029 少年少女冒険者を助け王都に戻る
森から出た。
マロンは元気回復、先に行ったり後になったり回りを走り回っている。
「危ないから離れたらダメだよ」
言われるとすぐ戻ってきて冬にジャンプして抱っこされてぺろぺろしている。
少し休んだらまた飛び降りて走り回っている。
立ち止まって鼻をヒクヒクやっている。
「ワンワン」
「お父さん血の匂いがするって」
「冬、マロンと行ってみろ。秋人ついて行け」
冬、マロン、秋人が走っていく。
「怪我人二人みたいだな。一人は大怪我だ」
「そうね。行ってみましょう」
春人も夏も急ぐ。すぐ現場についた。
子供の冒険者4人。一人は倒れている。一人は腕から血を流しているがたいしたことはない。倒れている少女を介抱している。二人は無事で短剣で一角ウサギを牽制している。
「どうした。助けが要か」
「助けてください。一角ウサギに後ろから太ももを刺されました。僕らの持っているポーションでは治りませんでした」
脚を見ると大腿骨が複雑骨折して骨が飛び出して太ももが今にももげそうだ。一角ウサギの角に突き破られたのだろう。
「治してやろう。特級ヒール、クリーン」
特級ヒールなんてちょっと格好をつけた春人であった。
ズボンは破れたままだが脚は奇麗に治った。血も傷もない。
「そっちの腕の怪我はポーションで治りそうだな。ポーションはこれか」
春人が落ちていた瓶を拾った。底に少し液が残っている。
夏に渡した。秋人、冬と手にして春人に戻ってきた。
春人が自分の水筒の中身の水を瓶の底にあったポーションを参考にポーションに変えた。
「ポーションだ。腕を見せてごらん」
春人が水筒のポーションで傷を洗い流す。傷は奇麗に治った。
ポーションの瓶をすすいで水筒のポーションを入れた。
フタはコルクのような栓らしい。落ちていたものを拾ってクリーンをかけて栓をした。
「ポーションを入れておいた。簡単な傷なら治るだろう」
「ありがとうございます。これは一級ポーションでしょうか。とても代金は支払えません」
「いや、いい。ポーションの瓶を見たのは初めてだ。それが代金でいい」
「治療の代金も払えません。トッキュウヒールなど聞いたことがありません。だからさっきの怪我は高名な魔法医でも治せません」
「それは知らなかった。なら黙っている事が代金だ」
「それでは・・・」
「いや俺達にとっては黙っていてもらう事に大変な価値がある。気にするな」
「絶対話しません」
「もう帰るか?」
「はい。予定の数を捕まえて欲を出したらやられました」
四つの袋にそれぞれ何匹かの一角ウサギが入っているようだ。
「そうか。街道まで一緒に行ってやろう。街道に出れば見晴らしがいい。気をつければ不意を突かれる事もないだろう」
「お願いします」
少年少女冒険者と街道まで一緒に出た。
「それじゃ気をつけて」
「はい。ありがとうございました」
少年少女冒険者は袋を担いでゆっくり歩く。
「優しいのね」
「俺の使命は青少年育成でもあったからな。剣道、柔道、空手のクラブはそういうつもりでやっていた。赤字ですまなかった」
「そういう気持ちでやっていたなら言えば良かったのに」
「恥ずかしいだろう」
夏が春人の腕を取った。
「お父さん、お母さん、先に行っているよ」
下ネタの次はのろけか。やってられねえと秋人と冬が走り出した。
「ワンワン」
マロンも走ってついて行く。
「俺達も走るか」
ぴったりくっついてゆっくり走る春人と夏。今晩も良い夢を見そうだ。
城門に着いた。秋人と冬が衛兵ともめているらしい。
「どうした?」
「この子はなんだって煩いの」
「そんなものは王都に入れられない」
「見ればわかるだろう。これは子犬だ」
「本当か」
「子犬よ、子犬」
「ワンワン」
「ほら、本人も言っている」
「本人ではなく本犬だろう」
「そうだ、犬だ。子犬だ。わかっているじゃないか」
うっかり本犬と言ってしまった衛兵。
「ほれ、これが国民カードだ。入る」
国民カードを見せられ春人に押し切られた衛兵である。
「冒険者組合、魔石、金貨よ」
夏が煩い。
組合に入ると今日も受付に中年のがたいの良い短い髪で目つきの良くない男が座っている。言わずと知れた本部長である。誰も前にいない。
目が合ったら奥を指さされた。指の先は応接室である。
応接室に入るとすぐ色っぽいお姉さんがお茶を持ってきた。
お姉さんと入れ替わりに本部長が部屋に入ってきた。
「それはなんだ」
「それって?」
「冬といったな。お前が抱いているものだ」
「子犬です。拾った」
「子犬だと」
「子犬です」
「ワンワン」
「ほら、子犬です」
「くそ、鑑定できない。フェン」
「フェンではなくて子犬です」
「鑑定できないなら何だかわからないから子犬でいいんじゃない」
「夏殿、そういうわけにはいかない。俺が鑑定できなければ俺より強い。王都で鑑定できる人間はいない。魔法庁にもいない。鑑定できなければ大災厄級の魔物と思われてしまう。知っていれば神獣のフェン」
「だから子犬。鑑定で子犬と出ればいいんだろう。名前も必要か。子犬、マロン、年齢0歳、飼い主は冬と出ればいいんだろう」
「それはそうだが」
「よし、そうしよう。鑑定して見てくれ」
「子犬、0歳、名前:マロン、飼育者:冬。くそ」
「無事に鑑定できたようだね。では子犬ということで」
「何か目印をつけておけ」
「はいはい」
「ところで今日は子犬モドキを見せに来たのか?」
「これよ。魔石」
夏が大猿2頭のピンポン玉大の魔石を出す。
「細かいのもあるわよ」
小さい魔石57個追加した。
「これはどこにいた」
「城門を出て蛇村の反対の方へ行ったところの森だ」
「他にいたか」
「冬、いたかい?」
「魔物はいたけど、強そうなのや大きいのはいなかったよ」
「そうか。良かった。この大きい魔石はジャイアントエイプだ。俺も見た事はない。S級だ。小さいほうは、エイプだな。一頭ならB級、これだけいっしょにいればA級から場合によってはS級だ。そのフェンリ、子犬一匹では敵わないだろう」
「おじさん、良く分かったね。この子犬は猿に取り囲まれていじめられていた」
「あいつら残酷だからな。獲物を一思いに殺してしまえばいいがいたぶるんだ。人がつかまったら悲惨だ。討伐出来て良かった。礼をいう。冒険者組合で討伐するとなると多大な犠牲が出る」
「どうしてこんな魔物が王都のそばにいるんだ。大蛇もそうだが」
「それは結界が弱まっているのがわかったのだろう。結界がなくなれば人の住む王都、街、村は餌狩り場だ。結界が消えるのを待っているのではないか」
「沸いて出たわけではないだろう。普通はどこにいるんだ」
「深い森だ。それと入らずの森という森がある。魔境とも魔の森とも呼ばれている。人が入れない広大な森がこの国の北方にある。どの国も領有できない」
「過去に領有を宣言した国があるが、それではと入らずの森の周辺国の代表が集まって、国境を確定すると領有を宣言した国の宰相を呼び出し、自分の国なら入ってみろと入らずの森に押し込んだ」
「どうなった」
「十数歩入らずの森に足を踏み込んだらあっという間に魔物の餌食になった。それ以後、入らずの森の外周を国境とすることで全周辺国が合意した。その中は言ってみれば魔物の王国だ」
「へえ。そのうち行ってみるかな」
「・・・」




