039 新女王パレードが無事終了し即位祝賀パーティーが始まる
王宮前広場、群衆が集っている。
新女王がバルコニーに出てくるのを今か今かと待っている。
バルコニーに新女王、王子、王女、王弟、公爵が出て来て並ぶ。
民衆の拍手が鳴り響く。しばらく手を振って、バルコニーから室内に戻る。
「では公爵とパレードに行ってきます。エッカルト、頼んだわよ」
エッカルトとは王弟である。不測の事態が起きるといけないから王子、王女はエッカルトと留守番である。
なお正しくは女王の義弟であろうが面倒だから王弟と呼ぶ事にした。エッカルトにしても心は「女王」の「弟」である。王弟と呼ばれる事に抵抗はない。
女王の乗った馬車は前後を近衛兵の騎馬隊で守られ王宮の門を出て王宮前広場へ。
にこやかに手を振りながら広場を通過。
貴族街は忠誠の証とでも言いたいのか各屋敷の前は屋敷の人達で埋め尽くされている。
「動員されたわね」
「そうですね。主人からお達しが出ているのでしょう」
馬車は貴族街を抜けて中央広場に到達した。集っている庶民に手を振りながら広場をぐるっと回って向きを変え再び貴族街へ。
広場にホッとした空気が流れる。警備も緩くなる。後は庶民には関係ない。王宮と貴族、高級官僚、富裕商人、外国公館の連中の行事である。
早速屋台のおやじ達は目に付かないところに置いてあった屋台を引いてきて炭を熾して商売開始である。
屋台を準備している間に人が出てくる。屋台の準備が終わる頃にはまずまずの人出になった。
小悪党もそろそろ出て来ていつもの喧騒が戻りつつある。
城門の警備も厳重だがとげとげしさはなくなった。
ここ数日市場で物が売れなかった近隣の村人達もやって来る。
村人は数日間野菜などが売れず溜まっていたろう。村人が困って安売りしているのではないかと人が集ってくる。
広場は完全に賑わいを取り戻した。
一方、女王の馬車は無事に貴族街を通り抜け、王宮前広場でまだ待っていた人達に手を振り王宮に入った。
女王は着替えである。
控室で待っていた即位式の出席者達も再びパーティー会場へ移動である。
文官がアナウンスする。
「皆さん、まもなく女王陛下がお見えになります。しばらくお待ちください」
立食パーティーである。何となくそれぞれの立ち位置を探してざわざわしている。
ややあって侍従が文官に合図した。
「女王陛下がお見えになります。お静かに願います」
侍従が会場の扉をあけ、女王が入場してきた。
参列者が礼をする。
「良い。今日はめでたい事が重なって大変良い日となった。今日のパーティーは無礼講といたそう」
女王が公爵に合図を送る。
「ではご列席の皆様、女王陛下の思し召しにより、本日は無礼講となりました。上下分け隔てなく存分にご歓談ください。まずはエッカルト クラウスナー王弟の音頭により乾杯といたそう。なお、王弟は正しくは女王陛下の義弟だが、王弟と呼び慣らしてきたので従来通りとすることにした。ではエッカルト王弟、お願いします」
「エッカルト クラウスナーだ。本日は義姉上の女王就任、結界魔石の披露、結界リフレッシュ、S級冒険者誕生と盛りだくさんであった。なお、魔法庁副長官の報告によれば古い結界魔石は交換後すぐひび割れて粉々になったとの事、危機一髪、まことに危ないところであった。というわけで本日は語る事も多いだろう。まずは乾杯しよう。グラスのご用意はいいかな」
「乾杯」
「乾杯」
王弟の乾杯の音頭にあちこちから乾杯の声が帰ってくる。パーティーが始まった。
貴族達は考える。
国王ら四人の同時死亡後、上層部で残ったのは女王、女王と親しい王弟と公爵である。いろいろ噂は流れて来たが、時間が経つにつれ怪しいのを通り越して三人は真っ黒だと確信した。
軍務長官らの死にもどうも暗黒剣が関係していそうだ。
国王陛下ら四人を粛正してしまえば権力掌握に邪魔なのは、軍では軍務長官、行政では宰相補佐。共に国王派だ。軍務長官と宰相補佐は遅かれ早かれ失脚か反逆が予想された。
反逆させて国家反逆罪という立派な理由で、軍と行政の反女王派を一族郎党、完膚なきまでに叩き潰したのではないか。
その証拠に王弟が軍を、公爵が行政を掌握しつつある。まもなく完全に握られてしまうだろう。
あの暗黒剣は大変危ない。
貴族にとって無難な話題は結界魔石とS級冒険者である。
外国大使達は国内貴族に取り囲まれた女王に近づいた。
外国大使は考える。
国内がごたごたしていれば権力構造について情報収集しなければならないが、短い時間に反対派を一掃してしまった剛腕女王である。女王についての情報収集も必要だが、当面、問題になるのは結界とS級冒険者の情報である。貴族達が話題にしてくれるのは大変助かると聞き耳をたてる。




