18話 外に出る
「何で急に炎無効なんか取得したんだ? 」
零は今取得した能力を確かめる様に黒炎を腕に纏わせながら言った。
だが、その腕は焼き爛れていく。
「けっ、全然炎無効じゃねぇ。また詐欺られた」
零は舌打ちをしながら黒炎を纏わせるのを止め、今度は雷の鬼蝙蝠をボリボリと食べる。
『能力、《雷無効》を取得しました』
すると、頭の中で無機質な声が響いた。
「またなんか取得したな」
今度は雷を腕に纏わせると、白い煙が出てきて、バチバチと痛みがある。
「けっ、こっちも無効じゃねぇ」
零は舌打ちをしながら水の鬼蝙蝠を食べる。
『能力、《水無効》を取得しました』
氷の鬼蝙蝠を食べる。
『能力、《氷無効》を取得しました』
風の鬼蝙蝠を食べる。
『能力、《風無効》を取得しました』
頭の中で無機質な声が響いた。
「ふぅ…… これで全部だな。しかし、今更だが何で無効を取得した? 」
本当に今更だが、思いつく限りのことを考える。
1つ目、さっき食べた鬼蝙蝠が今まで食べてきた鬼蝙蝠の上位種。
2つ目、同じ種の鬼を一定数食べる事でその能力が強化される。
3つ目、体が黒炎と紫雷に慣れてきた。
「今思いつくのはこれしか無いな」
まず、3つ目は無いだろう。体が黒炎と紫雷に慣れてきたのならば、他の属性無効を取得した説明がつかないし、鬼蝙蝠を食べた途端に能力を取得したので、この説は100パーセントありえない。
そして、1つ目は比較的無いと考えた方がいいだろう。さっきの鬼蝙蝠は今までの鬼蝙蝠と強さはーー今までまともに戦っていなかったが、同じ様に感じた。
そうなると自動的に2つ目になるが
今度は何匹食べたら能力が強化されるのかという疑問が浮かんでくる。
これは零の体感だが、刀を作るのに1年以上は掛かっている。すると、とてつもない量の鬼蝙蝠を食べているのだが、「考えるのめんどくさい」
「とりあえず外に出るか」
考えるより感じろだ。本当は思考放棄をしているだけだが、そんな事はどうでもいいッ!
零は立ち上がり、外を目指して歩き出した。
もちろん狐もついてくる。
外に出ると、前と変わらない森があった。
ずっと洞窟に居たので、目が痛くなるのではと身構えたが、特に目が痛くなる事は無い。恐らく、洞窟の中が淡く光っていたから目が慣れていたのだろう。
「グルゥゥ…… 」
すると、目の前から腕の長い熊の様な鬼が出てきた。
そう、零が1番最初に出会った鬼、鬼熊だ。
「あの時はボロ負けだったが」
今は刀もあるし、黒炎の制御もある程度出来るから勝てる気がする。
零は刀を構えると、縮地で一気に距離をせめて、鬼熊の首を斬ろうとするが。
「あれっ? 」
目の前の景色が余りにも一瞬で変わり、体が動かなかった。
後ろを振り向いてみると、鬼熊が戸惑っているのか、周りをキョロキョロ見ている。その光景は余りにも滑稽で笑ってしまった。
気を取り直して、今度こそ縮地で一気に距離をつめ、背後から鬼熊の首を斬る。
すると、鬼熊の大きな頭がゴロリと地面に落ちた。
「意外にあっけないな」
零は血振りをして言った。
と、そこで零は1番大事なものが無い事に気がついた。それは、今それを持っていない人はいないだろうという程のもの。
それは、人類が初期から肌身離さず持っていたもの。そう、服だ。
「俺、服着てねぇじゃん。」
そう、零は今、服を着てないのだ。どうせ黒炎でまた燃えるじゃんとか誰もいないから別に気なくてもいいんじゃね?とか思うかもしれないが、それとこれとは話が違う! 服はとっても大事なものなのだ。
「とりあえず服を作るか」
零はさっき倒した鬼熊の皮を剥ぎ取ると、山から流れていた近くの川で皮についている血糊を綺麗に洗い流す。
そして、その皮を服の形に切っていく。鬼熊は5メートルはある為、この作業をするだけでも重労働だ。
ある程度形が定まって来たと思ったら、何故か和服の形になっていた。
まあ、和服の形で困ることは無いだろうし、和服の方が動きやすいまであるので、このままでいいと零は思う。
そうなると、帯的な物が必要になるが、それは皮を紐状に切ればいいだけの簡単な話なので、そんなに苦にはならないだろう。
そうやって零は服を作っていった。




