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その三 深田源一郎の選択
証拠公開の少し前、哲太は、再び深田のもとを訪れていた。
「あなたの名前も、記録の中に出てきます」
「知っている」深田は、静かに頷いた。「俺も、あのシステムを利用した一人だ。その事実からは、逃げるつもりはない」
「あなたの立場は、どうなるんですか」
「分からない」深田は、煙草に火をつけながら、笑った。「だが、一つだけ言える。俺は、修司や、お前や、あの病院にいた人たちに、少しでも借りを返せたなら、それでいい」
「借り、というのは」
「兄を守れなかった、あの日からの借りだ」深田は、遠い目をした。「俺は、力を得たあとも、結局、あのシステムの中で、生き延びる方を選んだ。修司のように、真正面から戦うことは、できなかった」
「それでも、あなたは、僕を助けてくれました。父を助けてくれました」
「それだけが、俺の、せめてもの抵抗だった」
深田は、後日、自らの過去の一部を、検察に対して自主的に証言した。彼の会社は、大きな打撃を受けた。だが、彼はそれを、後悔している様子はなかった。
「兄貴に、少しは顔向けできる気がするよ」
哲太との最後の会話で、深田は、そう静かに笑った。




