17話 刀
(そういえば、鬼豹と戦った時に空中を蹴った事があったよな)
零は黒い水晶を削りながらふと、そんな事を思った。
(あの時は魔力が外に出ている感じも無かった。という事は魔力以外の何かが関係しているのか? いや、そうなると魔力以外の何かってなんだよ)
「う〜ん…… 」
(考えてもわかんねぇわ)
零は考えることをやめた。
「てか、この狐、まだいたのか」
零は隣に丸まってる狐を見て言った。特に目立った動きもなかったので気づかなかった。
ちなみに、黒い水晶は少しだが削れている。つまり、刀は作れるということだ。その事を確認すると、零は無心になって削っていった。
すると、洞窟の奥からキュィーという甲高い音が聞こえた。振り向いてみると、鬼蝙蝠の大群がこちらに迫っていていた。
零は立ち上がると、攻撃を受ける直前に全身に黒炎を纏わせて、鬼蝙蝠を倒していく。そこで零は驚いた。黒炎による痛みがほとんどなくなっていたのだ。
(黒炎の威力を最小にしたらダメージはほぼないんだな。つーか炎耐性って本当に取得してたんだな)
零は木刀で火を纏っていた蝙蝠を叩いて、完全に息の根を止める。
そして、また黒い水晶を削っていく。途中、お腹が空いたので、鬼蝙蝠を食べた。
「クソマジィ」
味は相変わらずだが、食べるものがこれしかないので、綺麗に残さず食べていく。
「ほら、食うか? 」
零は後ろで丸まっている狐の前に5匹の鬼蝙蝠を置く。
狐は鬼蝙蝠を見て目を細めたが、むしゃむしゃと食べていった。
そんな事がしばらく続いた。
黒い水晶はだいぶ刀の形に近づいてきた。
「そう言えば髪がだいぶ伸びてきたな」
零は当分使っていなかった蒼いナイフを取り出す。なぜ使っていなかったかというと、刃こぼれするかもしれなかったからだ。蒼いナイフはとても硬いが、所詮は田舎街の防具屋でも売っている代物だ。そんなに期待できない。
零はこれでもかという程適当に髪を切っていく。ここでは見た目を気にする必要はないし、前世でもそんなに髪形にこだわってなかった。つまり、髪形などどうでもいいという事だ。
「ん? 何だこれ? 」
零は切り落とした髪を見て言った。
「何で髪が白くなってんだ? 」
そう、髪が半ばから白くなっていた。
「あ~、あれか? ストレスで白髪になるやつか? 」
零は気にした様子も無く、淡々と言う。
零は前世の父の影響か、かなり図太い性格だ。だから、髪が白くなったくらいで動揺はしない。でなければ、こんな生活には耐えられないだろう。
すると、キュィーという音が聞こえた。またか、と零は立ち上がり、流れ作業の様に鬼蝙蝠を倒していく。
そして、いつものように鬼蝙蝠を食べると、また異変が起こった。
「……味がしない? 」
本来、クソ不味いながらも味がしていた鬼蝙蝠が、ただの固形物を食べているかのように全く味がしないのだ。
「おぉ、味がしないのはありがたい」
だが、零は驚くどころか感謝していた。当然と言えば当然だろう。あんなクソ不味いやつを好き好んで食べる奴なんていない。零もその1人だ。
本当はストレスが原因で味が感じなくなったのだが、零はこれでもう、味を気にしないで食べられる。とガッツポーズをしている。
そして、更に時が経った。
「う〜ん、こんぐらいでいいかな? 」
黒い刀が出来た。大きさは一回り小さくなっているが、かなり斬れ味が良さそうだ。だが、実際切ってみない限り斬れ味は分からないので、試し斬りをしてみる。
「だけど斬るものが無いんだよな〜」
毎日の様に洞窟の奥から出てくる鬼蝙蝠もさっき食べてしまったし、壁を斬って刃こぼれするのも嫌だ。仕方なく、自分の腕を斬ってみることにした。
零は右手に刀を持ち、肘らへんにゆっくりと刃を入れる。スー、と肉と骨をバターの様に斬っていき、腕がボトッと落ちた。その落ちた腕は、シュワシュワと蒸発する様に無くなり、新しい腕が生えてくる。
「お〜凄い切れるな」
零は、自分の腕を斬ったにも関わらず、痛みを感じないのか、平然としている。
すると、キュィーという音が聞こえた。
「おっ、ナイスタイミング! 」
零は立ち上がると、刀に黒炎を纏わせて洞窟の奥を見やる。
すると、案の定鬼蝙蝠の大群が迫っていた。
「はっ! 」
零は一瞬、口角を上げると、臆する事なく鬼蝙蝠の大群に突っ込んでいき、刀を振るう。
そして、勝負は一瞬でついた。
「う〜ん、やっぱり鈍ってるわ」
零は刀を2回程素振りをして言った。
「まぁ、ここ最近全く刀を触って無かったからな」
鬼蝙蝠をボリボリ食べながら酷く明るい様子で零は独り言を言う
『能力、《炎無効》を取得しました』
「ん? 」
すると、頭の中で無機質な声が聞こえた。




