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剣豪の復讐物語  作者: 大土 土人
20/25

19話 山登り

「こんぐらいかな?」


 零は出来上がった服を見て言った。


 その服は、見た目は毛の生えた和服で、結構上手く作れたと思う。


「なんだよ、毛の生えた和服って。パワーワードすぎんだろ」


 そんな事を独りごちりながら、服を着てみる。

 着てみた感じ、かなりぶかぶかだが、ぶかぶかの方が動きやすいかと思い、特に直しはしなかった。


 そして、次はズボンだが、これは皮を2枚、全く同じ様に切らなくてはならないのと、縫い付けもしなくてはならないので、結構大変だったりするのだが、零は黙々と作業をしている。


 そして、2時間足らずでズボンが出来た。

 ただし、ズボンはぶかぶかではズリ落ちてしまうので、結構キッチリめに作った。


「よし、これで服一式完成だ」


 毛の生えた和服が出来たが、すると、またやる事がなくなる。


 チラッと赤目の狐を見てみると、山の上をジッと睨んでいた。


「? 山の上に何かあるのか? 」


 零も釣られた様に山の上を見てみる。

 あんまりよく見えないが、山の頂上が黒くなっている様に見える。

 もしかしたら山の頂上に何かあるのかもしれない。


 そうなったらそこに行くより他に無い。


「じゃあ、あの山の頂上に行くか」


 そして、零は縮地を使いながら山を登って行った。





「はぁ、どんだけ高いんだよ、この山は」


 零はあれから3日、山を登り続けていたが、まだ半分程までしか登れていない。


「ふぅ、休憩するか」


 そう言って木にもたれ掛かり、片目を瞑る。


 すると、何分かして、ガサゴソ、という音が木の上から聞こえてきた。


 零は何事かと、もたれかかっている木の上をじっと観察する。


 すると、木の上から何かが落ちてきた。

 何かは分からないが、とにかく零はそれにいち早く反応し、普通ではあり得ない動きで、木から離れていく。


「…… 」


 さっきまで零がいた場所を見ると、そこには鋭い眼付きをした鬼猫がいた。


 零はその姿を確認すると、黒刀と木刀を体の前に出し、身構える。


 何秒かの沈黙続く。


 そして、その沈黙に混ざる様に鬼猫は、ゆらゆらと姿を消した。


「? 消えた? 」


 すると、その2、3秒後に目の前に突然姿を現し、長い爪で零の肉を(えぐ)る。


「うッ!? 」


 零は咄嗟に右手を出すが、長い爪により、半ばから腕が切られる。


「あーあ、せっかく服を作ったのに袖がボロボロになっちまったじゃねぇかよ」


 零がそんな事を言ってる間に、鬼猫はまたゆらゆらと姿を消す。


 そして、2、3秒後に今度は背後から姿を現し、長い爪でまた肉を抉ろうとするが、スパッ、と鬼猫の顔に一条の紫雷が走る。


 顔に深い一文字の傷が出来た鬼猫は数秒も経たないうちに息絶えた。


「予想が当たって良かったわ。まぁ、不意打ちと言ったら後ろからだもんな」


 零は鬼猫に近づき、紫雷でその肉を焼かず、そのまま生のままでかぶりついた。


 何故、肉を焼かないかと言うと、理由にもいろいろあるが、まあ、簡単に言うと面倒臭いからだ。


 簡単に言過ぎたのでもうちょっと説明をすると、まず、零は何を食べても何の味もしない体になってしまったので、生肉を食べても、水で濡らしたスポンジを食べてる様に感じてしまうのだ。

 そして、焼いたら肉が固くなってしまうのも理由のひとつだ。鬼の肉は元々固いので、焼いたらもっと固くなって全然噛めなくなってしまう。

 あとは、魔力の消費量がバカ高い。

 そんな事があり、肉は焼かないようにした。


『能力、《気配殺し》《気配探知》《魔力探知》を取得しました』


「おぉ、3つも能力を取得したのか。ありがたい」


 肉を焼かない理由を話しているうちに、3つの能力を取得したようだ。


 1つ目は気配殺し、これは恐らく鬼猫がゆらゆらと姿を消した時に使っていた能力だろう。

 だが、あの鬼猫を見る限り効果時間は2、3秒ほどだが、使い方によっては化けるかもしれない。


 2つ目は気配探知、これはそのままの意味で気配を探知するものだろう。


 3つ目は魔力探知、これはそのままの意味で魔力を探知するものだろうが、気配探知と何が違うのか分からない。

 まあ、これも後に分かってくる事だろうから深く考えない。


「それよりも今は休もう」


 零は猛烈な眠気と戦いながら片目を瞑り、警戒を怠らずに休む事にした。





「あともう少しで頂上だ…… だが、流石に空気が薄いな」


 鬼猫を倒してから、3日間ずっと登り続けて、やっと頂上が見えてきた。


 不思議なことに、ここは雲よりも高度が高い癖に緑が生い茂っている。

 だが、零が立っている所から先は地面が黒く焦土化していた。


 零はそれを確認すると、警戒を強め、気配探知を使う。


 すると、山の頂上に何か大きな気配があるのに気づく。


 何故、気配探知を使えるかと言うと、思ったより使うのが簡単だったからだ。どのくらい簡単かと言うと、気配探知を使おうと念じると自動的に使う事ができる程簡単だ。

 気配探知は効果範囲は50メートル程だが、ありとあらゆる生物の気配が分かるので、かなり便利だ。


 魔力探知の方は、こちらも使おうと念じれば使えるのだが、魔力は生物の体内の他に、空気中にも存在しているため、情報量が多すぎて気持ち悪くなってしまう。言わば、魔力酔いと言うやつが毎回起こってしまう。

 しかも、基本的な能力は気配探知とほぼ変わらないので、多分、魔力探知はあまり使わないだろう。


 話が逸れたが、大きな気配は微動だにしない。


 それでも零は油断せず、少しずつ進んでいく。


 そして、頂上に着いた時、目の前に見えたのは、体長10メートルはあろうかと言うほど大きな黒竜だった。

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