15話 縮地
『能力《縮地》を取得しました』
頭を突き刺す様な激しい痛みと共に無機質な声が頭に響いた。
だが、今の零にとってはどうでもいい事だ。
「はぁ…… 」
零は真っ二つに折れた木刀を見て深いため息をつく。
そして、相当ショックが大きかったのか、それっきり動かなくなった。
それから数時間経ってからやっと零は立ち上がった。
(あ゛あ゛、何やってんだ俺、いつまでくよくよしてんだよ。こんな事してても意味ねーんだから心を入れ替えろよ)
そう思いながらまた、ため息を吐いてしまう。
「クソッ! 」
零は突然大声を出して自分の顔をぶん殴った。
「いッつ…… 」
思った以上に痛かったが、これで多少は気持ちの整理がついた。
そして、零の思考は数時間前に取得した能力に移る。
(たしか、取得した能力は縮地だったよな)
そこで零は違和感を覚えた。零の知っている縮地は能力ではないのだ。
どういう事かと言うと、零の知ってる縮地は、移動の時、筋肉運動が全く無く、相手に悟られずに動けて、相手には瞬間移動している様に見える。と言うものだ。
これは、血のにじむ様な努力が必要であり、決して能力では得られないはずなのだが……何故かここでは取得している。
ちなみに零は縮地は完璧ではないが出来る。
試しに縮地をしてみる。
「うおっ! 」
すると、一瞬にして景色が変わった。景色が変わったとは言っても、ここ一帯は森なのであまり変わった感じはしないが、確かに変わった。
後ろを振り向いてみると、狐が物凄く小さく見えた。
たぶん、狐の大きさから見るに、この一瞬で100メートルは移動しているのではなかろうか。
これは良い移動手段を手に入れたな。そう思い、一瞬で元居た位置に戻る。
「さて、移動すっか」
そう言い、木でできた小太刀を持つ。大太刀は持って行くかどうか迷ったが、どうせ邪魔になるだけだと割り切って、持って行かない事にした。
とても名残惜しいがしょうがない。
そして、零は山に向かって移動を始めた。今までとは比にならない速度で。
縮地で移動してから30分程経った頃には、これまではそうでもなっかたが、今は山に近づいたと実感できるはど移動していた。
「うぅ…… 気持ち悪い…… 」
さらに、これまでにないほど酔っていた。
生身で高速移動して景色が目まぐるしく変わるのだ。酔ってもしょうがないだろう。
ちなみに、あの狐は零の縮地についてきている。何なんだコイツは!?と何度も思ったが、深く考えないことにした。
そんなこんなで、酔っては休み、酔っては休みを繰り返し、1週間程経った頃には、零は大きな山のふもとにいた。
「ふぅ、山には着いたが、これからどうすればいいんだ? 」
零は狐を見ながら言った。
その狐は零の質問に答えるようにして歩き出した。零はそれについて行く。
そして、1時間程歩いただろうか、目の前には洞窟があった。
歩いている途中に鬼に遭遇したが、狐が一瞬で肉塊にした。それに、食べてもなんの能力も取得しなかったので、弱い方の鬼なのかと思った。まあ、弱い方とは言っても零よりは断然強いのだが、そこは考えないようにする。
話は逸れたが、その洞窟には、少しどころかかなり変わったところがあった。その洞窟は、白く淡く光っていたのだ。




