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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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041 即位披露の準備

 無事即位式の一日が終わった。


 この国の伝統として王の即位が行われたら、即位式・祝賀パーティーに出られなかった低位の貴族と官僚、王都の主立った庶民、街と村の代表を招いて王の即位披露を行う事になっている。


 即位披露では低位の貴族と官僚、庶民代表、街と村の代表が初めて新王を間近に見る事が出来る。話す事も出来るかも知れない。地方の街や村にも必ず一人は直接新王に会った人がいる事になる。

 古き良き習慣なのであった。


 侍従長は忙しい。公爵と相談し、即位披露の招待者名簿を作り、急ぎ発送しなければならない。


 しかし今回は問題がある。結界が弱まった時に深い森から街や村の側まで強い魔物が出て来てしまっているのである。結界は強化されたが、魔物は帰らない。


 招待状は冒険者組合に依頼する。

 冒険者組合同士の連絡網に乗せれば逃げ足の速い冒険者が組合と隣の組合の間を往復しているのでそれを伝って招待状の宛先の街の冒険者組合まで届けられる。街の中は魔物がいないので剣も短剣も使えないF級冒険者に招待状を配達させればいい。

 冒険者組合のない村には最寄りの冒険者組合が地元を熟知している冒険者に依頼して村に届けてもらう。


 招待状はそれで問題はないが、問題は招待者の王都までの旅路の安全確保である。旅路が安全でなければ招待しても来ないだろう。それはまずい。女王の顔を誰も知らない街や村が出来てしまう。中央の人の顔を知らなければ反旗を翻すのに敷居が低い。

 困った侍従長である。


 相談された公爵もそうであったか、それはまずいと頭を悩ます。


 二人が思いついたのは、招待者を集団護送する方式とその昔行われたという巡幸方式である。巡幸によって民が王を知り、王も地方を知り良政が行われたという伝説がある。


「集団護送と巡幸とどちらが良いか」

「公爵様、集団護送方式は一度に終わりますが、護衛のために冒険者と軍の大量の動員が必要です。巡幸方式は時間がかかります。女王陛下が王都を空ける時間が多くなります。護衛の問題もあります」

「ううむ。弱ったな」


「陛下に」

「そうだな。王弟を誘って判断を仰ぎに行こう」


 かくして、公爵、王弟、侍従長が揃って女王執務室に向かう。


「どうしたの。三人揃って」


 公爵が切り出す。

「判断を仰ぎたく」


「何?」

「結界が弱まった結果、深い森から強い魔物が出てきて街や村の間で跋扈するようになりました。結界が強化された今も森に帰る様子がありません。場所によっては冒険者に軍が加わって対応していますが未対応の地域も多く難儀しています」


「わかっているわ。時間が解決するでしょう」


「そうなんですが我が国伝統の新王披露宴を開催しなければなりません。国中から参加者を集めるわけですがその行き帰りの安全確保が難しいと思います」


「困ったわね。集る人はその地域の指導者だわ。魔物に襲わせるわけにはいかないね」

「はい。思し召し通りです」


「それで案があるんでしょう」


「はい。二案あります。一つは招待者集団護送方式、もう一つは伝説の巡幸方式です」


 王弟が続ける。

「招待者集団護送方式は、一斉に国内各方面に軍を派遣しなければならず、また魔物対応に慣れた冒険者も必要でなかなか人材のやりくりが難しいです」


「確かにね」


「巡幸方式は、時間がかかる。そのため女王が王都を空ける時間が多くなる、護衛をどうするかの問題があります」


「集団護送方式はもし強い魔物に襲われると一遍に多数の地方指導者を失うわ。それは危険ね」


「それでは巡幸方式でしょうか」


「まず今王都の市場に通ってくる人達の街、村は問題ないから、王都の対象者と王都周辺の街、村の代表者を王都に集めて一回披露を行おう。それから巡幸にしましょう。王都から国境に向かい国境の街に着いたら国境沿いに進んである程度行ったら王都に戻ってくる。一回巡ったらしばらく王都で政務だ。何回かに分けて巡幸を行えば政務に支障は少ないだろう」


「護衛はいかがしましょうか」

「護衛は表は近衛兵、魔物対応を含む遊撃は春人一家にお願いしましょう。担当者に依頼させよう」


 本部長は災難だと王弟、公爵、侍従長は思った。


「それで春人一家が引き受けてくれないとこの案は実行できない。春人殿が引き受けてくれたらこの案を進めよう。春人殿には絶対引き受けてもらわなくてはならない。本部長に頼んでこい」


 本部長の災難の前に俺達の災難か。誰が行くと顔を見合わせる王弟、公爵、侍従長であった。


 ため息をついて女王が言った。

「お前ら三人で行ってこい」


 災難は平等に襲ってくると三人は思った。


 冒険者組合には公爵の馬車で行く事になった。

 

 冒険者組合についた三人、当然であるがすぐ本部長室に案内される。


 本部長、悪い予感しかない。


「なんだ」

「女王陛下より頼みがある」

「あーー」


「お察しの通り春人一家関係だ」

「うーー」


「春人一家に女王の護衛を依頼してくれ。正確に言うと護衛は表は近衛兵、魔物対応を含む遊撃は春人一家だ」


「どこへ行く」

「巡幸だ」


「予定は出来ているのか」

「春人一家に引き受けてもらったら予定を作る。引き受けてもらえなかったら巡幸は出来ない」


「ちょっと待ってろ」

 本部長が出て行った。


 すぐ3人冒険者を連れて戻ってきた。

「ふふふふ。では行こう」


 冒険者が王弟、公爵、侍従長の腕をとる。


「な、何をする」

「一蓮托生だ。それ公爵の馬車に押し込め」


 冒険者に馬車に押し込められた三人、最後に本部長が乗ってきた。

「むさいやつらだ」


 王弟が返す。

「お前もな」


 お互い悪態をつきあいながら四人を乗せた馬車は春人邸に向け走る。

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