053 連絡手段がなくなったので通信機器を作る
「ドラ一、ドラ二がこっちに来てしまうとヒカゲとツキカゲからの連絡手段が必要だな。秋人何か作れ」
「そうか。作らないとまずいね」
春人に言われて秋人がぶつぶつ言い始めた。
連絡があるかどうか分かればご用聞きドラゴンか誰か転移で帰っても良い。それなら単純だな。
いやタブレットのようなものを作ろう。
待てよ、この世界、やっと紙の世界になった状態のようだからそれでは扱いきれない。ブギーボードのようなものにしようか。それの石板版はどうだ。わかりやすいだろう。
表面に送信の押しボタンをつける。石板に書いて送信ボタンを押す。受信したらアラームが鳴って受信ランプが赤くつく。受信ランプを押すと石板に文字が浮かぶ。同時に受信ランプは緑になる。受信ランプは普段は緑で作動中を示す。受信したら赤になる。
画面を消すボタンもつけよう。書き損じの時も使える。石版に書くペンは紐で石版とつないでおこう。なくすだろうから。
あとは送受信機能だな。電波を使おう。この世界、電波は使っていないだろうから混信の恐れはない。
あ、星から電波が漏れるのはまずいか。よその星で受信されると良くない気がする。やっぱり魔力か。
普通の魔力は遠くまで届かないだろう。ドラは冬の魔力をどこまでも追えるのだっけ。あいつら異常だ。
衛星を使うか。静止衛星にして石版から衛星めがけて魔力を送る。静止衛星の場所はわかっているから範囲を絞れる。そう魔力は使わないだろう。なんなら糸のように細く絞った魔力でも良いわけだ。
省エネにするために石版の位置は時々衛星に知らせるようにしよう。そしたら衛星から魔力を送るときも範囲を絞れる。さらに位置を正確に確定してからデータを送るようにしよう。省エネだな。
ふむふむ方針が決まった。あとは作るのみ。
ジャイアント魔牛の魔石を衛星にしよう。魔石はソフトボール大の丸い容器に入れよう。中で固定だ。
ソフトボール衛星にはバリアを張る。位置の微調整の機能をつけ、静止軌道を保つようにする。寿命、故障の時は消滅するようにしよう。宇宙ゴミは作らないのだ。
石版の魔石は二つ。エイプの魔石が大量にあったな。あれを使おう。一つには魔法陣を書き込む。誰も魔法陣を盗めない。一つはエネルギー供給だ。
魔法陣を書き込んだ魔石にもエネルギーは十分あるから魔石交換の時もエネルギーは供給できる。魔石を交換すればいつまでも使える。でも交換しなくてもかなり持つだろう。
ソフトボール衛星はそもそも魔石が大きいから一つで魔法陣とエネルギー供給だ。位置の微調整をしても大分持つだろう。
あ、ソフトボールの表面を太陽光発電パネルにしよう。電力を魔力に変換して魔石に充電しよう。待て魔力も充電か。充填にしておくか。充填すれば魔石の寿命まで使える。
石版はどこに置こうか。その前に名前は通信石版だな。通信石版を持つのは自分達とヒカゲ、ツキカゲだな。3枚。
そうか通信相手を指定できるようにするか。送信ボタンを10個くらいつけておこう。1は僕たち、2はヒカゲ、3はツキカゲだ。女王が欲しがるか。4を割り振っておこう。
予備の送信ボタンを全部使うようならスマホモドキを作っても良いな。
スマホモドキにするとデータ量が増えるな。ジャイアント魔牛の魔石をもう一つ衛星に追加しておこう。あれ、衛星は作ってしまったから、中に転移させるか。調整して、出来た。
太陽光発電のパネルも発電量が足りないな。宇宙で発電パネルを展開できるようにしておこう。パネルは超小型収納に収納しておこう。
改良版が出来た。動かす前だから改良とは言えないか。うん。
「速いな。もう作ったのか」
「あれ、出来てた」
手元に通信石版4枚とソフトボール大の通信衛星があった。
「秋ニイはぶつぶつ言いながら作っていたよ」
「知らなかった」
「それじゃ地上でテストをしよう。冬、何か書いて送って見て」
『あいつら異常だって言った。秋ニイの馬鹿』
「送ったよ」
「おお、緑の受信ランプが赤くなった。受信ランプを押す。受信ランプは緑に、そして文字が石版に浮かぶ。上出来。あっまずい。ごめん」
「ふん」
「キュ」、「キュ」
「取り敢えず通信衛星を投げ上げるから冬はブースターふゆふゆはあーを撃ってくれ」
「前方進路クリーン。ピッチャー秋人投げました」
秋人が自分で言って窓からソフトボール衛星を投げた。直線で大空へ飛んで行く。
「ふゆふゆはあー」
「わんわんわあーん」
冬とマロンがブースターを撃つ。ドラ一とドラ二は真剣に見ている。次はやるらしい。
ソフトボール型衛星がブースターにより加速して引力圏を離脱。
自分で位置調整をして静止軌道に乗り太陽光発電のパネルを展開した。
静止軌道通信衛星秋一号の誕生である。
「出来たよ。お父さん」
「通信石版をヒカゲ家とツキカゲ家に届けるようだな。行ってきてくれるか」
「いいよ。ドラ一、ドラ二、一緒に行こう。転移を覚えると楽だ。え、マロンも行くの?冬も?そうなの。それじゃ行こう」
秋人達は転移して行く。
春人邸の庭先に転移した。庭の手入れをしていたツキカゲ家の人がびっくりしていた。
「ドラ一とドラ二が来てしまったので、連絡できなくなった。代りに連絡装置を作ったので、ヒカゲ家の人も呼んできてくれる」
「わかりました」
すぐヒカゲ家とツキカゲ家の当主と何人か来た。
ドラ一とドラ二はヒカゲ家の世話してくれたひとにすりすりしている。
秋人がテーブルに通信石版2枚を出す。
「これで連絡する。名付けて通信石版だ」
「石版のように見えますが」
「この通信石版に紐で結びつけられたペンで文字を書く。絵でもいい。失敗したらこのボタンを押すと書いたものが消える」
「おお、消えた」
「それで送りたい事を石版に書いたらこのボタンを押す。1のボタンを押すと僕らが持っている石版に書いたものが送られる。今はお父さんが持っている。2はヒカゲ、3がツキカゲの石版だ。4は女王のつもり。他は予備だ」
1のボタンを押したら1のボタンが点灯した。
「向こうで読むと灯が消える」
しばらくしたら消えた。
赤いボタンがつく。1のボタンが点灯した。リーン リーン リーンと石版が鳴った。
「緑のボタンが赤色に変わったらどこからか何か送られてきた事になる。送ってきた相手の番号のボタンが点灯する。同時に音が鳴る。赤いボタンを押すと石版に送られてきた文字が浮かぶ。同時に赤は緑になる」
秋人が赤いボタンを押した。
石版に文字が浮かび上がる。
『秋人へ 受信成功 春人』と書いてあった。
「おー」
両家のみんなが驚いている。
「これはどのくらいの距離まで届くのでしょうか」
「我々の活動範囲くらいなら事実上どこまでも」
「驚くべき石版だ。世界が変わる」
「まあ4枚しか作ってないから」
「そのうち2枚が我々ですか。責任重大です」
「気にせず使ってください。細かいところは使ってもらって改良しよう」
冬達は庭で追いかけっこしている。
「やっぱりうちは良いね」
「時々お帰りください」
「うん」
「それじゃみんなよろしく」
「ありがとうございました」
「冬は今日はこっち」
ヒカゲとツキカゲ家の人がうれしそうだ。
「そうか。じゃあ先に行くよ。ドラ一、ドラ二もこっち?」
キュ、キュと返事した。
何となく肩を落とした秋人が転移して行く。
「冬姫様、それでは侍女と料理人をすぐ連れてきます」
「うん」
冬とマロン、ドラ一、二は至れり尽くせりの一夜を自宅で過ごすのであった。




