7話 カフェブレイク
昼下がりのカフェは、珍しく人もまばらで過ごしやすかった。
天気も良く、気温も申し分ない。まさに快適な日だった。
きっちりとセットされた髪が、風にゆるやかに揺れている。
カジュアルなシャツにジーパン。眼鏡もかけていない山田は、
どこにでもいる、ごく普通の青年に見えた。
「よぉ~、お待たせ!」
声とともに、陽ざしを背負ったブロンドヘアの青年が片手を上げて現れる。
赤いパーカーにキャップ姿、爽やかな笑顔のジェット・リンカーは
アイスコーヒーを片手に山田の前に座った。
「またお前、ナンパしてただろ。」
「えー、なんでわかんの?ミゲル、エスパーかよ!」
ミゲルは、ジェットが持っているプラカップを指差した。
そこには、電話番号と“Tell Me”の文字。
「いや、わかるだろ。……あからさまだよ。」
「ちょっと胸がでかくてさー、声かけちゃうよねぇ。」
「お前な……それ仕事中、絶対言うなよ?」
ミゲルは呆れながら、手元のゴシップ雑誌をゆっくりめくる。
ヒーローの熱愛報道やトラブルネタが並ぶその中の一ページを、ジェットの前に突き出した。
「こいつみたいな記事、書かれるぞ?」
そこには、スピージオがグラマラスなモデルと並んで写った写真。
下には“熱愛?”の文字が大きく踊っていた。
「ぐぅ……気をつけます……」
ジェットはキャップを深くかぶり直し、乾いた笑いを漏らす。
「……実は、それ先輩にもめっちゃ言われた。
めっっっっっっちゃ堅物な人でさ。マジで冗談、通じないんだよね。」
ミゲルは、アイスコーヒーをストローで一口吸ったあと、さらりと返す。
「へえ。うちには、冗談しか言わないやつがいる。」
「……あ、それはそれでキツそう……」
「一日中吠えてる。」
「やばっ。めっちゃうるさいやつじゃん。」
「でもまぁ静かだと逆に不安になる」
「なにそれ。ミゲル、情がわいてるじゃん。」
ミゲルは、むうぅとしながらストローをまた一回噛んだ。
カフェを後にした二人は、たわいもない会話をしながら
街を行く。
ジェットは、音楽の話。
ミゲルは、映画の話をしながら。
日常の中を目的もなく歩く。
カフェを後にしたふたりは、たわいもない会話をしながら街を歩いていた。
ジェットは音楽の話。
ミゲルは映画の話。
日常の中を、目的もなく、ただ並んで歩く。
ふと、ジェットが口を開く。
「そういえばさ。
こないだ同期に会ったんだよ。……すげぇ懐かしくてさ。グッときちゃったわ。」
ミゲルがジェットを見上げて笑う。
「“グッ”ってなに?どういう意味?」
「わかんねぇけど……なんか、懐かしさと寂しさの間?って感じ?」
「ははっ、なんだそれ。
その同期、元彼女かなんかかよ。」
「いや、相手男だから!!!…男!」
はいはいと冗談をいうミゲルにジェットも笑いながら答える。




