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服部家一家 異世界に召喚される  作者: SUGISHITA Shinya


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026 家紋 先代服部勇者 自称天才魔法少女冬姫

 使用人を雇って数日経った服部家。


 使用人は仕事にも一家にも慣れてきた。

 使用人に対する夏の食事全般に関する講習も順調だ。


 春人は屋敷にあった本の面白そうなものは読み終えた。手書きだから文字は大きいのである。すぐ読める。


「旦那様。今日は衣装の仮縫いの日です」

「あ、忘れていた」


「朝食を召し上がってから出かければ丁度よいと存じます」

「そうしよう」


「それとご相談があるのですが」

「なんだい」


「黒塗りの馬車に紋章を入れたいのですが」

「必要か」

「はい。S級冒険者には必要です」


「そうか。じゃあ家門でも入れるか」

「カモンとは」


「ああ、わが家に伝わる紋章のようなものだ。紋章と違ってデザインが変わる事はない。冬」


 冬が紙を出して書き始める。


「そ、それは」


「源氏輪に並び矢という家紋だ」


「ヒカゲ家、ツキカゲ家の当主と主立ったものを呼んでこい」

 侍女のコレットが急ぎ足で出て行った。


「どうしたの」

「ヒカゲ、ツキカゲ当主が参りましたら確認させていただきたい事があります」

「そう。いいけど。居間で待っていよう」


 数分して両家の主立ったものが居間に集まった。春人の使用人も全員集まった。


 セバス侍従が冬の描いた家紋を掲げる。

「ハットリ家の家紋だそうです」

「おお」


「春人様、春人様のお名前はもしやもう少し長いのではないでしょうか」


「はっとり はんぞう はるとだよ。使わないけどね」

「かっこいい。ニンニン」

 冬は正常運転だ。


 ヒカゲ家、ツキカゲ家、使用人が一斉に跪いた。


「棟梁様・・・五百年はなごうございました。しかし次の召喚にはおいでになると思い家をつないできました」

 全員涙ぐんでいる。


「どうしたの?」

「我々は服部半蔵保永勇者様に仕えた一族です。次の召喚に棟梁がお見えになるかも知れないと一族が結束し、今までつないできました。このたびまた服部家にお仕えできることができ五百年越しの悲願が達成されました。我ら命をかけて服部家にお仕えします」


「あれ、王宮の」

「よすぎの手段です。服部家に敵対しない限りうまく使います」

「そうなの」


「棟梁様、奥方様、お世継ぎ様、お姫様。よろしくお願いいたします」


「棟梁なんて、春人で良いよ」

「そういうわけにはまいりません。ではお館様で」

「ううん、まあいいか」


「奥方だなんて」

 そう言うがまんざらでもない夏であった。


「お世継ぎ様は時代劇だな。秋人でお願いします」

「では若様で」


「冬は姫、冬姫よ。恐れ入ったか」

「ははー」


 含み笑いをしながら返事をするヒカゲ家とツキカゲ家の人々。涙も引っ込んだらしい。


 かくして一家の呼び名は、お館様、奥方様、若様、冬姫様になった。


「それで五百年前の服部半蔵さんは子供は作らなかったのかい」

「はい。自分は異世界の人間だからこの世界の人と子を為すわけにはいかないと言って、毎日剣術の修業に明け暮れていたと伝わっています」

「そういう考えもあるのか」


「修業の合間は我らの祖先と一緒に魔物狩りをして過ごしたと記録にあります」


「魔法は使わなかったのかな」

「はい。魔法の代りに気を使ったとあります」


「気ってこういうのかな」

 冬が手のひらを窓の外に向けた。


「ふゆふゆはあー」

 間抜けな声を出した。


 高空を飛んでいたものが落ちていく。

「下にいる人が怪我をするといけないわね」


 夏に言われて冬が右手を指鉄砲にして

「バン」

 何か知らないが落ちる途中で消えてしまった。


「はい、良くできました」

 夏に褒められて抱きついて頭を撫でてもらった冬姫である。


「冬姫様の最初のふゆふゆはあーが気で、バンが魔法と思います」


 セバス執事の見解だ。皆一応頷いてはいるが微妙な表情もしている。セバスは変な気だと思ったがみんなもそう思っているのだろうと安心した。


「みんなは魔法は使えるの?」

「秋人様、使えますが、秘伝書を読んで会得しなければなりません。なかなか難しいです」


「冬が教えてやる。親指を立てて人差し指を伸ばして他の指は握って、人差し指から玉が出ると思って、バンだよ」


 セバスがやってみる。

「指の形はこうでしょうか」

「そうだよ。その形は指鉄砲というんだ。人差し指から玉が出るんだよ」


 セバスが窓の外の木に向かって「バン」。

 木の葉が落ちた。

「おおー」


 一斉にバンバン始めた。皆木の葉を落とせるようになった。


「慣れればさっきみたいにできるからね」


「冬姫様、ありがとうございました。名付けて冬姫指鉄砲魔法、指の形と詠唱のバンを加えて早速ヒカゲ家忍法秘伝書に付け加えます」


「えへへへ」

 冬の魔法に名前がついてしまった。


「バンは言わなくても良いんだよ」

 衝撃的な冬姫の発言である。


「あの、詠唱なくしては魔法は発現しませんが」


「そうなの。こうだよ」


 黙って指鉄砲を撃つ。高空を飛んでいたものが消えた。

「おーー」


 春人が解説する。

「魔法と言うのは明確にこうしたいと思えば発現するのではないか。詠唱と言うのは、詠唱に魔法でこうしたいということを関連付けているのではないか。関連付けを覚えたら詠唱するだけで詠唱に関連付けられた魔法が発現する」


「バンというだけで魔法の内容をいちいち頭の中で構成する必要はない。詠唱に関連付けて覚えた魔法が発動する。だから詠唱は口に出して言う必要はないし長たらしい詠唱である必要はない。詠唱と魔法の内容が結びつけば良い。そして実際の魔法の発動は、基本の詠唱に変えたい部分を付け加えればいい。たとえば、バン+もっと威力を大きくとか、バン+範囲を絞るとか頭の中で詠唱に付け加えればいい」


「難しい」

「慣れれば楽だ。威力の大きいバンの詠唱、範囲を絞ったバンの詠唱を別々に作らなくてよい。魔法を使うとき基本のバンに付け加えるだけでよい」

「やってみます」


「大丈夫、冬でさえ出来るんだから」


「冬は適当にやっているんだよ。お父さんの解説も冬の適当魔法につじつまを合わせた適当解説だよ」


「秋ニイ、適当じゃないよ。適切だよ」

「じゃあ俺のは適切解説だ」


「みんないい加減なのよ。本気にしちゃダメよ」


「いや、奥方様、冬姫様は天才です」


「冬は天才魔法少女、冬姫だよ」

「ははー」


 尊敬半分からかい半分の「ははー」であるが、冬は嬉しそうだ。

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