030 冒険者組合で魔石を売りポーションを見せてもらう
夏が本部長に聞く。
「ところで魔石は幾ら?」
「ジャイアントエイプの魔石は、一つ金貨60枚。二つで120枚。オークションにかければもっといくかも知れない」
「120枚でいいわ」
「エイプは一個につき中銀貨一枚だ」
「安いわね」
「魔石ランプ、魔石コンロなど日用品に使われる。そんなに高い値段では庶民が苦しむ」
「もっともらしい理屈だわね。しょうがない。それでいいわ」
「待って。魔石ランプを作ろう。そのエイプの魔石は売らないで」
「秋人が作るの?」
「うん。見本があれば作れると思う」
「秋人は手先が器用だったからね」
手先が器用だからといって作れるものではないと本部長は思ったが、もしかするとこいつらには作れるかも知れないと黙っている事にした。
「それじゃ金貨120枚だ」
「普段遣いに少し細かくしておいてくれる」
「わかった。今用意する。忘れていた。一応タグを確認させてくれ」
4人のタグを預かって本部長が出て行った。
「マロンに何か目印と言われたが、首輪か」
「やだ。隷属の首輪を思い出す」
「それじゃスカーフでも巻いておくか」
「それでいいよ」
「帰りに布を買おう」
「うん」
話していたら本部長が戻ってきた。革袋を持ってきた。
「これが金貨、こちらが中銀貨。確認してくれ」
「確かに」
夏が鑑定して収納した。
「それから冒険者タグを返す。共同討伐 ジャイアントエイプ2頭、共同討伐 エイプ57頭だ。冬ちゃんだけ一角ウサギ一匹だ」
じっとりと4人を見る。
「冬ちゃんだけ一角ウサギ一匹だ」
もう一度言った。
「冒険者タグは騙せないんだろう。冒険者タグの通りだ」
冒険者タグを収納すればタグに討伐記録がつかない事がわかった。何かを遮断したのだろう。
「ポーションと言うのがあるそうだな」
「ある。三級、二級、一級ポーションだ。エリクサーというのがあるということになっているが、誰も見た事はない。伝説だな」
「何が治る?」
「三級は打ち身、切り傷、捻挫など。二級は少し深い傷、小さな骨の骨折など、一級は深い傷、大きな骨の骨折などだ」
「開放骨折は?」
「骨が飛び出たやつか。奇麗に折れていれば金瘡医が一級を使って治療すればうまくすれば治るかも知れないという程度だ」
「病気には効かないのか」
「俺は元々冒険者だから忘れていた。効くぞ、順に軽い病気、すこし重い病気、重い病気だ」
「病気に対してどうやってポーションの級を選ぶんだ」
「経験だな。それに下から順に使って効かなかったら上級のポーションを使う」
「いい加減だな」
「怪我は割合わかりやすいが、病気はわかりにくいからしょうがない」
「ふうん。ポーションを見た事がない。ちょっと見せてくれるか」
「見るだけか」
「見るだけ」
「まあいいか。待っていろ」
本部長が部屋を出て瓶を六本持ってきた。日本のなんとかDの瓶と同じようなサイズだ。
「これが三級、二級、一級のポーションだ」
「そっちの三本は?」
「解毒薬の三級、二級、一級だ。三級は食あたり、二級は食あたりより症状が重い食中毒、一級は魔物の毒に効く。猛毒には効かないが」
「手に持ってみても良いか」
「栓を外さなければ良いぞ」
4人で手に持って確認した。マロンは匂いを嗅いでいる。
「わかった。ありがとう」
本部長はいつものじっとりした目つきだ。
「確かに封は切られていないが」
「手に持って眺めただけよ」
「そう見えたが・・・」
「ならいいんじゃない」
「・・・・・・」
「それでこれは誰が作っているんだ」
「薬師だ」
「薬師というのがいるのか」
「いる。薬師組合もある」
「ポーションは薬師組合から買っているのか」
「大部分はそうだ」
「大部分とは?」
「持ち込みもある」
「持ち込んでも良いのか」
「ポーションはいくらあっても困らない。だから持ち込みも許可している」
「薬師組合から苦情が出ないのか」
「薬師組合からのポーションでは不足だ。増産を持ちかけても出来ないと返事がある。材料がない。薬師が不足しているとか理由に挙げている。持ち込みに苦情を言うなら自分たちで量を確保してもらわなければ困る。連中には出来ない。だから薬師組合は持ち込みに苦情を言えない」
「それに持ち込みは量が少ない。また薬師は国の資格ではない。誰がポーションを作っても問題にはならない」
「冒険者がポーションを買うとしたら幾らだ」
「ポーション、解毒薬ともに三級は中銀貨1枚、二級は大銀貨1枚、一級は金貨1枚だ」
「買い取りは幾らだ」
「同じ級でも品質に差がある。一概には言えない。特に野にいる薬師の持ち込むものは品質にばらつきがある」
「鑑定して購入しているのか」
「そうだ。薬師組合納品のものは薬師組合が品質保証するから鑑定しない。それ以外は鑑定する。売るか?」
「何で売る話になる」
「今瓶を見たろう。詳細な鑑定をしたのではないか。すぐにでも大量納品が出来るのではないか」
「俺達は薬師ではないからなあ。材料が何か、どうやって作るのか、何も知らないからなあ」
白々しいとジト目がひどくなる本部長。
「おじさん、魔石ランプってある?」
「ここをどこだと思っている。24時間営業の冒険者組合本部だぞ」
「見せてもらっていい?」
「そこにかかっているだろう」
「あ、あれか」
秋人が魔石ランプを外した。くるくる回して見ている。
「はい、お父さん」
春人が同じように見て、夏、冬へ。最後に秋人へ戻った。マロンは相変わらず匂いを嗅いだ。
「ありがとう」
「見ただけだろうな」
本部長は疑いの目だ。
「見ただけだよ。点けてみれば」
本部長が魔石ランプを点けてみる。
「点いたな」
「でしょう。見ただけだから」
「いやあ、眼福、眼福」
春人が余計な事を言う。さらに疑惑の本部長であったが、確かにランプは点いた。壊れてはいないが。
「では帰ろう」
冒険者組合を出て広場の方へ歩き出した。
「お父さん、お腹が空いた」
あ、昼食を忘れた。
「夕食が近いからね。広場で串焼きでも買って食べよう」
「早く行こう」
「ワンワン」
冬が思い出した。
「マロンのスカーフの布も買わなくちゃ」
布を売っている店でスカーフを探す。丁度よい黄色の布があったので購入。手早く布にマロンの足跡をつける。隅の目立たないところに家紋を入れておく。
「巻いてやりな」
冬がすぐマロンの首にスカーフを巻いた。
「不壊とマロンの成長に合わせて生地が大きくなるようにしておこう。家族以外は解けないぞ」
マロンの首の下に垂れたスカーフにマロンの肉球が黒く押されている。黄色い足跡つき三角がかなり目立つ。そして可愛い。
マロンが大きくなれば三角の部分の面積も増え子犬の時の足跡も増える仕様だ。良くできた。春人の自画自賛。
「マロン、可愛い。お父さん、ラノベでは貴族のわがまま娘が欲しいと騒ぐんだけど」
「そんな都合よく展開しないだろう」
「そうだよね。マロン、串焼き食べよう」
屋台で串焼きを5本頼んだ。マロンも一本だ。冬が串から肉を外してマロンに食べさせている。
串焼きを食べたがまだお腹が空いているから急いで屋敷に戻った。
「ただいまー」
「ワンワン」
「お帰りなさいませ。ところで冬姫様の腕の中の子犬のような生き物は何でしょう。たいそう強そうですが」
「エイプの大群にいじめられていたんだよ。冬が助けた」
「フェンリルの子供だけど、鑑定したら子犬、0歳、名前:マロン、飼育者:冬と出るようにしておいた。冒険者組合の本部長は気がついたみたいだけど子犬で押し通した」
「本部長は元S級冒険者ですから」
「スカーフのここに小さく家紋を入れておいた」
「承知しました。馬車の家紋はもう描けましたが乾燥させていますので出来上がりは明日になります。それから家紋を紋章官に申請しておきました」
「ありがとう。それはどうなるの」
「紋章官が紋章を管理しています。紋章に変更があった場合貴族、役所に連絡をします。春人様の家紋は、変更なしの紋章として登録申請しておきました。家名は冒険者タグの通り、無しにしておきました。即位式後に各貴族、役所に通知されます」
「家名無しでいいよ。その方が気楽だ。それで貴族は相手の馬車の紋章を見て道を譲るかそのまま通るかしているのか」
「御者同士は行事の度に会いますので知り合いが多く紋章を見なくてもわかります」
「なるほど」
「すぐ夕食になさいますか?」
「お腹空いた」
「冬がそう言っているから夕食にしよう」




