第二十六章 P-0の意味
その夜、哲太は再び陽子と向き合い、これまでに分かったことを整理した。
「誰が僕を呼んだのか、まだはっきりしません。でも、少しずつ、輪郭が見えてきた気がします」
「教えてください」
「父の計画は、僕が自分の意志でこの件にたどり着くのを待つことでした。でも、それとは別に、外部で、父の記録を公開する準備を進めていたグループがいる。そして、そのグループに最近加わった、正体不明の人物が、今回のきっかけを作った可能性がある」
陽子は、静かに頷いた。
「それを聞いて、一つ、確信したことがあります」
「何ですか」
「P-0というシステムは、今も生きている、ということです」
「どういう意味ですか」
「このシステムは、二十年前や十五年前で終わったわけじゃない。今も、形を変えて、この国のどこかで機能し続けている。だからこそ、今、誰かが、それを終わらせようとしている」
「システムを終わらせるために、僕を呼んだ、ということですか」
「おそらく」陽子は言った。「P-0は、特定の誰かを指す言葉じゃない、と前に言いましたね。それは同時に、このシステムを終わらせる鍵も、特定の誰か一人には委ねられない、ということでもあります」
「じゃあ、誰が」
「私たち全員です」陽子は、静かに、しかしはっきりと言った。「患者たち、修司さん、あなた、外部のグループ、そして――今回、きっかけを作った、まだ名前も分からない誰か。全員が、少しずつ、このシステムを終わらせるための、部品なんです」
哲太は、その言葉を、しばらく噛み締めた。
「巨大な黒幕は、いない、ということですか」
「はい。誰か一人を倒せば終わる話なら、とっくに終わっていたはずです。でも、そうじゃなかった。だからこそ、これだけの歳月がかかった」




