表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結婚するとは言っていません【書籍化・コミカライズ化決定】  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/94

第93話 逃げましょう

「それは私のほうが尋ねたいですわ。グレンバーレル伯爵様」


 そう、私の手を取っているのは、夫人や令嬢方の塊の中心にいた金髪金眼の見た目がいいだけの魔導師長です。


「何です? その言葉遣い」

「今はマルトレディル伯爵令嬢です。名前を覚えてくださいませ」

「では、マルトレディル伯爵令嬢。番犬がくる前に逃げましょう」


 そう言って私の手を引っ張って中央に行くグレンバーレル。

 まるで、逃避行のようなセリフですが、これがそのようなことを言うはずがないのはわかっています。


「いいではないですか、ご夫人方に囲まれてウハウハという状況でしたよね」

「勘弁してくださいよ。鼻が曲がりそうでした」

「腐海の住人の言うセリフではないですね」


 これは香水や化粧の匂いに辟易して、人の密度が低いダンスをしている中央に逃げようということなのです。


「それで、このパーティーに全く興味がない物体がいるのですか?」

「それはマルトレディル伯爵令嬢。貴女もでしょう」


 互いにこのようなパーティーに興味がないのは理解しています。だから不思議なのです。

 なぜ、グレンバーレルがいるのかと。


 そして、中央のダンスのスペースにたどり着き、次の曲が始まったところで踊りだします。


 仮にもフェリランだった頃の元婚約者だったので、何度かはグレンバーレルと踊ったことはあります。


「そうですね。部下から新しい論文を発表するのは人脈が必要ですから、このパーティーに行けと言われたのです」

「……その部下は副魔導師長ですか」

「そうだったかもしれませんね」


 これ、部下にも興味がないという感じですか?


 恐らく、副魔導師長は魔導師長として顔を売ってこいと追い出したのでしょう。

 国王陛下がこられるパーティーなど滅多にありませんからね。


「それで貴女は?」

「そこで睨みつけている騎士団団長のパートナーとしてですね」

「おや? これはすみません。先に踊ってしまいました」

「別に婚約者でもありませんから、構わないでしょう」


 あ、これは良い機会です。ついでに言っておきましょう。


「騎士団の建物の修繕をしておいてくれません?」

「あれを破壊したのは貴女です」

「元々は不出来な魔剣を作ったグレンバーレルです」

「酷いですね。人のせいにするなんて、剣の使い手が悪かったのが原因です」

「先に説明しろ」

「説明する前に剣を振ったのは貴女です」

「だいたい毎回基準がおかしいものを作るのが、おかしいのだ」


 そう言いながらグレンバーレルの足を踏み抜く勢いで床を踏みます。すっと避けるグレンバーレル。

 更に私は前に足を出して踏みつけます。が、すっと避けられました。


「自動回避か」

「当たり前ではないですか。死にたくありませんから」

「ちっ!」


 グレンバーレルは、自分自身の身体に自動回避の魔法をかけているようです。恐らく何かしらの意志を持って接触する者から避けるという魔法だと思います。

 が、あの状況はご夫人方に周りを囲まれて身動きが取れなかったのでしょうね。


「それ、敵意があることがバレバレですから直すように言いましたよ」

「はぁ〜」


 私は体内にある白い息を吐き出します。


「だから、タバコを吸って誤魔化すようにしただろう」

「こういう状況では吸えませんね」

「ちっ」


 私がタバコを吸うようになった理由。

 魔力が高まると冷気が体内に溜まって口から漏れ出てしまうのです。

 だからそれを誤魔化すために白煙に混じるように吐き出すようにしたのです。


 このことを知っているのは副中隊長のディロべメラだけでしたね。


「さて、番犬に噛まれる前に消えることにします」

「ちょっと待てグレンバーレル。建物を直せばドラゴンでも何でも狩ってくるから頼む」


 次の曲が始まる前に逃げようとするグレンバーレルを捕まえて早口で言います。必要な素材があるのなら採ってくると。


「では水龍の鱗で」


 そう言って、忽然とグレンバーレルの姿が消えました。またえげつない魔法ですね。

 この隠蔽の魔法で近づかれたので、私は認識できなかったと。


 ファングランの使用人並に恐ろしい魔法を創ったものですね。


 私はホッと胸をなでおろしながら端のほうに向っていきます。

 これで伯父様に冷たい視線を向けられなくてすみます。


 その伯父様もちらりと見かけましたが、今回の英雄に取り上げられているので、その周りには人だかりができてしまっています。


 そしてレクスの周りにもです。


 私は小腹が空いたので、誰も手をつけようとしていない料理が並んだテーブルに向っていきました。


 レクスの屋敷のパティシエは最高でした。

 でしたら、ここの甘味も期待できそうです。


「貴女、いったい何様のつもりなのかしら?」


 魅惑のケーキが並ぶテーブルにたどり着く前に、障害物が現れました。


 銀髪のそっくりな二人の令嬢とその背後に5人ほどの令嬢方がいらっしゃいます。


「何様のつもりですか?」


 私は意味がわからず首を傾げます。

 私の何が彼女たちの気に障ったのでしょう?


 私はファングラン公爵令嬢に文句を言われるようなことはしていません。


 はっ! まさかレクスのパートナーになった件ですか?

 その文句はレクスに言って欲しいものです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
展開が愉快過ぎて次々楽しみです。「貴女何様のつもり?」王道展開キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ