027 仕立屋に寄ってから郊外へ
魔法談義が終わって朝食を済ませて春人一家は仮縫いに出かける。
王都見学をするので昼食は不要と言い置いた。
春人家の馬車は家紋を入れるからとツキカゲ家が持って行った。代りにヒカゲ家から黒塗り馬車が来た。もちろん御者はヒカゲ家の者である。
セバス執事が馬車の扉を開ける。
「お館様、奥方様、若様、冬姫様、どうぞお乗りください」
馬車に乗り込んだ一家。
「どうも調子が狂うな」
「そうね。平警官だったものね」
「いや警視正だぞ。キャリアだ」
「現場勤務の落ちこぼれ警視正」
「望んで現場勤務だ。国民の皆さんの安全を守る第一線で活躍の警視正。ドラマになりそうだ」
「お父さん、キャリアだったんだ」
「そうだ。すごいだろう。秋人もなるか」
「勉強は沢山。こっちに来て伸び伸びだ」
「冬はニュースで警察犬とお父さんが遊んでいるのを見た」
「あれは休憩の時とられた。後で警官が犬と遊んでいると苦情があったが失礼なやつらだ。警察犬をリラックスさせるのも仕事だ。苦情を言ったヤツは救急隊員が勤務時間中に救急車でコンビニに乗りつけ弁当を買ったと文句を言うヤツに違いない。救急車で署にもどってゆっくり昼食をしていれば救急車の稼働率が下がって救急車の到着までの時間が延びる。救急隊員は休憩時間を削って働いているのにそういう事もわからないやつらだ」
そんな話をしていたら服屋についた。
すぐ店員が出て来た。今日は若い店員はいないらしい。
春人達を確認して店員がすぐ奥に走って、主人のサルトールが出て来た。
「お待ちしておりました。さ、どうぞ」
馬車は御者がそのまま店の馬車置き場に回した。場所はわかっているらしい。店員が驚いている。
「今日は若い店員さんはいないね」
「あれは遠い街にいる弟のところに修業に出しました。店の掃除からやり直しです」
お茶が出てきて、奥さんも出て来た。
差し障りのない話をした。
仮縫いは特に手直しするところはなかった。注文通りである。よほど採寸が上手なのだろう。メジャーでは計りきれないところまで目で手で確認してあったのだろう。さすがの本部長紹介の服屋さんだ。
「使用人の皆さんの服の仮縫いはいかがいたしましょうか」
「必要ないだろう。本縫いして納品してもらっていい」
「承知しました。そうさせていただきます」
夏と冬もほどなくして応接室に戻ってきた。特に直しはないそうだ。
納品は自宅にしてもらう事にした。
馬車には帰ってもらって4人で王都を歩く。
「どこに行くの?」
「冬はどこに行きたい?」
「外、王都の外」
「そうか。行ってみるか」
広場を抜けて橋を渡って城門から外に出る。今日も混んでいる。
「蛇の村の反対側に行こう」
冬がみんなを引っ張って行く。
すぐ人通りが少なくなった。
「こっちは村も街もないね」
道は草原の中を突っ切って行く。
「お父さん、一角ウサギが沢山いるよ。冒険者がウサギを狩っている」
「王都の食料になるのだろう」
「串焼きの材料じゃない。一角ウサギが沢山いるから安いのでしょう。手ごろな値段で美味しい」
「とっていく?」
「とりすぎては悪いから一人5匹づつにしましょう」
「わかった」
「秋人、待て。あまり一角ウサギの討伐記録がついても初心者狩り場荒らしになってしまうぞ」
「それなら冒険者タグを収納してやってみましょうか」
「お、それは良い案だ。さすが夏はわが家の知恵袋。4匹まではタグを収納した状態で討伐、一匹分はタグを身に付けて討伐。あとで冒険者組合に行って確認しよう」
「S級じゃ一角ウサギはランク外じゃない」
「たまたま襲われたとか」
「一匹づつ討伐したのではおかしいと思われてしまう」
「それでは全員タグを収納して5匹づつ討伐。冬は一匹はタグを出して討伐にしよう」
「わかったー」
冬と秋人が冒険者タグを収納し、冒険者のいないほうに走って行く。飛びかかってくるところを短刀で刺して収納。
「お母さんとったよ。一匹はタグを収納から出して討伐したよ」
「行きましょう」
春人と夏がゆっくり歩いて行くと一角ウサギが飛びかかってくる。すぐに春人も夏も5匹収納した。もちろん冒険者タグは収納した状態だ。
「では血抜きをして内臓を取り出そう」
秋人が「穴」。穴が出来る。
収納してあった一角ウサギをとり出して、血抜きは「血抜き」だ。一瞬で血が無くなる。お腹を裂いて臓器を取り出し穴に投げ入れる。もう一度五匹づつ収納して秋人が穴を埋める。
「うまくいったかな。楽しみだ」
「でも一角ウサギ一匹だけ持ち込んでも変だよ」
冬は変に気が回る。
「向こうに見える森に行きましょう。それらしい獲物がいるかも知れない」
「わかったー」
また二人で駆け出す。
「途中一角ウサギはとるなよ。タグは出しておけ」
「わかったー。転移ー」
冬が森の際まで転移した。さすがラノベ姫である。
一泊遅れて秋人も転移。
「へえ、転移か」
「私たちも行きましょう」
夏が転移した。先の方に三人揃った。
「あ、置いて行ったな。転移」
追いついた春人である。




