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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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072 時間調整の日 (7)

 さてこちらは女王一行。

 日の出前に簡単な食事をした。

 日が昇り始め薄明るくなった頃ベニー行商人と長の娘さんが挨拶に来た。


「集落を見捨てず損得を顧ず商売をし続けたこと、感心である。褒美を取らす」


 エカ会長の脇には番頭さんと秘書、反対側には春人と夏が立っている。


 テリーサ秘書がお盆に袋を乗せてエカ会長のもとに進み、エカ会長が袋をとりベニー商人に直接手渡した。

「ありがとうございます。これは?」

「収納袋だ。時間停止、容量は馬車一台分」

「収納袋など初めて聞きます。しかも未だかつて有ったと言う話を聞いたことのない大容量です。時間停止などあり得ません。国宝にもないと思います」


「もらっておきなさい。娘さんと一緒に握って魔力を流してごらん」

 夏に言われておずおずと二人で収納袋をギュッと握った。


「それでいい。その収納袋は二人しか使えない。首から下げておきなさい。そして上手に使いなさい」


「ありがとうございます。皆さんのことは一生忘れません」


「これからも困っている人を助け地道に商売をするが良い。娘さん、税は迷惑をかけたな。すまない」

 エカ会長が言って、一行は出発した。


 二人は深々と頭を下げた。


「あの人たちは本当に商会の人たちなのでしょうか」

「都で小さな商会を営んでいると言っていたが、絶対違うだろう。商会の人が褒美を取らすなどとは言わないだろう。秘書もそうだが様になっていた。褒美を渡すのに慣れているようだ。税も謝られてしまった。商会の人が税について謝るのはあり得ない。都の地位のある人なのではないか。それにこの収納袋、おかしい」


 ベニーが試しに荷馬車を収納と声に出してみた。

 目の前の荷馬車が消えた。収納袋がほぼいっぱいになったのが二人にわかった。

 あわてて取り出しと思ったら荷馬車が目の前に出現した。


 娘があたりを見回し早口で言った。小声だ。

「早く袋を首から下げて服の中に隠して」

「お、おう。そうだな」

 袋の紐を首にかけ袋を服の下に隠した。ふたりで何となくホッとした。


「誰にも黙っていよう」

「うん。親にも言わない」


 女王と春人一行、集落から出て街道を目指す。マロンとドラは岩山を中心にかなり広い範囲で前はいなかったろう強い魔物を討伐した。


 春人達が街道に出る頃、マロンとドラが戻ってきた。


「夏、道普請は南北500メートルと言っていたな」

「そう言っていたわね」


「お父さん、街道筋はマロンとドラにやらせるよ」

「そうかい、それじゃ討伐を頼む。少し広めにやっておいてくれ」

「わかったー」

 冬がマロンとドラと消えた。


「さて先に行こう。宿場には森を抜けると近いようだ」


 街道からそれて森に向かう春人と夏。

 またかと女王主従。置いていかれても困るからついていく。


 本部長は姉上が困るのが面白く後ろでにやにやしている。


 不意に女王が振り向いた。

「笑ったわね」

「冬ちゃんと楽しい話をしていただけだ」

「何処にいる?」

 いるのはセバス達である。冬はいない。


「あれ」

「冬ちゃんはマロンとドラと街道筋の森へ魔物を討伐に行っている」

「そうだった」


「収納袋があるから荷物を持たせる罰もないし、困ったわね」


「この先の森、強い魔物がいるみたいだよ」

 春人に言われた女王。


「よし、弟よ。先に行け」

 しぶしぶ先頭に出た本部長。


 少し歩くと森だ。確かに雰囲気が重苦しい。


 元S級冒険者の勘が危険を告げる。剣を抜いた。


「・・・・・・・・・おかしい」

「頑張れ、元S級冒険者」

 後ろの方で女王が気楽だ。


 ドドドドドと音がする。

「横に展開。大量に来る」


 元S級冒険者から言われるまでもなく横に広がる春人一家と使用人。その後ろは女王と侍女長だ。


「抜かれたらやってね。剣は両手で持て」

 夏に言われた女王と侍女長。抜いた剣の柄を握りしめる両の手のひらにじっとりと汗がにじむ。


「来た」

 本部長が叫ぶ。


 森からかなりの幅で魔物が駆けてくる。

「くそ、スタンピードだ。ついてねえ」


 ウマ、シカ、虎、ライオン、ヒョウ、ゾウ、ウシ、カバ、サイ、オオカミ、トカゲ、すべてそのようなものである。牙が大きかったり角が生えていたり、表皮が違っていたりする。ハリネズミも大きいのもいる。もちろんゴブリン、エイプ、ボアもいる。


 必死になって剣を振るう本部長。


 のんびりした声が後の側方から聞こえる。

「これは大変だねえ」

「しかし、空を飛ぶ魔物はいないのかしらね」


 イラッとした本部長。

 ちらっと後ろを見ると、春人の野太刀一振りで魔物数十頭が両断される。

 おほほほと笑いながら夏の薙刀でまた数十頭両断される。

 やってられねえと言いながら秋人が太刀を振るう。こちらはまだ一度に五頭程度だ。

 セバス達も一度に数頭。


 くそ、俺は一度に一頭だ。呟きながら剣を振るう本部長。

「切りがないな」


 またまた本部長の後ろの方で声がする。

「あれ、コウモリお化けが飛んできた。困ったわねえ」

 緊迫感のない夏の声がする。


「来たよー」

 冬の声がした。


 マロンの銀色のビームとドラの青いビームが飛び交う。あっという間に空飛ぶ魔物が撃ち落とされる。


「冬、何か原因がある筈だ。ドラにスタンピードの一番後ろを見てもらってくれ」

「分かったー。ドラ一、ドラ二は一番後ろで何が起こっているか見てきてね」


「あれ、エカちゃんとおばさんは暇だねえ。練習にならないな。そうだ。おじさんの手伝いなんてどう」


 気がついたら本部長を挟んで両隣にいた女王と侍女長。

「うわ、来る」

 やっと討伐できる程度の魔物を二人の前にそれぞれ転移させた冬トレーナーである。


「これは会長殿に秘書殿、しばらくぶりですな」

 本部長に返事をする間もない二人、必死で剣を振るう。


「しっかり見て剣を振るうんだよ。やみくもに振ると疲れるだけだよ」

 冬トレーナーの声が後ろから聞こえる。


 本部長、二人のお守りは冬ちゃんがやってくれそうだと目の前の魔物に集中する。


 女王と侍女長がそれぞれ一頭づつ倒した。ほっと一息つくまもなくまた目の前に魔物。


「エカちゃん、おばさん、頑張れ」

 冬トレーナーはさっきより少し強い魔物を二人の前に転移させたのである。


「怪我しても良いよ。冬製ポーションがあるし、お母さんに治してもらってもいいし。頭と胸だけは気をつけてね」

 返事も出来ず必死に剣を振るう二人。


「へっへっへ」

 思わず笑ってしまった本部長、冬トレーナーがS級冒険者にふさわしい魔物を本部長の目の前に転移させる。

「あ、くそ」


 結果、女王、侍女長、本部長の三人がそれぞれの力量の少し上の魔物に必死に剣を振るうことになった。


 倒したと思ったらまたすぐ目の前に魔物。必死の三人である。何頭倒したか数もわからなくなった。


「あ、頑張っててね。奥に行ってくる」

 冬とマロンが消えた。


 森の奥が光った。少したって爆発音が聞こえた。

 空をドラ一、ドラ二が時々ビームを撃ちながら戻ってくる


 冬がマロンと転移してきた。

「お父さんいいよ」


 春人が本部長達の前に出た。

 殺気が春人の真横の線から前方に向かってスタンピードの幅で放たれた

 ピタッと魔物の足が止った。動けば死ぬことがわかった。

 魔物は必死に頭を巡らす。後ろには殺気がない。

 後ろを向いた。走り出そうとしたらまた殺気が放たれた。ゆっくり行かなければ死ぬことがわかった。

 魔物が震える足でゆっくりと森の中に戻って行く。


「すげえ」

「まったく」

「ほんとに」

 本部長と女王、侍女長の座り込んだトリオの感想である。

 最初からやってよと思った三人である。


「原因があるうちは無駄だよ。冬とマロン、ドラが原因を取り除いてくれたから出来た」

 三人の心を読んだような春人の発言である。

「そうだよ、この天才魔法少女冬姫様のおかげだよ」

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