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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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057 野宿

 昼休憩が終わって出発である。先着の二組は王都方面に向かって行った。入れ替わりに馬車が入ってきたが送り狼とは無関係らしい。


 春人達の馬車が街道に出て次の休憩地目指し進む。送り狼もすぐ出発して春人達の馬車の後をついて行く。


 何事もなく緩やかな丘陵地帯を登ったり下ったりして進んで行く。森と草原の繰り返しだ。


 草原には一角ウサギがぴょんぴょんしている。王都から離れたので誰も狩りをしている人がいない。一角ウサギも馬車には襲いかかってこない。


 二時間走って休憩し、さらに一時間半走って本日の野宿地に到着した。


 すで4、5組の馬車が止っていた。春人と送り狼ももちろん街道から広場に入って行く。空いているところに馬車を止める。

 春人達の隣に送り狼が馬車を止めた。


 春人たちがテントを張る。

 春人達の4人用テントを送り狼側に、女王と侍女長のテントを挟んで本部長と冒険者の一人用テント、前は春人家使用人男性、後ろは女性である。トイレテントは女王のテントの後ろ。全部で7張りである。


 ここは広場から少し離れたところに泉がある。宿泊地になった理由であろう。冬が泉の水を飲んでみたら水質は良かった。


 広場の利用者は泉で水を汲んで湯を沸かしてスープを作っている。本格料理はしないようだ。


 テオ夫婦と冒険者が馬の世話をしてくれる。


 僕らは今回はテント群の前にテントから出した風に装ってテーブルと椅子を出す。

 もちろんテーブルクロスがかけてある。

 テーブルの上には秋人製のローソクが5本立っている燭台が置いてある。ローソクも実は魔石のランプである。風に炎が揺れているように見える。それが三つ。


 カトラリーもきちんと並べてある。


 セバスとコレットは、執事と侍女の格好だ。


「どうぞ席についてください」

 春人に言われて女王と侍女長。顔を見合わせる。王宮の食卓にもこんな豪華な燭台はない。


 セバスとコレットが案内する。

 本部長と冒険者も席に着くよう言われたが冒険者は固辞した。どうもおかしいのである。どう見ても王侯貴族の食卓だ。


 テーブルの回りにはイタサン、ジーナ、テオ、テアが着剣して等間隔に並んでいる。近づけば無礼者と切り捨てられそうである。


 席についた女王と侍女長、本部長。春人一家。


 給仕はセバス執事とコレット侍女がしてくれる。


 食前酒、前菜、スープ、メインの料理(昼が肉だったので魚)、ワイン、パン、デザート、お茶であった。


 ワインはもちろん、この時代の水の代りとしてのワインでなく、お酒としてのワインである。それが見たこともない足の細い透明なグラスに注がれる。ワインの色が綺麗だ。


 回りは唖然としている。王宮の食卓を切り取って野宿のテント前に置いたようなものだ。それよりも豪華かも知れない。あり得ない。


 女王、もはや料理に言及するのはあきらめた。レベルが違いすぎる。それでまだわかりやすい燭台を話題にする。


「春人さん、この燭台はどうしたのでしょうか。一向にローソクが減らないようですが」


「これは秋人が作った魔石ランプの燭台バージョンです。良く炎を見てください」


「炎に見えますが。風が吹くと揺れるし。芯もちゃんとありますし」


「秋人が芸が細かいのです。炎に触って見てください。熱くないですよ」


 女王が立ち上がって恐る恐るローソクの炎に指を近づける。全く熱くない。炎に触っても熱くない。


「本当に炎ではないみたいです。秋人さんは天才魔道具師ですね」」


 秋人がにこりと笑った。


「魔石ランプとそう構造は変わらないのですが光る部分を炎のようにしたところが工夫を要したところです」


 コレットがサイドテーブルにお盆に乗せてカップとソーサーを運んできた。


「コーヒーと言う飲み物があるのですが飲んで見ますか」


「はい。飲んだ事はありませんが良い香りが漂ってきます。コーヒーでしょうか」


「そうです。セバス、配ってください」


 セバスがソーサーにコーヒーが入ったカップとスプーンを乗せて配って行く。

 カップは薄く、取っ手がついていた。


 コレットが三ヶ所ほどシュガーポットとミルクピッチャーを置いた。


「一口飲んでみて苦かったらこの容器のミルクを入れ、隣の容器の砂糖を入れると良いわ。スプーンはもちろんかき回すのよ」


 夏の解説を受けて、一口飲んで見る女王と侍女長、本部長。一様に「苦い」。


 夏に言われた通り、ミルクと砂糖を入れ飲んで見た本部長。

「美味いかも」


 女王と侍女長もミルクと砂糖を入れ飲む。

「美味しいかも」

 こちらも本部長と同じ感想である。


「珍しい食事に飲んだ事がない雑味のないすっきりした味のワイン、素晴らしいわ。またコーヒーという飲み物も飲ませていていただきました。感謝します」

「明日からの活力に繋がれば幸いです」

「ごちそうさまでした」


「そうそう。魔石ランプをお持ちください。テント一つに一つで十分でしょう。秋人」


「はいはい。これが魔石ランプです。デザインはテントに合うようにしました。ランタンと言ってもらえればいいと思う。吊るして使ってもよし、置いてもよしです。これがコントローラー。点灯、消灯、明るさが調節出来ます。寝ていても消したりつけたりできますよ。どうぞお持ちください」


 女王と侍女長で一つ、本部長が一つ持って行った。


 僕らのテントには秋人が持って行く。使用人と冒険者の分は残しておく。


「夕食が遅くなってしまったけど、後は頼んだよ」


 セバスに言って春人一家はテントに引き上げた。


 テオが冒険者を呼んできて使用人の夕食だ。


 送り狼や回りの馬車の連中が見ていると、テーブルをセットし直し、主人一行と全く同じ夕食を使用人が食べ出した。仰天である。


 使用人は主人と食べるものが違うのが当然だ。それが全く同じ食べ物、飲み物、カトラリーである。どうなっているのか。さっぱりわからない。


 最後にはコーヒーとやらを飲み慣れている様子で飲み出した。


 いや冒険者と見える男はおっかなびっくりの様子の食事とコーヒーだった。それを見ていくらかホッとした回りの連中である。


 コーヒーが終わってテーブルと椅子をテントの中に運び込んだ。どう見てもテントに入りきれないはずなのにどんどん運び込む。やがてテントの入り口を閉じてしまった。


 しばらく魔石ランプだろう、テントの中が明るかったがやがて消えた。


 一人も見張りを出さなかった。わからない連中である。


 送り狼組、待機していた仲間と合流。


「どうする?なんだか変な連中だ」


「金はありそうだが隙がなかった。さっきの食事中に回りを固めていた使用人がいたな。着剣して何かあればすぐ抜いて切り掛かってきそうだった」


「そうだったな。移動の途中はどうだった」

 待機していた仲間が聞いた。


「それが先頭が案内らしい冒険者、隣に中年だが屈強な男。最後尾には主人らしい若夫婦二人。とてつもなく強そうだ。その二組の間に使用人、主人の子供が馬車の前後に配置されている。馬車には主人夫婦の一番下の子供が客人と乗っているようだ。それから子犬と羽の生えたトカゲが一緒だ」


「なんだ、その子犬とトカゲとは」


「さっき大人しくテーブルのわきで食事を食べていたろう。わざわざ休憩の時に俺達のところに子供が連れてきて、魔物の骨をぼりぼり食べるとか言っていた。それにその子犬とトカゲは俺達の方を見て涎を垂らした」


「涎か」


「ああ、どう見ても俺達を食べたいという雰囲気だった。子供が不味いとかいって止めていた」


「ううむ」


「やめるか」


「しかしここまで仕込んだんだ。やらなければまるっきり赤字だ」


「赤字か。世知辛い世の中だな」


「他の馬車の連中はどうする?」


「それが今日に限って誰も見張りを立てていない」


「どうなっているんだ。魔物や盗賊が襲わないと思っているのか。心がけがなっていない」


「お前に言われたくはないだろうよ」


「やるよりないか。まだ寝たばかりだ。ぐっすり深く寝た頃やろう」


「わかった。少し休んでからやろう」


 男達は自分のテントに戻った。こちらは見張りを立てた。 

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