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患者たちは逃げなかった  作者: キロヒカ.オツマ―


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その五 西村悠人のその後

西村悠人は、正式に、聖嶺会メンタルセンターから解放された。彼を無理に入院させようとした父の関与も、証拠の一部として明らかになり、少年の身の安全は、児童相談所と弁護士の支援によって、確保されることになった。


 半年後、哲太は、西村と再会した。以前よりも、少しだけ表情が明るくなっているように見えた。


「山本さん、僕、記者を目指そうと思っています」


「記者を?」


「はい。あなたが、記録と証言で、真実を明らかにするところを見て。僕にも、何かできることがあるんじゃないかと思ったんです」


 哲太は、その言葉に、胸が熱くなるのを感じた。


「簡単な仕事じゃないよ」


「知っています。でも、あの夜、電話をかける勇気を出せたのは、初めてでした。あの勇気を、これからも忘れずにいたいんです」


 哲太は、西村の肩を、そっと叩いた。


「君は、もう、十分に勇気を証明した。これから先は、じっくりでいい」


 西村は、静かに頷いた。彼の未来に、かつての哲太自身の姿が、重なって見えた。

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