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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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032 マロンの両親のフェンリルに会う

 服部家の庭を冬とマロンが追いかけっこをしている。時々マロンは冬に飛びついて抱っこしてもらいペロペロして休憩、休憩が終わると飛び降りてまた追いかけっこ。


「マロンの親はどうしたのかね」

「お館様、伝説ではフェンリルは子が生まれ走れるようになるとすぐ武者修業に出すとなっています」


「それは凄いわね。まだ力もないだろうに」

「奥方様、伝説では子犬にわからないように見守っているとなっています」


「家に来たりして」

「若様、伝説ではよほどの事がない限り人の住む街には現れないとなっていますが今回は子供がいますからわかりません」


「セバスは物知りだね」

「ありがとうございます」


「それじゃ、朝食後にもう一度森に行ってみよう。僕らが助けて人の街に向かった事は確認しているだろう。まだ親が森にいるんじゃないか」


「そうね。行ってみましょう。いたら挨拶ね。親に返すのかしら」


「でも冬が魔物はいたけど、強そうなのや大きいのはいなかったと言っていたよ」


「冬センサーは魔物に対象をセットしていたのではないか。対象を絞らなくては命あるものにみんな反応して煩くてしょうがないだろう」

「そうかも知れないわね」


「冬、こっちへ来て」

「なあに」


「マロンと同じような反応を探してみて」

「ううんと。王都にはない」


「昨日の森の方を探してみて」

「ううんと。ううんと。いた」

「どこ?」

「森の王都寄り。二つ」

「良くできました」

 夏が冬の頭を撫でている。


「親に返さなくちゃね」

 冬はマロンを抱きしめて下を向いてしまった。マロンが一生懸命冬の顔をペロペロしている。


「では行ってみよう。セバス。多分昼食はいらない」

「承知しました」


 朝食を済ませて屋敷を出る。もちろん徒歩だ。


 広場で野菜、果物などを備蓄のために買って人目を避けて収納、橋を渡って城門へ。今朝も混んでいる。


 城門を出て少しいくと街道の両脇は草原となる。

 初心者冒険者たちが一角ウサギを狩っている。

 昨日の少年少女冒険者もいた。深くお辞儀をしてくれたので手を振り返した。


 草原の中の森を目指す。今日は転移せずに走って行く。


 森に入るとマロンが冬の腕の中から飛び降りて走り出した。

 先に馬より大きいシルバーに輝く生き物がいる。マロンの両親だろう。


 マロンが駆け寄って親に舐めてもらっている。


『人の子に見える者たちよ。昨日はすまなかった』

「いえ、冬が気がついたものですから。ご両親が見守っているとはつゆ知らず失礼しました」


『いや、たまたま目を離した隙にジャイアントエイプにつかまって、エイプのおもちゃにされていたところだ。助かった』


 フェンリルの親も「たまたま目を離した隙に」ということがあるらしい。


「それで今日はお子さんを返しに来ました」


 冬は今にも泣きそうである。

 フェンリルはそれを見て微笑んだように見える。


『人の子に見える者たちよ。我が子を預けよう。その小さき者と我が子は深い絆が出来た。一緒に暮らすが良い』


「いいの?」

『いいわよ。時々狩りをさせてね』

「うん」


『では、我々は人の言う入らずの森の奥に帰る』


『あなたは先に帰っていいわよ。私はこの子が世話になる家をみてしばらくしたら帰るから』


 パパフェンリルがえっというような顔をした。

『お前、だって、俺一人。しばらくっていつまで』

 さっきまでの威厳はどこに行った。しょぼんとした顔をしている。


『しばらくと言うのはしばらくよ』

『そんな。じゃ俺も行く』


「どうぞ、どうぞ。歓迎します」

『そうか。すまない。では行こう』


 気分が向上したパパフェンリル。ママフェンリルはふんという顔をしている。


「ええと、しかし、その大きさ、威光では人の街に入るのは難しいかと」

『大丈夫だ。小さくなればいいんだろう』


 あっという間に小さくなった。それでも大型犬サイズである。


『これでどうだ』

「はい。マロンの親らしくなりました」

『そうだろう。そうだろう』

 パパフェンリルは得意そうである。


 森を出て街道を王都に向かう。すぐ城門が見えてきた。

 朝のラッシュは終わり多少すいていた。


 この間の衛兵さんがいた。

「こんにちは」


「それは、それはなんだ」

「子犬のマロンの親です」


「親だと」

「子犬の親です」


「子犬の方はちゃんとほらスカーフで目印をつけています。はい、国民カード」

 押し通った。


 背後で何か聞こえる。

「おまえ、あれまずいんじゃないか」

「犬だ。犬。俺はいぬ。帰る」


 衛兵さんは急病になったらしい。かわいそうに。


「一応冒険者組合に挨拶しておこう」


 大型犬に見える二頭と一緒に冒険者組合に入ると中の喧騒が無くなった。

 今日も受付にいる強面おじさん。


「こんにちは」

 すかさず指を差される。応接室だ。


 応接室で待っているといつものお姉さんがお茶を持ってきた。本部長も来た。


「今度はなんだ」

「子犬のマロンの親です」


「ち、また鑑定できない」

「あ、鑑定対策を忘れていた。まあいいか」


「それでどうしておいでになった」

「子供が住んでいるところを確認に両親がやってきた」


「すぐ出て行ってもらえるんだろうな」

「しばらくいるそうです」


 本部長は弟のハインツ組合長と同じ仕草で天井の悪魔を探している。

 悪魔は組合本部の天井にもいなかったらしい。


「ではそういうことで」

「フェ、御両親様。どうかお心平らかにお過ごしくださるようお願い申し上げます」


『うむ。我が子と我が子の保護者一家に手を出さなければこの人の街は無事であろう』


「あ、あの多少の事は」

『心配するな、多少の事は目をつぶろう』

「よろしくお願い申し上げます」


「広場で串焼きを食べて行こう」

『串焼きとな。それは旨いか』

『パパ、美味しいよ』

『よし、行って見よう』


 春人一家とフェンリル一家が出て行った応接室。

 はっと我に返った本部長。

 慌ててホールに出て行った。


「今いる冒険者は緊急招集だ。集まれ」

 数十人の冒険者が集まった。


「緊急指令だ。いいか。今出て行った方々に先回りして広場に行け。広場に行ったら串焼き屋台に二人づつへばりつけ。無事に今の方々に串焼きを買ってもらえ。残りの冒険者は広場の警備だ。目立たないようにやれ。職員も窓口をのぞき出動だ。緊急招集手当ては出す。行け」

 冒険者と少し遅れて職員が走って外に出ていった。


「俺は衛兵隊、それから王宮に行ってくる。頼んだぞ」


 留守番に言いおいて本部長はとりあえず城門の衛兵隊詰め所に向かった。


 若い衛兵隊員がいた。

「おい、手伝ってくれ」

「俺達は衛兵隊だ。冒険者ごときに指図は受けない」


 奥から中年の衛兵が出て来た。若い衛兵の頭を叩いた。


「黙っていろ。どうなさいましたか」

「さっき大きな犬のようなものを通したろう」


「おい、通したか」

「はい。同僚が知り合いのようなので通しました」


「その同僚はどうした」

「なんだか気分が悪くなったようで帰りました」

 ややまずいと思った若い衛兵であった。


「とにかく出られるだけ広場に出てくれ。大きい犬のようなもののご一行が無事に串焼きを食べ広場を出るまで目立たぬように警護してくれ。隊長には後で説明しておく」


「わかりました」

 中年の衛兵が答えて、急いで奥に行って休憩していた衛兵を連れて広場に向かった。もちろん若い衛兵もついて行った。


 本部長は裏道を猛スピードで走って近衛兵の隊舎を目指す。さすが元S級である。すぐ着いた。


 隊舎に飛び込んだ。

「おい、隊長はいるか」

「はい、隊長室に。呼んできます」

「いい。俺が行く」


 隊長室のドアを開ける。すぐ閉めた。


「どうしました」

「フェンリル子犬の親2頭が来た。大型犬に変化している。今春人一家と広場に向かい、串焼きを食べるところだ。広場までは冒険者と衛兵に警護を頼んだ。お前は広場を出てから春人殿の屋敷まで警護をしてくれ。無事に送り込め」


「何かあると王都が壊滅します。すぐ出ます」

 隊長が隊長室を飛びだした。


「緊急招集だー。訓練場に集れー」

 わめきながら訓練場に走る。


 緊急招集だーと言う声があちこちからあがる。

 非番の兵も含め訓練場に集った。


「緊急指令だ。中央広場の貴族街側からこの間指定した重点警備地点Hまで警備せよ。大型犬を連れた御一行が通る。たとえ貴族、高級官僚の馬車であっても御一行の邪魔をさせてはいけない。止めろ。言うことをきかなければ逮捕だ。どんな上級貴族であっても逮捕だ。うるさければ猿ぐつわをしろ」


 副隊長が集った兵を割り振って出発させた。隊舎から距離がある広場の貴族街側までは隊長を先頭に騎馬隊が出発した。


「おれは王宮に行ってくる」

 連絡のため残った副隊長に言いおいて本部長は王宮に向かう。

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