第三十章 二十年前の約束
部の最後、哲太は再び陽子と向き合った。地下保管庫の奥、最初にP-0-1993のファイルを見せられた、あの場所だった。
「僕は、あの夜、誰に呼ばれたのか、まだ完全には分かっていません。でも、少しずつ、見えてきたことがあります」
「教えてください」
「父の計画は、僕が自分でたどり着くことを待つものでした。でも、それとは別に、外部のグループが、独自に動いていた。そして、そのグループに加わった、まだ名前の分からない誰かが、今回のきっかけを作った」
「その通りです」
「その人物は、なぜ、僕を呼んだんでしょうか」
陽子は、少し考え込んだあと、静かに言った。
「一つ、可能性があります。その人物は、あなたと同じように、二十年前のあの約束を、知っているのかもしれません」
「二十年前の、約束?」
「私が、あなたにした約束です。『いつか、あなたがこのことを知る日が来たら、私たちが証拠を守っていると伝える』――あの約束を」
「どうやって、その人物が知ったんですか」
「分かりません。でも、もしその人物が、あの約束の存在を知っていて、なおかつ、今のタイミングで動く必要があると判断したのなら――」
陽子は、哲太の目をまっすぐに見た。
「その人物もまた、この病院と、深い関わりを持つ誰かだということになります」
哲太は、背筋に冷たいものを感じた。
自分をこの病院に呼び戻した、正体不明の人物。それは、単なる第三者ではない。この物語の、もっと深いところに関わる人間だ。
そして、その正体は、もう間もなく、明らかになろうとしていた。
(第三部・完 第四部「患者たちは逃げなかった」へつづく)




