第十三章 哲太の知らない記録
翌朝、哲太は再び地下保管庫を訪れた。陽子は、今度は何も言わずに、哲太を、まだ見せていなかった棚の一角へと案内した。
「ここに、あなたに関係のある記録があります」
埃を被った段ボール箱の中から、陽子は一冊の薄いファイルを取り出した。表紙には、手書きで「入院候補者記録・少年」とだけ記されている。
哲太は、震える手でファイルを開いた。
最初のページに、写真が貼られていた。今朝見たビデオテープの少年と、同じ顔。自分だ。
名前の欄には、「山本哲太」ではなく、記号のようなものが記されていた。
「P-0候補」
その下に、几帳面な字で、短い所見が書かれていた。
「対象、精神的な問題は認められず。しかし、対象の父親の活動を抑制する目的で、入院措置の検討を要請された。指定医の判断待ち」
哲太は、その文章を、何度も読み返した。
「これは……僕を、患者にしようとしていた、ということですか」
「そうです」陽子は静かに頷いた。「あなたに問題があったからじゃない。あなたのお父さんの動きを止めるために、あなたを人質のように扱おうとした人間がいた」
「誰がですか」
「それは、まだ言えません。でも――」
陽子は、ファイルの最後のページを指さした。そこには、赤いインクで、大きく「保留」と書かれていた。
「なぜ、保留に?」
「それが、あなたのお父さんの、最後の抵抗でした」




