048 ポーション詐欺にあった親子に出会う
女王達一行、街を出て二時間進んだ。最初の休憩である。休憩用と思われる広場に入る。
広場には数組休憩していた。
馬車の影にトイレ用テントを出す。休憩していた連中がちらちらテントを見ている。
シートを出して座って休憩である。
「ねえ、お父さん。ラノベでは湯沸かしした振りセットと言うのがあって、棒を三角に組んで沸騰したお湯の入ったヤカンをつり下げて収納しておくんだ。使うときは収納から出して下にそれらしく灰を撒くんだ。お湯を沸かしたように見える」
「へえ、便利だね」
「姫様、作ってみます」
テオとテアが木の枝を探してきた。
三脚にして湯の入ったヤカンを吊るす。
今回は枯れ枝をひろってきて火をつけて沸かしている振りだ。
頃合いをみてコレットがお茶を淹れみんなに配る。
「美味しいわね」
女王の感想である。
「姉上、外で飲むからね。でもこんな優雅にお茶が出来る事はない。だいたい水からして入手困難だ。この広場にだって水場はない。小川はあるがせいぜい馬が飲むくらいだ。奇麗な水とは言い難い。その水を沸かして飲むか、街から持参した水だろう。街から持参した水は量が限られているから、普通は小川の水を沸かしてそのまま飲む」
「そうなの。冒険者は大変ね」
「冒険者でなくても大変だ」
なおうちの馬は秋人が桶に魔法で出したペットボトル仕様の水を飲んでいる。美味しそうだ。
幼児がいる先着組の若い女性が寄ってきた。
「あのう、子供の顔を拭いてやりたいのでお湯を少しいただけませんでしょうか」
母親らしい人だ。木の深めの皿を持っている。
テアが春人を見て春人が頷いた。
「貸してね」
テアがお湯で皿を濯いでからお湯を注ぎ母親に渡した。
「お子さんの具合が悪そうだわね」
「はい、熱があるらしくて」
「みましょう」
夏が母親と寝かせられている幼児の方に行った。
夏が幼児の額に触って見る。大分熱がある。40度近い。意識はない。唇は紫だ。
母親がお湯に浸して絞った布で顔を拭いてやっている。
「随分高熱ね。これでは旅は無理だわ。いつから」
「もう4日位になります。3日前から動けなくなってここで静かに寝かせています」
夏が頭から首、胸へと手を動かして行く。
「肺が大変だわね。もう咳をする力もないか」
父親らしい人が心配そうだ。
「あの、二級ポーションをお持ちでしょうか」
「二級では治らないわね」
父親が下を向いてしまった。
「あちらの方から二級ポーションを譲ってもらったのですが治らなくて、今日もう一本買わせてもらったのですがもう飲めなくて大半をこぼしてしまいました。一級を買うお金もなくて」
「ちょっと見せて」
「これです」
瓶に三分の一ほど残っていた。
「ふん。これはただの水よ。苦味を出すために苦味の成分を加えてある。基本的に水ね」
「え、そんな筈が。二級という話ですが」
「おい。いい加減な事を言うな。それは正真正銘の二級ポーションだ」
「そう?二級はたしか小さい骨折なら治るのね」
「そうだ」
「それじゃ指を骨折したくらいなら治るのね」
「当たり前だ」
冬が男の指を折った。
「痛ててて。何をする」
「ほら、あんたが売りつけた二級ポーション。飲みなよ。治るんでしょう」
「・・・・」
「ほら、ほら。飲まなければ詐欺師よ」
「それでは量が少ないから治らない」
秋人が男の馬車からポーションを探してきた。
「お母さん馬車の中に大量にあるよ」
わざとらしく二級と書いてある瓶だ。
「良かったわね。一本飲めば大丈夫でしょう。ほら飲みな。飲んで治ればめでたく無罪放免だ」
無罪放免と聞いて男は夏が持っていた自分のポーション瓶を引ったくって飲んだ。
「ほら治ったろう」
夏がちょんと男の指を突っつく。男が飛び上がった。
「治った振りをするから痛い目に遭う」
「て、てめえ」
「まずはポーション代を返しな」
「奥様、後はわたくしめが」
「そう。任せたわよ」
セバスが男を馬車の影に引きずって行った。
男の仲間はイタサンとテオが一発殴りこれも馬車の影に引きずって行く。詐欺師は全部で三人である。
「夏、うちの馬車の中で治療だ」
「わかったわ。良かったらうちの馬車の中で治療します。両親はついてきてください」
「よろしくお願いいたします」
コレットが幼児を抱え馬車の中に移した。夏と両親も馬車に乗る。
冬とマロンも一緒だ。見学らしい。
僕が馬車に防音と中からの光を遮断するバリアを張る。
「春人さん、どうしたのかしら」
「肺の病気です。重症です。ほとんど肺が機能していない。空気の中から酸素という気体をわずかしか取りこめない。体力も落ちている。このままだと今日持つかどうかです」
「治るの」
「ポーションか魔法かですが、もう飲めないでしょうし、一級ポーションでも無理でしょうから魔法ですね」
馬車の中。
夏が幼児の胸に手をかざす。
「治療」
光が夏の手から出て幼児を包みこむ。数秒して光が消えた。
幼児の唇の色はピンクになった。すーすーと寝息が聞こえる。
「病気は治したけど体力が落ちているわね」
「お母さん、冬がやる」
「やってみて」
「ううんと、体力回復、肉つけ、筋肉つけ、ふゆふゆはあー」
「わんわんわあーん」
マロンも参加したらしい。
冬は何でもふゆふゆはあーらしい。
幼児のこけていた頬に肉がついた。痩せこけていた体も幼児らしくふっくらした体になった。
「クリーン」
夏が唱えるとぺったりして頭にはりついていた髪がふわふわになった。体も服も奇麗になった。可愛い盛りの女児だ。
幼児がぱっちり目を開いた。
「おっとう、おっかあ」
「良かった、良かった」
母親が娘を抱きしめている。父親も涙を流している。
ややあって父親が気がついた。
「さぞ高名な魔法使いの方とお見受けしますが、治療代が払えません。この上は奴隷として売っていただきたくお願いいたします」
「えええ、奴隷なんてあるの。いやだなあ」
「この国では表向きありませんが」
「いいのいいの。旅の途中にたまたま出会ったから。袖振り合うも多生の縁というから」
「そのことわざらしいのは聞いた事がありません」
「何かの縁が有ったって言う事よ」
「それでは全財産を」
「いらない、いらない。黙っていてくれればいいわよ。それが治療代」
「それでいいのでしょうか」
「いいわ。私たちにとってそれが最も価値ある事よ」
首を横に振っていた両親であるが、冬が
「いいの、いいの。お金持ちだから」
そう言うから無理やりそういう事にした両親である。
「さ、馬車を降りましょう」
馬車から下りる。幼児はピョンと馬車から飛び降りた。
にこにことセバスが布袋を両親に差し出す。
「これはにせ薬に払った代金の返金と慰謝料です。お持ちください」
「こんなに」
「どっち方面に行きますか」
春人が聞いた。
「王都の方です。少し行った先で街道から入った村です」
「そうですか。あいつらの処分も有りますのでここを立ってください」
「ありがとうございました」
両親があちこちに頭を下げる。
「気をつけて行くが良い」
女王が声をかけてやった。
女王にぺこりとお辞儀をして若い両親は幼児を荷車に乗せ馬に引かせて王都方面に向かった。




