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異世界から来た者

俺の名は──デス・ジェネシス。


俺は異世界から降臨した勇者だ。


そう名乗った瞬間、自分でも少しだけテンションが上がっていた。


(勇者とか名乗ってたら、なんか優遇されるかな……逆に処刑されるかもな)


そんな軽い冗談が頭をよぎる。


だが今さら前の世界の名前を出す気にはなれなかった。


せっかくの異世界だ。


少しくらい、カッコつけてもいいだろう。


---


しかし、反応は思ったより薄かった。


しばらく沈黙が続く。


そのあと、騎士たちがざわつき始めた。


「勇者……?」

「異世界から来たって……そんな世界があるのか?」


空気が一気に不安定になる。


王が軽く咳払いをした。


「静まれ」


その一言で、騎士たちは再び黙る。


王は俺を見据えたまま、ゆっくりと口を開いた。


「なんだ、それは」


---


「え?」


思わず間抜けな声が出る。


(知らないのか……勇者という概念自体が)


俺は少し混乱する。


もしかして俺は、想像していた異世界よりもさらに古い時代に来ているのかもしれない。


――いや。


それならそれでいい。


俺が最初の勇者だとしたら、それはそれで悪くない。


---


俺は説明を試みた。


「勇者っていうのは……魔物を倒して、人々を守る存在で……」


「異世界っていうのは、別の世界から来た者のことで……」


言いながら気づく。


(あまり伝わってない)


王の表情は変わらない。


そして静かに言った。


「つまり、お前はこの国に害を与える存在か?」


「いや、違います!」


即答する。


だが空気は変わらない。


---


王は続けた。


「では、魔族ではないのか?」


「魔族?」


思わず聞き返す。


(いるのか、そういうのも……)


「俺は魔族じゃない」


そう言うと、王はさらに目を細めた。


「では森で何をしていた」


---


逃げ場が一気に狭くなる。


俺は正直に話した。


目が覚めたのは森だったこと。


そこでグランベアに襲われ、死にかけたこと。


助けられてこの国へ来たこと。


---


王はその名を聞いた瞬間、わずかに眉をひそめた。


「グランベア……?」


そして小さく呟く。


「矛盾しているな」


---


「え?」


「お前の言う勇者とは、魔物を倒し人を守る存在だ」


「だが実際のお前は、魔物に襲われ、助けられた側」


「それは真逆ではないか?」


---


言葉が詰まる。


(やばい……完全に論理で詰められてる)


最初に名乗った“勇者”という言葉が、自分の首をじわじわ締めていく。


---


王はさらに続けた。


「ではもう一つ聞こう」


「お前は森で何をしていた?」


「ウェル一行の馬車を襲ったスコルガ」


「本来あれほどの個体は存在しない」


王の視線が鋭くなる。


「──もう一度聞く」


「お前はそこで何をしていた?」


---


冷や汗が止まらない。


全部裏目に出ている。


(やばい、やばい、やばい……)


「本当に何もしてません!」


必死に言う。


「むしろ襲われた側で……!」


---


王はしばらく沈黙したあと、低く言った。


「では、なぜそこにいた」


(終わった)


そう思った、その瞬間。


王の目が細められる。


「……何かの実験か」


「それとも事故か」


そのときだった。


扉の方から声が響いた。


「待ってください」


静かで、しかし通る声。


騎士の何人かが反応する。


「ウェルライト様……!」


空気が変わる。


---


ウェル・ライトが前に出る。


あの時、森で俺を助けた少年だった。


彼は迷いなく王を見て言った。


「彼は魔族でも、危険な存在でもありません」


王の視線がウェルに向く。


「なぜそう言い切れる」


---


ウェルは少しだけ俺を見てから答えた。


「彼は森で死にかけていました」


「そして私たちが見たのは、“敵”ではなく“生きようとしている人”です」


「少なくとも、悪意は感じませんでした」


---


部屋の空気が揺れる。


騎士たちの間に、わずかな戸惑いが走る。


王はしばらく沈黙したあと、静かに言った。


「お前は……それを信じるのか」


ウェルは即答した。


「はい」


---


その瞬間、空気が変わった。


王の視線が再び俺へ戻る。


「ならば条件付きで保留とする」


その言葉で緊張が少しだけ緩む。


---


だがその直後、ウェルはさらに一歩踏み込んだ。


「王よ」


「彼は僕が信じた存在です」


「もし間違っていたなら、その責任は僕が取ります」


「王候補を辞めても構いません」


「処刑されるなら、それでも構いません」


---


一瞬、部屋が完全に止まった。


騎士たちが息を呑む。


王の表情もわずかに揺れる。


---


俺はその光景を見ていた。


(なんでだ)


(なんでそこまで俺を信じる)


ただ助けられただけのはずなのに。


その理由がわからない。


---


ウェルは最後に、静かに言った。


「僕は……間違っていないと思います」


---


その瞬間、俺の中に奇妙な違和感が残った。


助かったはずなのに安心できない。


むしろ、胸の奥に“理由のわからない引っかかり”が残っている。


---


(なぜ俺は、ここまで信じられている?)


おかげさまで、投稿を始めて一週間が経ちました!これからもできる限り毎日投稿していきますので今後ともお願いします!少しでも続きが気になったら、ブックマークや下の☆から評価をいただけると嬉しいです。執筆の大きな励みになります!

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