22話 大軍
『能力《念話》《仲間強化》を取得しました』
頭の中で無機質な声が響く。
「うーん、念話と仲間強化か、これは使わねぇな」
零は取得した能力を確認して、特に感情が籠っていない声で呟いた。
「やっぱ、身流を解くとダルくなるなぁ」
試しに念話で狐盂に話しかけてみたが、1度ぴくっと耳が動いただけで特に反応はしなかった。
「!?」
「!?」
鬼犬の肉を食べ終わり、移動しようとした瞬間、気配探知に大量の気配が引っかかった。
数はざっと50。
その事に狐盂も気づいたのか、いつもは見守るだけだたった狐盂も臨戦態勢をとる。
零もかなりの疲労感を覚えつつも臨戦態勢をとる。
「来る! 」
気配では分かっていたが、改めて見ると凄い数だ。
種類は鬼犬が大半だが、中には鬼熊や鬼蛇、更には見たことの無い鬼もいる。
「ッーーー! 」
狐盂は紅い目を見開くと、鬼の群れに突っ込んで行く。
そして、2秒後には10匹の鬼が真っ二つになって宙を舞っていた。
零はそれに思わず見惚れてしまった。
だって1つ1つの技がとてつもなく綺麗で、それに、前足で引っ掻くだけで目の前の敵だけでなく、その後ろの敵も真っ二つにするのだ。
見惚れてもしょうがないだろう。
そういう零も狐盂程ではないが鬼を蹂躙している。
「ベェ〜〜 」
鬼を半分程倒した頃、山羊の様な鳴き声が聞こえてきた。
「!? 」
その鳴き声を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。
(盲目か? しかも聴覚まで奪われたか)
だが、幸いにも気配探知と魔力探知は機能する様だ。
その2つを同時に発動する。
相変わらず情報量がとてつもないが、視覚と聴覚を奪われた今は、これ位の情報量がちょうどいい。
気配探知と魔力探知で見る限り、1匹の鬼と狐盂を除いてここら一帯の鬼は動いていない。
おそらく零と同様に視覚と聴覚を奪われたのだろう。
(これは好都合だ)
零は動かなくなった鬼を次々と斬っていく。
そして、残る1匹の鬼を倒すと急に視覚と聴覚が戻る。
一瞬情報量が多すぎて吐きそうになるが、すぐに魔力探知を切ったので吐きはしなかった。
改めて周りを見ると、鬼の死体やら灰やらが転がっている。そして目の前には山羊の死体。
おそらくコイツが視覚と聴覚を奪った張本人だろう。
『能力《闇無効》を取得しました』
零は山羊鬼に食らいつく。
「闇無効って事は、コイツが使ったのは闇魔法か。ん? 闇魔法なんてあったか? 魔法の種類は5つだったような気がするが」
零が思っている通り、通常ステータスに表示されるのは5つの魔法のみだが、稀にその5つ以外の魔法を使える者が生まれてくる事がある。
今確認されている限り、闇魔法の他に光魔法、毒魔法、土魔法などがある。
そんな事を知る由もない零は、何故急に50体もの鬼が襲いかかってきたのか思考をめぐらす。
そして1つ考えがまとまった。
それは、鬼犬の長が念話を使って辺りの鬼に呼びかけた。というものだ。
零は頭が良い方ではないので、こんな事しか思いつかなかったが、頭の良い人ならもっとましな考えが浮かんだだろう。
「うっ? 」
ひと休みしようとすると、突然頭がふらつき、目の前が暗くなる。また敵か?と気配探知と魔力探知を使うが、何も探知されない。
やがて、まともに立てない程になり、零は意識を失った。
『おい、起きろ。いつまで寝ている』
頭の中で男の声が響き、零は飛び起きた。
辺りを警戒するが、周りには狐盂しかいない。
『おい、ここだ』
ここだと言われてもどこにいるんだよと困ってしまうのだが、と零が疑問符を浮かべていると。
『ここだ』
また頭の中で男の声が響く。
(だからここってどこなんだよ)
『ああもう! お前の目の前に居るだろう! 』
零の目の前には狐盂しかいないのだが。
『そうだ。その狐だ』
「へぇー 」
『む、思っていたより反応が薄い』
なんと、頭の中で響く男の声の持ち主は狐盂だった。




