025 国王派貴族は会合する
「みんな揃ったか」
「全員いる」
「それでは国王陛下に黙祷しよう。黙祷」
「直れ」
「まずは現状の分析をしよう」
「王妃は健在、即位式の案内が来た。女王だな。久しく表に出ていなかった公爵が行政を、王弟が軍を見ている。しばらくすれば掌握されてしまうだろう。彼らは陛下とそりがあわなくて遠ざかっていたが能力的には陛下より上だった」
「能力が上だから遠ざけたのだろう。今となっては仇となった」
「王弟は王位を狙わなかったのか?」
「あれは小さいときから王妃に弟のように可愛がられていたからな。おじさんになったいまも心は弟なのだろう。だいたい良くできる姉は恐いものだ」
「実感がこもっているな」
「それはどうでもいい」
「ふふふふ」
「しばらくの間は王妃、公爵、王弟のラインが中心となって国を動かして行くのだろう」
「俺達はどうなるのか。陛下が亡くなって神輿が無くなった」
「後はドングリの背比べだ」
「俺もドングリだ」
「仲良くドングリだ。めでたい事だ」
「現状はもういい。なるようにしかならないと思えてきた。こうなった原因だが」
「魔法庁の秘密実験場で新魔法の実験中魔法が暴発して、国王陛下、宰相、魔法庁長官、同補佐が巻き込まれて亡くなったというのが正式発表だ」
「よほどの秘密の魔法なのか」
「いやそれはおかしい。魔法庁長官は派閥人事で副長官に送り込まれた。その後献金で長官になった。魔法の才能はほとんどなかった。補佐は長官が研究員から抜擢した。ゴマスリの才能は上級だが魔法の才能は中級だ。二人に新魔法が生み出せるわけがない」
「他の研究員の作った魔法を盗んだか」
「それなら暴発もわかる。上級者が作ったものを下級のものが盗もうとしても無理だろう。完全には盗めなかったということか」
「魔法庁に知り合いの研究員がいるが、下級の者は上級者が作った魔法を理解できないと言っていた」
「その研究員に今回の件を聞いたか?」
「聞いたが口をつぐんだ。何も喋らない。遠回しに世間話のようにして聞こうとしたが、近づこうとすると結界が張られているようにぴたっと話さなくなる」
「他の噂ではご遺体はばらばらになって散乱していたと聞いた」
「秘密実験場にご遺体があったことだけは確かなのだろう」
「何だかすっきりしない物言いだな」
「ああ、極秘だが、実は召喚魔法陣を動かそうとして暴発して巻き込まれたとの噂が流れてきた」
「何処から聞いた?」
「出所は極秘だ。らしい」
「何のために動かした。召喚魔法陣は伝説の五百年物だぞ。うまく動かないのが普通だ」
「召喚魔法陣は異世界から勇者を召喚するものだ。うまく動けば勇者が召喚できる。そして召喚したものだけが勇者に命令できるという」
「陛下達はそれを狙ったのか」
「うまくいけば独裁体制を築けるからな」
「結界魔石が弱ってきたと言う話だぞ。そのために勇者召喚をしたかったのではないか」
「それはない。それこそ国家的事業でなければならない」
「そうだな。やはり私欲か」
「実は王妃による粛正という噂もある。国費を流用した四人組に鉄槌を下したと聞いた」
「着服だろう。四人はダントツだった」
「もしそれが本当なら、次は」
一斉に一人の貴族を見た。
「俺は・・・」
「お前が一番額が多い。陛下とつるんで遊んでいた」
「お前だって相当着服している。知っているぞ。王都の石畳を補修したときに、新しい石を使ったように請求して、実は今までの石を上下入れ替えて使ったな。大分儲かったろう」
「まあそれはその資源の節約だ」
「俺もやろうとしたらすでに下も使ってあった」
「それでどうした」
「人件費を水増しした」
「悪いやつらだ」
「そんな事を言うお前だって王宮に入れる食材を高級品と偽って市場で買ったものを納入して儲けているだろう」
「いや、ちゃんと高級品も納入している。陛下一家には高級品がいくように手配している」
「料理人もグルか」
「しかしどうやって粛正したのか」
「それは決まっている。影だ」
「王家には影がいる」
「陛下の管轄だろう」
「それはちがう。国王と影が直結しては、本当の独裁になってしまう。伝統的に国王は影の主ではない」
「我が国の良いところだな。で今は誰が影のトップなのだ」
「わからないから影なのだ。わかっていれば対応が可能かも知れないが、誰が影を率いているのか皆目わからない」
「昔、探ろうとした貴族がいて、朝になっても起きてこない。見に行った執事が冷たくなった主人を発見した。夫人は前の日には元気だったと言っている。今もって原因がわからない」
「知っているか。軍務長官が亡くなったらしい」
「ああ、伏せられてはいるが、多分亡くなっている」
「軍務長官は多額の賄賂を陛下に贈って軍務長官に抜擢された」
「五人目か」
「そうだ。次に粛正されるのは誰だろう」
「それは・・・」
「具合が悪くなった。帰る」
「夜は気をつけろよ。気をつけようがないか」
身に覚えがある貴族は一斉に顔色を悪くして帰って行った。
数人残った。
「国王派の結束どころではないな。帰った連中は今日から地獄だろう。眠れないぞ」
「即位式が終わるまではもう会合は開かない事にしよう」
「即位式が終わるまで目立った動きをすると粛正されそうだ」
「無事に即位式を迎えられるように身を慎んでいよう」
「結界の魔石はどうなるんだろう。大分弱っていてここ数年ではないかとささやかれている」
「それこそ一大事だな。結界が張れなくなれば魔物が街、村を襲い、それを見て周辺諸国が侵略を始める。国が潰れる。俺達の粛清どころではない。そちらの話をすべきだが、話をする前に帰ってしまった。やつらは何が大事かわからない連中だ」
「だから目先の利益に飛びついて旨い汁を吸ったのだろう」
「あるいは王妃様は魔石入手の目処がついたから粛正を始めたのか」
「そうだな。結界消失と思えばどんな勢力でも温存して濁も含め国を挙げて対応するようだが、結界消失がないとなれば、魔物、外国勢力を気にする事ない。長年国を食い物にしてきた連中を粛正してもやっていける。新魔石を得て新体制ということか」
「存外そうかも知れない。即位式で何か発表があるかも知れない」
「即位式を待とう。では元気でな」
「ああお前もな」




