16話 洞窟
白く淡く光る洞窟に狐はなんのためらいも無く入っていく。一方零は、特にリアクションは無く、無表情で狐に付いていく。
ここは魔法なんてものがある世界だ。いちいち驚いていたらきりがないし、あの狐と出会ってから驚かされてばっかりだ。それに比べればピカピカ光る洞窟なんてどうって事ない。
洞窟の中は結構広く、幅は10メートル位あるのではないだろうか。それが永遠と続いている。
すると、奥から角の生えた蝙蝠の大群が迫って来た。だが、普通の蝙蝠とは違く、それぞれ、火、雷、水、氷を纏っている。
それは、狐を無視して零に一直線に飛んできた。
(は? なんでだよ!? )
零は心の中で悪態を吐きつつ、持っていた木刀を後方に投げ捨てる。そして、腕を十字にクロスし、攻撃を受ける直前で、黒炎を全身に纏う。
この黒炎は零の体も燃やすが、これまで戦ってきて、黒炎による一瞬の激痛と、鬼の攻撃による長い間続く激痛とでは、一瞬の激痛の方がましだという事で、この方法を使っている。
すると、
「「「キュィーー!」」」
という、耳を塞ぎたくなる程の甲高い声が洞窟中に響きわたったと思うと、丸焦げになった鬼蝙蝠が倒れていた。
火を纏っていた蝙蝠は、まだ息がある様で、ピクピクと痙攣している。それを零は痛さで涙目になりながら、木刀で何回も叩く。そして、完全に息絶えた事を確認すると、鬼蝙蝠を1匹ずつひと口だけ食べていく。
(やっぱりクソまじぃ…… )
と思っていると、頭を突き刺す様な鋭い痛みと共に、
『能力、《炎耐性・大》《雷耐性・大》《水耐性・大》《氷耐性・大》を取得しました』
という無機質な声が聞こえた。
(炎耐性に雷耐性か、これはありがたい)
そう思い、零は黒炎を左手に纏わせる。前は、骨も残らず焼き尽くされたが、今度は、骨だけ残った。特に痛みが和らいだ感じもない。
(はぁ? 炎耐性・大なのに全然耐性がついてないんだが? )
「けっ」
零は舌打ちをすると、今度は紫雷を左手に纏わせる。白い煙は出ているが、痛みは耐性が無かった頃に比べると、幾分かはマシになっている。
(こっちはちゃんと耐性がついてるんだな)
「ふぅ…… 」
零は、ため息を吐きながら立ち上がって前を歩いている狐について行った。
5分程歩いただろうか、目の前には大きな部屋がある。ここから部屋の端までは50メートルはありそうだ。そして、何故部屋の隅にあった黒い水晶の様なものが目に着いた。それは細長く、長さは1メートル前後だ。
零は黒い水晶を手に持つ。それはずっしりと重いが、妙に手に馴染んだ。
そして、零は黒い水晶を淡く光る壁に向かって振り下ろした。すると、壁がえぐれる。
(よし、強度は問題無いな)
今度は、黒い水晶を黒炎で燃やす。手は骨だけになるが、黒い水晶は傷ひとつ付いていない。次は紫雷を黒い水晶に纏わせる。こちらも同様に傷ひとつ付いていない。
(魔法耐性もあるな)
魔法耐性がある事を確認すると、零は周りを見る。すると、台座の様になっている岩があった。零はその、台座の形の岩に近づくと、黒い水晶と岩を擦り合わせ、削っていく。
一体零は何をしているかというと、黒い水晶で刀を作ろうとしているのだ。
途方もない時間が必要だが、まず、人間は素手では犬にすら勝てるか怪しい。この世界には魔法があるが、それでも1人で勝てるのは熊くらいだろう。つまり、人間は武器が無ければ生物最弱と言ってもいい。零には木刀があるが零はそれは武器だと思っていない。いいところでせいぜい頑丈な木の枝ぐらいだ。
つまり、零は今、武器がない。
だから零は自分の手で武器を作ろうとしている。




