥から紙を持ってきた娘さん。本部長が書く。


  魔石ランプの自動点滅装置(魔法陣および付随する装置一式)の発明とそれを魔石ランプ魔法陣に組み込む発明を確認した。

   発明者 ロカーレの魔道具店長 アネッテ

   確認者 冒険者組合本部長 エルダーハインツ クラッセン

         ◯年◯月◯日


「この書類をつけろ」

「発明者はアキトさんです」

「いいから。こいつは金持ちだ。気にするな」

「それに冒険者組合本部長さん・・・」

「この書類をつけて揉み消されたら揉み消したやつを揉み消してやる」


「ついでに蚊よけと来客の確認装置の申請も一緒に出しておけばいいよ」

「いいのでしょうか」

「見た事はないし、来客の確認装置は、侵入警報装置とでも名前を変えて、ドアに限らず窓にも設置する防犯用品とすればいい。音も大きくするといい。そうすれば汎用性が高くなり数も出るだろう」


「目が回りそう」

「頑張れ。それじゃ俺達は行くから」


 後に魔石ランプの自動点滅装置などがロカーレの商業組合に登録申請された。


 商業組合は大もうけの予感がして、書類は没にして大手商会に売りつけようとした。


「まずい。まずいぞ」

「どうしました。さっさと申請書は没にして大手商会に持ち込みましょう。権利は大手商会、権利で得た利益からうちらもいくらかもらいましょう」


「この発明の確認者はエルダーハインツ クラッセン様だ」


「もみ消せばいいのでしょう」

「もみ消せぬ。相手は冒険者組合本部長だ」


「本部長のクラッセン、それではクラッセン公爵の・・・」

「悪い事に女王陛下の実の弟だ」


「嘘を書いたと申請人をひっとらえればいいのでは」

「自筆の書類がついている」


「偽造では」

「先頃女王陛下がこの街を訪れた。本部長も一緒だった。書類の日付はその日だ」


「まずい」

「大変まずい。このまま受理だ」


「分かりました。この共同発明者のアキトとは何者でしょうか」

「知らん。知らないほうが良いかも知れん。そのまま通せ」


「他にも2点、一緒に申請されていますが」

「それも通せ。うっかりすると不正が女王陛下に知られる。そしたら暗黒剣だ」


「なんですか。その暗黒剣とは」

「都の貴族の噂になっている。女王陛下の神剣だそうだが」


「だが、とは」

「暗黒の輝きを放っていて不正をした貴族などが人知れず餌食になるそうだ。魂まで切り裂かれてしまうという噂を聞いた」


「暗黒の輝きとはどんな輝きだか分かりませんが恐ろしい剣ですね」


 王都の商会が魔石ランプの自動点滅装置の権利登録に気付き、アネッテと契約し、自動点滅魔石ランプ アキトⅠ型が売り出され大ヒットになった。

 もう一つ、侵入防犯装置 アキトⅠ型も貴族、富裕層、商家などに馬鹿売れした。

 エルダーハインツ クラッセン本部長気付で秋人に大金が送られてくる。権利料だ。


 本部長はぶつぶつ言いながら送金されてきた大金を秋人の口座に振り込むのであった。

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