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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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055 馬車の中で 冬と女王と侍女長

 宿場を出て二時間走り最初の休憩。

 出発時に午前は休憩2回、走行6時間と案内冒険者に言われていた。


 馬車からにこにこ下りてくる女王、冬、マロン、ドラ、ややげんなりしている侍女長。


 先着が居た。主要街道だからいても不思議ではない。


 トイレテントを出して休憩である。お茶を飲んで何事もなく出発。先に休んでいた馬車が後をついてくる。


「冬ちゃん、後をついてくるわね」

「あ、本当だ。何だろう」


 本部長の馬が馬車に並んだ。

「姉上、後ろからついてきますので一応警戒はしておきます」


「あれは何なの?」

「今のところわかりません。後をついて来て危険を減らそうと言うのか。そういう場合は一言あってしかるべきですが。あとは盗賊の類いですね」


「わかった。面白そうね」

「こういう場合は馬車に乗った主人は心配そうな顔をするものです」

「悪かったわね」


 本部長が離れて行った。元の先頭である。後ろの春人達を心配する気は全くない。


 ちなみに車列の順番は、いつも通り。馬車以外は騎乗である。

 先頭は案内の冒険者と本部長

 セバス、秋人

 馬車 御者はテオ、テア夫妻

  馬車には、女王、侍女長、冬、マロン、ドラが乗る。

 コレット

 イタサン、ジーナ夫妻

 春人と夏


「後ろの馬車は何だろうね。馬車一台に騎乗4人だ。馬車の中の4人と合わせて8人だ。御者を入れれば9人」


「あなた、あれは送り狼かな。それとも臆病風に吹かれて強そうな私たちについてくるのか」


「その場合は挨拶が必要だろうな。盗賊よけに使うのだから」


「からかってきましょうか」


「送り狼ならせっかくだから襲わせないと面白くない」


「それもそうね。いつ襲ってくるかな」


「9人では足りないな。次の休憩で待っているか、それとも野宿の場所までの間の途中で脇道から出てくるか、野宿の場所で待っているか」


「仲間らしいのが増えれば怪しいわね」


「今日は宿場がなく野宿というのはわかっているだろうから、野宿になって寝静まってから襲うのが定番だろう」


「楽しみ楽しみ」


 二回目の休憩になった。特に動きはなく出発。


「冬ちゃん、襲ってこないわね」


「うん。来ないな。お父さんとお母さんは楽しそうだったから、襲ってくるのを待っているんだと思う。ところでおばさんは強いの?」


「私の稽古相手を小さいときからしています」

「まずまずかな。武器は何?」

「剣です」


「見せて」

 馬車の中に置いてあった剣を取り出す。


 冬が抜く。

「ふうん。なかなか良い剣だね」


「私の剣と一緒に作ってもらった」

「お父さんに不壊にしてもらった剣だっけ。それも見せて」


 侍女長が女王の剣を取り出す。


 冬が抜く。

「ああ、良く似ているね。少し体格が違ったのかな。剣も少し大きさが違う。持つ人をよく見てつくった剣だ」


「我が国の名工が作りました」

「そうだろうけど、実戦は考えていないな。飾りの剣だ。エカちゃんのはお父さんが不壊にするときに少し手を入れている。実戦でも使えるようになっている。わからないだろうけど」


「私の剣は」

「おばさんの剣は奇麗だけど、それまでだ。実戦には向かない。全力で数合剣をあわせると折れる。魔物に切り掛かると折れる」


「それでは使い物にならない」


「剣を女王と侍女長が握って戦う事を考えていなかったのだろう。だから見て奇麗な剣を作った。平時であればそれでいいと思うよ。女王や侍女長が剣を取るときは落城くらいだろう」


「なるほど。名工は正しいのか」


「まあね。だけど落城の時でも剣が折れず生き残る執念があれば万に一つだが助かるかも知れない。折れれば万に一つもなくなる」


「私の剣を直してもらえますか」

「いいよ」


 冬が侍女長の剣を持つ。じっと眺める。

「ふゆふゆはあー」

 何でもふゆふゆはあーの冬であった。


 剣の存在感が増した。

「これで折れなくなって切れ味鋭くなったけど、小さな傷はついてしまう。不壊にしよう。マロン、やって見て」


 マロンが冬の持っている剣と女王の剣をじっと見つめる。

「ワンワンワオーン」

 こちらもワンワンワオーンだ。


「はい。良くできました。おばさん、不壊になったから存分に振るって大丈夫だよ。エカちゃんの剣と姉妹剣だ」

「ありがとうございます」


「ついでに懐剣もやってもらえば」

「いいのでしょうか」

「いいよ。暇だし」


 侍女長が懐剣をとり出す。

「ふうん。こっちの方は実戦向きに作ってある。さっきの刀工か」

「そうです」


「多分、いつも懐に入れておいて、暴漢か何かが襲ってくるときに使う事を想定したんだろうな。これは実戦に使える。これもエカちゃんの懐剣と一緒に作ったの?」

「そうです」


「見せて」

「はい、これです」

 女王が懐剣を懐からとり出して、冬に渡す。

「うん。お父さんが直したのはほんの少しだ。良くできた懐剣だよ。剣も実戦向きに作れば上手に作れる刀工だね。それじゃおばさんの懐剣を直すね」


「ふゆふゆはあー」

「マロン」

「ワンワンワオーン」

「はいできた。不壊になったよ」

「ありがとうございます」


「いいのいいの。冬も宝物庫から忍者刀、刀、脇差、短刀をもらったから。宝物庫のものは最初から実戦用に作ってあった。飾りは一切ないけど、研ぎ澄まされた凶器の美しさがあるよ。殺す凶器としての性能と美が共存している。本当の名工だな」


「そういうものですか」

「そういうものね。弱い精神の人がもつと囚われて殺人に走ると思う」


「恐いですね」


「形が不人気だったから気がつかなかったのが幸いだったね」


「まだ有るの?」

「もう無いな。あとは真似して作った駄作だ。剣は見なかったからわからないよ。多分剣には美の中に狂気を孕んだ魂を揺するような作品は元々ないと思う」


 冬と話し込んで時間を忘れたがお昼休憩の場所に着いたらしい。馬車が止った。

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