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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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062 女王は街を出て野宿する

 女王を乗せた馬車は門を出て門から少し離れた小高い場所の別働隊の野営地に着いた。

 

 野営地の中心に女王のテント、隣は本部長のテントを張る。


 隊長が女王のテントと本部長のテントの間に見覚えのない謎のテントを見つけた。


 本部長がわけ知りのようだから隊長が聞いて見たが「女王の使うテントだ。近づくな」という返事だ。


 ちょうどそのテントから侍女長が出てきて隊長は睨まれた。なんで睨まれたかわからない隊長、本部長を見るとニヤニヤしている。


 触らない方が良さそうだと隊長は見回りに出た。


 落ち着いたようだから姉上のテントに顔を出した本部長。

 中では美味しそうな食事の最中である。


「食べる?」

 そういえばあの騒ぎで食べるどころではなかったと本部長。

 侍女長が収納から食事を出してくれる。


「これは春人殿の食事か」

「そうよ。これなら安全。毎日これにしようか、春人安全食」


 美味しいからだろう。しかし安全でもあるなと思うが、

「地元の人が一生懸命作ってくれた食事だからなあ」


「一生懸命がすぎるのよ。今度全く身分を隠して泊まってみようか」

「それもまた危ない」


「大丈夫よ。春人さんと一緒」

 これだからおばさんは困る。


「もちろんテレーゼも一緒よ。お前も一緒でいいわ」

 付録か。番頭であったな。番頭。


「たまにはいいかもしれないが、何が起こるかわからない辺境では」

「言ってみただけよ」

 寂しそうな哀愁女王。


「そういえば明日はどうする。午後からだ」

「特別な料理はいらない。屋台を活かそう」

「それも面白いな。よしその話でまとめてくる」


 女王は権力はあっても籠の鳥とも言える。少し姉のわがままを聞いてやろうと本部長は別働隊長を探しに行った。食事はしっかり食べていった。


「一食減ったわね」

「だいぶ収納に入れてくれてあるから問題ないでしょう」

「そうね。お茶にしましょう」


 本部長、別働隊長を見つけて、明日の会場を提案した。当然反対される。

 何かあったらこのエカチェリーナ補佐が責任を取るとなだめすかした。別働隊長は不承不承ではあるが了承した。


 本部長は番頭というのは補佐だろうとエカチェリーナ補佐と自称である。それに女王補佐ではないエカチェリーナ補佐である。個人の補佐だ。女王補佐を詐称しているのではない。女王補佐と誤解するのは相手の勝手である。大抵誤解するだろう。別働隊長も女王補佐と誤解した。


 しかし、会場が広場だと危ないことも確かだ。本部長、もう一度女王のテントに向かう。


「姉上」

「何?寝るところだけど」

「明日、春人殿に会場に来てもらうわけにはいかないか」

「そうね。それがいいかも。来てくれるかな」


 弱気の熟女王である。ため息をついて侍女長が石版を持ち出した。何か書き始める。


「なんだい、それは?」

「秘密兵器よ」


「俺は知らねえ」

「言ってないからね」


「何に使うんだ」

「すぐわかる」


 石版についていた緑のランプが赤になったり緑になったりしている。


「忙しいランプだな」


リーン、リーン、リーンと石版が鳴る。

「おい、石版が鳴ったぞ」


「春人殿は一家で来てくれるそうです」


「それは連絡できるのか」

 本部長、理解が早い。


「そう。便利でしょう。文字を書いて連絡できる」


「瞬時に連絡できるのか。連絡できる距離は」

「瞬時だ。距離は事実上制限がないようだ」


「世界がひっくり返るぞ。それがあれば軍事行動が・・・」

「よくわかるね。だから内緒だ」

「内緒と言ったって」

「内緒。お前ももらう?」

「夜中も連絡が来そうだ」

 本部長、実に理解が早い。


「リーン、リーンは呼び出しているのか」

「そうだ」

「音を自由に大小出来るようにするとか、無音とか出来るようにしてもらったらどうだ」

 本部長、まったく理解が早い。


「お前もたまにはいいことを言うね。頼んでみよう」

「秋人殿か」

「そうだ。よくわかるわね」

「おれはエカチェリーナ補佐だからな」

「エカチェリーナ補佐か、よく考えたわね」

 こちらも理解が早い。

「番頭だからな」


 またリーン、リーン、リーンと石版が鳴る。

「春人殿が屋台を出すから場所を確保してくれって」


「あれ、会場のことを書いたの?」

「もちろん。そうしなければ来て欲しい理由がないから」


「それはどの位書けるのか」

「この石版に書けるだけです」

「ふうん。紙も何枚かに書くだろう。それも何枚か書けるようにしてもらったらどうだ」

 本部長はまこと理解が早い。


「そうね。頼んでみましょう」

 侍女長、石版に書き出した。


 しばらくするとまたリーン、リーンと鳴り出す。

「バージョンアップするそうです」

「なにそれ?」

「ええと。10番のボタンを長押しするとだんだん呼び出し音が小さくなり、最後には無音になる。小刻みに押すとだんだん呼び出し音が大きくなる」

「8番のボタンを押すと次の紙、9番のボタンを押すと前の紙、両方とも押し続けるとそれぞれ一番最後の紙、一番最初の紙になるそうです」


「バージョンアップとはなんだ」

 また石板に書き始める侍女長。

 すぐ返事が来た。


「魔法陣を書き換えて機能更新することを言うそうです」

「そんなことは聞いたことがないぞ。魔道具はバラして魔法陣を交換しなければならないはずだ、が。秋人殿の魔法陣は魔石の中だから書き換えられるのか。通信できると言うことは通信で書き換えるのか」

 本部長は滅法理解が早い。


「聞いてみましょう」

 返事はすぐ来た。

「そうだ。よくわかったな。本部長だろうと秋人殿の返事です。弟子になるかと追伸です」

「ならねえ」

ことば

文中、「一番最後」と「一番最初」が出てきますが、ここではそれが相応しいと意識して使っています。

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