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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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056 昼休憩

 お昼休憩の場所にはすでに馬車が二台止っていた。二組だ。


 襲いやすいだろうと一番奥に馬車を止めわくわくする春人達であったが残念ながら先着組は盗賊の類いではないらしい。


 先着組に軽く会釈をして昼食の用意である。もちろんトイレテントは出した。


 馬には休憩の度に食事を与えているが、盗賊さんに見えるようにさも豪華そうに与える。飼い葉だが。水も桶にたっぷり秋人が出したペットボトル仕様の水だ。川の水を飲み草を食んでいる他の馬がうらやましそうに見ている。


 テオ、テアに冒険者が手伝って馬の世話が終わった。他の馬車の馬が疲れたような様子をしているのに春人隊の馬は元気一杯でご機嫌である。


 テアが湯沸かしセットを出し、誰かが作ってそのままになっていたかまどに鍋をかけ、料理しているように見せかけた。今回は襲いたくなるように旅の単品屋外昼食ではない。


 馬の世話が終わったのでみんなで昼食だ。料理もさも今調理が終わったような様子を醸し出してイタサン、ジーナ夫婦がシートの上に出した低いテーブルにテーブルクロスをかけ料理を並べる。


 今日は魔肉のカツ、刻みキャベツ、ご飯、みそ汁、漬物である。ソース、ドレッシングつき。皿と茶碗は磁器、華やかな模様が描かれている。みそ汁は漆器。


 肉が違うだけで現代日本の和食豚カツ屋の食卓だ。もちろん手づかみではない。箸が添えられている。使えないだろうと春人一家以外にはナイフとフォークも用意してある。


「これはフォークですか」

 フォークを手に持った女王。何の素材かわからない。きらきらしている。先が二股でなく四つに別れている。


 レベルの違いに気付いた女王である。時代より大分先の料理、カトラリー、食器類である。


 本部長と冒険者はもちろん箸を使った事がないのでナイフとフォークである。


「これは銀ではないですね。何でしょう」

「わからん。鑑定したら銀ではないそうだが何だかわからん。不親切な鑑定だ。連中の事だ。鑑定できなくしているのかも知れない」


「皿はやけに薄いですが」

「ああ、陶器ではない焼物と鑑定には出ている」


「皿の縁に模様が描いてあります」

「割ったら高そうだが不壊だろう」


「不壊ですか。それで木の皿ではなくこんなところまで焼物を持ってきているのでしょうか。運搬が大変でしょうに」


「普通はそうだな。しかし美味いな。この魔肉の揚物」


「カツと言うらしいですよ。スープはみそ汁だそうです。白いのはご飯。お替わり自由だと言っていました。このカツにかけるのは何でしょうか」


「ソースだと」


「刻み野菜にかけるのは」

「ドレッシングというらしい」


「聞いた事がありません」

「俺もない」


 この世界に来て最初は遠慮していた美食家の夏と食いしんぼの冬。次第に我慢が出来なくなり、調味料を作り出し、カトラリー、食器類も作り出し、イタサンとジーナを鍛えた結果である。

 いまでは春人家のほかにヒカゲ、ツキカゲ両家もその恩恵に浴している。


「夕食は豪華にしましょう」

 夏が言うが、十分豪華だと思う女王と侍女長である。


 他の馬車の連中は硬いパンと自分たちで作った塩辛スープだけだからうらやましそうに見ている。子犬とちびドラゴンのようなものでさえ、人と同じものを食べている。子犬の餌にまけているのかと落ち込む。


 食器が違うだけでマロンとドラの食事内容は春人達と同じである。マロンとドラは何を食べても大丈夫なのである。


 マロンとドラは食べ終わったら三頭で遊び出す。


 春人達は優雅に食後のお茶である。今日は狭山茶。


「これはなんという飲み物でしょうか」

 湯呑みを持って侍女長が聞く。今はエカ会長の秘書のテリーサである。


「これは緑茶です。詳しく言うと狭山茶です。紅茶は有りますね」

「はい。あります」


「緑茶と紅茶は原料の葉っぱは同じですが製法が違います。もっともこれは改良されたお茶の木からの葉を使った製品ですが」

「そうですか」


 飲んだ事のない女王、侍女長、本部長、冒険者である。


「このお茶のカップの材質はわかるぞ。陶器だ」


「なるほど少し厚く見慣れた陶器です。形は見慣れないですが」


「湯呑みというらしいが」


 遊びに飽きたマロンとドラ。マロンは冬に抱っこ、ドラ二頭が冬にしがみつく。みんな尻尾をゆるゆると振って目はとろんとしている。寝てしまった。


 冬はマロンを抱っこ、ドラをしがみつかせたまま散歩である。わざと送り狼さんの馬車の方に行ってみる。


 9人が車座になって昼食のようだ。硬いパンを湯に浸して齧っている。


「こんにちは」

「・・・・」

「硬そうなパンですね」

「・・・・」


「この子達ならそのまま食べられるのに。魔物の骨でもバリバリと食べてしまうのよ。美味しいのかしらね」


 マロンとドラが目を細めに開けてちろっと男達を見る。舌なめずりする。思わず身構える男達。


「大丈夫だよ。まだ人は食べてないから。まずそうだからね」

 マロンとドラの口から涎が垂れそうだ。


「あれは美味しくないからね。食べちゃダメよ」

 そう言って冬は去って行く。役者のマロンとドラ二頭である。


「なんだ。あれは。俺達を餌だと思ったらしいぞ」

「わからねえ。見た目、子犬と羽のついたトカゲだが」

「ちいさいから襲うときに子供ごと最初に斬り殺そう」

「そうだな」


 良く聞こえている冬とマロンとドラであった。春人同様わくわくである。


「お父さん、あの人達は襲いかかってくるんだって。最初に冬とマロンとドラを斬り殺すんだって」


「へえ。それは面白い。いつかな」


 面白いではないだろうと女王と侍女長。


「それはわからないけど今ではないよ」


「常識なら野宿の時、寝静まってからだな」


「今やってしまう?」

 冬はいくらか怒っている。


「今やっては一網打尽には出来ないだろう。向こうが準備万端、戦力をそろえて襲ってこなければ」


「そっか。それもそうだね」


「それに向こうが手を出せば正当防衛だ。手を出させよう」


 少し離れたところで休憩中の本部長と冒険者。


「向こうは盛り上がっているな」

「はい」


「襲ってくるのを待っているようだぞ」


「どうしましょうか」


「まあやらせておけ。やつらにかなうものはいない。しかしこの狭山茶というのは苦く甘いな」


「初めて飲みます」


「午後はどういう旅程だ」


「二時間行って休憩、その次は一時間半で野宿のための広場です。一時間半、休憩、二時間という人もいます。宿場がありませんので広場には何組もいると思います」


「宿場代わりだとすると確かに何組もいるだろうな」

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