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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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064 広場での女王披露会

 披露会は午後二時からなので昼過ぎに春人たちは屋敷から使用人全員と出発だ。


 女王の野宿地から見えないところに転移、馬と馬車で進行。周りを警戒していた兵に本部長を呼んでもらって徒歩で女王のテントへ。


「おはようございます。何か用はありますか。もっともこれだけ人がいれば何もないでしょうけど」


「おはようございます。トイレテントと食事は助かりました」


「それは良かった。昨晩は忙しかったようで」


「ええ、まったく」


「多分寒い地方の出身者が魔肉を熟成させるつもりで腐敗させてしまったのでしょう。張り切ったのでしょう」


「そうでしょうね。衛兵が調べても何も出てきませんでしたので披露会を行うことにしました。宿の主人も自害してしまいましたので処分はなしにしました」


「亡くなった人は残念でしたね。食中毒は恐ろしいです。収納袋にこれを入れておいてください」


 春人が瓶を女王と侍女長と本部長に渡す。


「ありがとうございます。これは解毒薬の何級なのでしょうか」


「三級を作っても一級と同じようですから級はありません。強いて言えばエリクサーでしょうか。解毒薬でもありポーションでもありです」


 なんでもありだと本部長は思った。


「エリクサーは神話の薬です。未だかつて人が手にしたことはありません」


「エリクサーもどきと思えばいいんじゃないでしょうか」


 子犬もどきにエリクサーもどきか。そしてこれはドラゴンもどき。


 本部長の足元で遊ぶマロンとドラである。ドラが遊ぼうと本部長のズボンの裾を引っ張っている。


「こら、引っ張るな」


「本部長は人気だな」


「お父さん、精神年齢が近いと思われているんだよ」


 情けない顔をする本部長、うんうん頷く女王と侍女長。


「それでは出店の準備をしています」


「案内して差し上げなさい」


 そばに控えていた別働隊長に女王。

 別働隊長は案内に副隊長をつけた。


「こっちだ、です」

 女王に睨まれて口調が途中で変わった副隊長。


 馬と馬車の面倒はテオとテアが残り、野宿地に留まった。


 春人たちは徒歩で街へ向かう。

 別働隊の半分は次の宿場目指して出発した。


「副隊長さん、忙しかったでしょうね」


「はい。昨晩広場を見に行き、今朝は日の出と共に広場の整備、警備、出店の確認など大変でした」


「女王さんも自由になることはほとんどないでしょうからたまには民と混ざって楽しんでもらいましょう。裏方は大変でしょうが」

「はい」


「今日はどの範囲の人が集まるのですか」

「通り過ぎてきた街のあたりまでは王都での披露会に出ていますので、野宿の場所あたりから次の街までです。またその間の街道の脇道から入った街も呼んでいます」


 街に入り引き続き副隊長に案内されて広場まで。


 春人たちの出店のスペースは兵が確保していた。両隣のスペースの倍くらいだ。


「どうもありがとうございました。あとはやりますので大丈夫です」


 副隊長にお礼を言った。副隊長は広場の警備のようだ。


 イタサンが収納から屋台を出す。秋人のいう出店セット秋一号だ。隣近所の屋台のおじさんはびっくりしている。


 秋人がたこ焼き製造機秋一号、わた飴製造機秋一号、ドッカン秋一号を出す。机の上はかなりいっぱいだ。わた飴製造機とドッカンは台を作って屋台の前に置くことにした。


 人がそろそろと広場に集まってくる。呼ばれた人のようだ。きちんとした服を着ている。50人程度集まった。きっと街や村から複数の人を呼んだのだろう。


 広場の門寄りのところまで馬車が着いた。

 馬車からは女王と侍女長、本部長が降りてきた。


 別働隊長が司会をやるみたいだ。

「皆さん、本日は女王陛下をこのような田舎にお迎えすることができました。王都でも陛下に拝謁の栄に浴することはほとんどありません。今日は親しくこの広場で拝顔できますこと誠に稀有なことでありがたい極みです」


 長くなりそうなので本部長が引き取った。

「ということなので、今日は屋台も並んでいる。懇談しようではないか。では無礼講だ。屋台の食べ物は女王の奢りだ。食べ尽くせ」


 参加者も屋台の親父も緊張している。


「始めるか」

 春人が言って、セバス執事がドッカンを仕込む。

 コレット侍女がわた飴製造機を動かす。

 たこ焼きはイタサンが担当だ。


 屋台で働く人は、セバス、コレット、イタサン、ジーナだ。元々影なので変装道具は持っている。収納袋をもらったので全て持参だ。屋台の人になりきっている。


 春人が匂いを拡散させる。広場の外で子供達と大人が見ている。

 気づいた女王が子供を手招きする。

 なかなか広場に入ってこない。

 

 冬が迎えに行った。

 子供達に何か話して連れてきた。


「おばちゃんありがとう」

 冬のしつけが良い。


 周りの参加者は目をむいている。


「あっちに美味しそうなふわふわしたものがあるよ。行ってみよう」


 女王が子供の手を引いていく。参加者はゾロゾロその後をついていく。


 冬は広場の外で見ている子供と大人の勧誘に忙しい。秋人も付き合っている。


 時々マロンに吠えられている大人がいる。秋人が捕まえて警備の兵に渡す。きっと何かあるのだろう。


 春人の屋台に子供が群がる。

「ほらこれがわた飴だよ。ふわふわで甘いよ。今日は女王さんの奢りだ。食べな」


 ジーナが子供にわた飴を渡す。子供が親を見る。

「いただきなさい。初めて見るけど」


 子供がふわふわのわたをちぎって口に入れる。

「あまーい」

 一斉に他の子供も食べ始める。


「おばさん、ありがとう」

 子供のお礼に女王はにこにこ。


「たくさん食べな。丸いのも焼けたみたいだよ」


 イタサンが葉っぱにたこ焼きを乗せて和菓子に使う黒文字のようなものを刺して子供に渡す。


「熱いぞ、気をつけろ」

「うまーい」


 あちこちから子供の手が出てくる。

 ジーナも忙しくなった。女王も手伝っている。


 それを見て遠慮していた他の屋台も動き出す。街の人も次々に冬に勧誘されて広場に入ってくる。


 別働隊長は頭を抱えている。


「ドッカンと音がします、ドッカンと音がします」


「お兄ちゃん、機械が喋った」


 機械のそばについていた秋人。お兄ちゃんと呼ばれて満面の笑みだ。


「よく気がついたな。いまからドッカンと音がするよ。そしたらお菓子が機械から噴き出してくるよ」


 ドッカンの蓋の前に薄い布の袋をセットした。


「ドッカン」


 機械の蓋が開いて白い粒が吹き出してきて布の袋に飛び込んでいく。


「うわー」

 子供は歓声。


 遠くの別働隊長は腰を抜かした。


 ジーナがすかさず袋の中のぽん菓子をボールに開けて砂糖をまぶす。

 少し冷ます。


「ほら手を出しな。熱いよ」

 手を出す子供達にお玉ですくって手に乗せてやる。


「甘い、美味しい」

 ぽん菓子も好評だ。


 大人もだんだん手を出してきた。

 女王が葉っぱに乗せたたこ焼きを渡してやる。


「熱いぞ」

「ありがとうございます」

 ハフハフ言って食べ始める。


 女王陛下が庶民に手渡しで食べ物を渡しているのを見て、立ち上がりかけた腰がまた抜けてしまった別働隊長である。

 頭を抱えてぶつぶつ言い始めた。


 春人が呼びに行った。

「ここは本部長と僕らが責任を持つからほら女王のそばに行きなさい」


 ふらふらと女王のそばに行く別働隊長。


「ほらお食べ」


 女王手ずからたこ焼きを渡されてしまった別働隊長。

 捧げもった。


「おじさん、うまいよ」

 子供に言われて口に入れてみる。


「うまい」

「そうだよ」

「そうか」


 やっとほぐれてきた別働隊長である。


 いつの間にか広場は住民でいっぱいである。他の屋台にも人が群がる。女王と侍女長も楽しそうに屋台を回っている。


 女王は呼ばれた参加者はもちろん住民とも話をしている。


 女王は時々兵にも屋台の食べ物を持って行ってやっている。

 兵は女王からもらって感激だ。


 一回りしてきた女王。別働隊長や春人たちのところに戻ってきた。


「今日は楽しかった。ありがとう。先に野宿の地に戻っている。あとはみんなでやってね」


 女王が別働隊長と本部長と馬車に向かう。気がついた広場に集まった人々。


「女王陛下万歳」、「女王陛下万歳」

 口々に心から万歳を叫ぶ。


「おばちゃん、またきてねー」

 子供達も叫ぶ。


 思わずほろっとした女王である。馬車の窓から手を振って去っていく。


 しばらく女王陛下万歳と子供のおばちゃん、またきてねーが続いた。


 広場の興奮はおさまらない。あちこちで屋台の食べ物を食べながら、女王様に会えた、食べ物をもらった、話をしたとお互いの経験を語り合っている。


 春人たちもせっせとたこ焼き、わた飴、ポン菓子を量産する。


 日が傾いてきた。

 別働隊副隊長が声を上げる。


「みんな聞いてくれ。今日は楽しい一日だった。女王陛下と親しく話ができた。手ずから屋台の食べ物をもらった。子々孫々語りつごう。日も傾いてきた。名残惜しいが解散としよう」


 広場に集まっていた人達から女王陛下万歳の声が広場に響き渡り、三々五々自宅や宿に戻って行った。


 春人たちは両隣の屋台の人たちに別れを言って、屋台などを収納、副隊長指揮の片づけ部隊にお先にと挨拶して、徒歩で野宿の地に向かった。


「副隊長、あの人たちはなんなのでしょうか。あの子犬に吠えられた奴らは叩いたら埃が出ました。この地の衛兵に引き渡しましたが」


「わからんがぞんざいな口を彼らにきいたら女王陛下に睨まれた。気をつけることだ」


「女王陛下と侍女長様は楽しそうでしたね」


「そうだな。偉くなってしまうと今日みたいに平民やその子供と分け隔てなく接することができなくなってしまう。子供達がおばさんと言って接してくれたので嬉しかったのだろう」


「ああそうかもしれません」


「この巡幸の間だけでもなるべく楽しく過ごしていただけるように頑張ろう」


「はい。もちろん」

 女王陛下からたこ焼きをもらってしまった兵である。

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