表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/74

050 ぼったくり姐さん

 一回休憩を挟んで、次の休憩用広場に到着した。

 案内の冒険者によれば宿場と宿場の中間で自然にできた休憩場所らしい。


 今度も先着組がいる。二組だ。冒険者に護衛されている商人のようだ。


「よう。元気か。魔物や盗賊が出たか」


 春人達の案内人の冒険者と街道近くで休んでいた商人の護衛の冒険者が知り合いらしい。声をかけてきた。


「いや、宿場からこっち魔物と盗賊には出会わなかった。そっちはどうだ」


「朝出た宿場からこっちはいなかったぞ。まあこの辺はまだ王都に近いと言ってもいいからな」


 お互い仕事内容には触れない街道の状況だけの最低限の情報交換が終わって一行は広場の奥に馬車を止めた。


 春人達は勿論昼食である。その前に秋人がトイレテントを馬車の影に設置した。


 他のグループが居るのでテーブルと椅子というわけにはいかないからシートを出して座ってピクニック風だ。この世界にはピクニックはないだろうが。


 お湯は作っておいた三脚ヤカン湯沸かしふりセットである。


 イタサンとテオが転がっている石で簡易かまどを作り鍋をかける。馬車の御者台の下から取り出したようにして薪を出して火をつける。


 少し煮たふりをしてお椀によそる。昼食は品数が多くてもおかしいからお椀によそった野菜多めのスープと肉の煮込のみだ。それに標準的硬いパン。


 詐欺師は自分たちで用意してあったパンを齧りながら恨めしそうな顔である。


「お湯ぐらいあげましょう」


 夏が言ったら詐欺師がお椀を持ってやってきてテアにお湯を注いでもらっている。パンをお湯に浸して食べている。


 こちら女王。

「美味しい」


「姉上、普通は昼食は無いか硬いパンと良くて塩辛スープです。外ではこういう食事はありません」


「そうなのですか」

 秘書のテリーサということになっている世間知らずの侍女長も驚いている。


「補給部隊を連れているわけではありませんから最低限の物しか持てません」

「知らない事ばかりだわ」


 奥に止まっていた馬車から男が近づいて来た。


「おい」


「なんでしょうか」


 男らの馬車と春人らの馬車の間に陣取っていたセバスが返事をする。


「その鍋を譲れ」


 男が何かをセバスの足元に投げた。ズカズカと鍋に近づこうとする。セバスが足を出した。少し勢いをつけたから足が蹴り飛ばされて両足が浮き顔面から湯沸かしセットにダイブした。


「おや、足がもつれたようですね。馬車に帰ってお休みになった方がよろしいんじゃないでしょうか。ほら落とし物ですよ。角銀貨ですね。大ですか。角銀貨といえどもお金です。お金は粗末にしてはいけません。商人の基本です」

 セバスが角銀貨を男に渡した。


 男はやけどで真っ赤な顔になってしまった。

「うわ、熱い熱い。助けてくれ」


 セバスがとぼけて

「そちらの方がポーションをお持ちのようですよ」


 振られた詐欺師達、慌てる。


「いや、俺達のは期限切れで効かないだろう」

 言い訳を絞り出した。さすが詐欺師である。


「いいから売れ。いくらだ」

 真っ赤なただれた顔で詐欺師に迫る。


「二級だが期限切れだから効かないかも知れない。三級並の中銀貨でいい」


 男の従者が中銀貨一枚を詐欺師に渡し詐欺師が二級と書かれた瓶を渡す。


 すかさず顔に振りかける男。だが効かない。

「熱い、熱い。効かないではないか」


「だから期限切れで効かないだろうと言った。それでも買ったのだから俺達に責任はない」

 頑張る詐欺師である。


「一級の期限切れもあるぞ。今なら二級並で売る」

 欲を出す詐欺師。


「そんなもの効くものか。だれかポーションを持っているか」


「あるわよーー」

 夏がにこにこしている。


「売れ。いくらだ」

「あんたのやけどならうちの三級ポーションで十分ね」


「だからいくらだ。早くしろ。痛くてかなわん」


「金貨1枚よ」

「高い」

「ならやめれば」


 男が入り口近くの馬車の方に行った。

「ポーションがあるか」


「ない」

「くそ」


 男が夏の元に戻ってきた。

「ポーションだ」

「金貨2枚」


「上がったではないか」

「こういうものは需要と供給よ。ここでは私のポーション以外は期限切れポーションしかない。誰も効くポーションを持っていないことがわかった。ポーションを得るには街に行かなければならない。それまでに痛い思いをし続け悪化する。街まで行ってポーションを買って使っても跡が残るだろう。一級でも跡が残る。今治せば奇麗に治る。痛い思いをしなくてすむ。となれば言い値よ。買う?」


「くそ。おい」

 商人の従者が馬車にお金を取りに行った。金貨2枚持ってきて夏に渡した。


「はい三級」

 春人達には、はいサンキューに聞こえてしまった。


 男は瓶を引ったくり顔面にかけた。見る見るうちにただれた皮膚が治り奇麗になった。


「旦那様、爛れていた顔が治りました」

「まだ痛いぞ。くそ頭のてっぺんか」


「おや、そのままですとハゲになりますよ。可哀想に。今なら三級ポーション、なんと金貨一枚。お買い得ですよ。旦那さん」


「おい」

 従者がまた馬車に行った。戻ってきて夏に金貨一枚差し出す。


 男が夏から瓶を引ったくって頭にかける。頭を撫でて見る。


「治った」


「良かったわね。私も人助けが出来ました。おほほほほ」


 男は呪詛の言葉を吐きながら馬車に乗り込み、王都と反対方面に向かって出発した。やけどに至った経緯は頭に浮かばないらしい。


 詐欺師は、さすがの姐さん、三級ポーションで金貨三枚せしめた。ぼったくりの姐さんだと尊敬の眼差しである。それにしても効き目がおかしいとは思った。


 女王は感心してしまった。

「なるほどああいうふうに商売をするのね」


 心配になった侍女長。

「会長様、あれはぼったくりと言うのです」


「ぼったくりの夏さんね」

「ぼったくりと言うのは悪い意味です」


「そうなの。需要と供給の話はすんなり聞けたわ。さすがぼったくりの夏さんよ」


 詐欺師達が大きく頷いている。

「やっぱりね。詐欺師の皆さんもそう思っているみたい」


 女王のぼったくり=上手な商売説が詐欺師に裏打ちされ強化されてしまった。侍女長はあきらめ気味である。


 広場の出口付近にいた商人、ぼったくりと詐欺師の集団かもしれない。なかなか連携が良かった。しかし三級と言っていたポーションは三級ではないだろう。一級以上かも知れない。ならば金貨三枚も安いかも知れない。しかし一級以上なら飲めば一本ですんだような気がする。何やら得体の知れない連中だとこちらは王都方面に向かって出発して行った。


 春人達は邪魔な者たちが居なくなったのでテーブルと椅子を出して、優雅にケーキとお茶である。


 詐欺師はまた恨めしげな眼差しである。

「お茶ぐらいなら良いわよ」


 ぼったくり姐御のありがたいお言葉である。

 コップを持った詐欺師はジーナにお茶を注いでもらった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ