↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
患者たちは逃げなかった  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/56

第二十七章 父親の最後の選択

哲太は、父のノートの最後のページに、まだ目を通していないことに気づいた。震える手で、そのページを開く。


 そこには、こう記されていた。


「もし、私の身に何かがあった場合、この記録は、地下保管庫の最も奥、患者たちの手に委ねる。彼らこそが、このシステムの本当の証人であり、当事者だ。私のような外部の人間が、証拠を独占するべきではない」


 続けて、こう書かれていた。


「哲太へ。もし、お前がこの記録を読んでいるとしたら、私はもう、この世にいないのだろう。すまない。お前を、この件から遠ざけることに、私は全力を尽くした。だが、それでもなお、お前がここにたどり着いたということは、お前自身が、この真実に向き合う覚悟を決めたということだ。ならば、私はもう、止めない」


 哲太の目に、涙が滲んだ。


「最後に、一つだけ伝えたい。私は、後悔していない。お前の記憶を奪うことも、お前を遠ざけることも、すべて、お前を守るためだった。だが同時に、私は、この病院にいる人々を、見捨てることもできなかった。二つの想いの間で、私はずっと揺れていた。その答えを、今、お前に託す」


 波多野が、隣で静かにその文章を読み、目を伏せた。


「修司さんは……最後まで、誰かを切り捨てることを、選ばなかったんですね」


「はい」陽子が、静かに言った。「だから、彼は、あなたを守ることと、患者たちを見捨てないことの、両方を選んだ。それが、彼の最後の選択でした」


 哲太は、ノートを胸に抱いた。


 父は、黒幕でも、単なる被害者でもなかった。ただ、誰よりも、両方の立場の重さを、正面から引き受けようとした人間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。