↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルさんが意思を持った世界で盲目の少年は冒険を夢見る  作者: 猫かるちゃー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

423/426

423・英雄の過去

前回のあらすじ


獄中に囚われていたアネットだったがペレディアが自身の分体を辿り助けに来た。2人はそのまま牢を出るとスプリントノーゼと同じやり方で王城を脱出したのだった。

 比較的簡単に城から抜け出せたのは良いけれど、荷馬車に揺られて僕はいったい何処へ向かっているのだろう。


 体感では冒険者ギルドはとうに越えている。ペレディア曰くギルドが裏で手を引いてるのを悟られるのはまずいとのことなので、ギルドに立ち寄ることは適わないらしい。


 組織の存続とか冒険者の行く末を考えれば当然の判断だと割り切れる。だってあの王様だからね・・・


 隠れた箱の外から僅かに聞こえる御者のやり取りと地面から伝わる振動の変化で僕は王都の城壁を越えたのが分かった。


 ガタガタと体に響く揺れにじっと身を委ねていると馬車は目的地に到着したのかその揺れは収まり、誰かが荷馬車に上がってくる音と共に隠れていた箱の蓋は豪快に開けられた。



「アネット! 良かった! 無事だったのねっ! 怪我とかはない? 酷いことされなかったっ?」


「マ マルティナ落ち着いて・・・」



 外の空気が入るのと同時にマルティナの手が届く。彼女はそのまま僕に抱き付いくと身体中を確かめるようにあちこち触れてきた。



「心配・・・したんだからねっ!!」


「ごめん」



 おかしなとこが無いか一通り確認すると安心したのかマルティナは肩を震わせた。理不尽に捕まる経験なら彼女も味わったことがあるからね。檻の中ではあんな感じになるのかと今の僕なら理解できる。


 色んな思いが胸中と頭を駆け巡っても何から話して良いのか分からず、僕は「ごめん」と返すことしかできなかった。



〔アネットが謝ることではないわ まさか王様が直接声を描けてくるなんて 誰も想定していなかったのだもの〕



 ミストリアも僕が無事に戻って安堵したのかスッと色が変化していくのが分かった。彼女の言う通り王様が言葉を発するのは貴族視点でも異常な事らしい。


 そもそも会議の場ですら他人を介して参加する王なのに、一般庶民の僕に話し掛けること事態前代未聞だったのだろう。


 と言うか、そもそもそんな卑しい身分の者が王に拝謁なんてことが有り得ないんだ。本人も憤ってたし・・・



「すまなかったなアネット まさか王が直接声を掛けてくるなんて予想すらしていなかった 俺でさえ直接声を聞いたのは初めてだったしな」


「バルブリックさん」


「本当はワイズと話すべきなんだろうが 貴族とギルドの長 両の立場から簡単には動けない 従ってこの場に来ることはできなかった」


「はい 僕を逃がしたのがギルドってバレるのもまずいですもんね ・・・いや どうでしょう バレる・・・かも?」



 確実に未来が見えるのならギルドが絡んでいることはいずれはバレてしまうかもしれない。いや、もしかしたら既にバレているかも。だったら僕が逃げ出すことだって知っている筈。


 或いは“盲目さん”を連れた人が敢えて伝えていない・・・とか。王様もスキルさんには意思があって人を誘導すると言ってたし。


 ダメだ・・・


 未来が見えると言うだけで色んな可能性がグルグルして結論に辿り着けない。



「・・・アネット あの後謁見の間で何があったんだ」


「・・・・」



 どうしよう。


 あの部屋での出来事を包み隠さず話すべきか、それとも誤魔化すか 。その判断に逡巡する。でも自身の立場を省みず手を差し伸べてくれた人に真実を明かさないのも不誠実な気がする。


 何より周囲から英雄と認められる人格者の意見は聞いてみたい。諸々考えた末。僕はありのままのを彼に話すことにした。



「・・・ ・・・王様は 僕が謁見の間に来るのを前から分かっていたみたいです」


「前から? 前からとはどう言う・・・」


「言葉の通りですよ 前からです だからモンスターの襲撃に備えて事前に兵士を王都ダンジョンに集めておくことができたんです」


「事前にって それではまるで・・・ 待ってくれ それはつまり その・・・そう言う ことなのか?」


「・・・はい 想像の通りです 『予見の目』と言う 未来を見る盲目さんのスキルです」



 それを聞いたバルブリックさんは酷く困惑してしまう。こんな突拍子のない話普通なら疑うものだけど、何やら自身の中で得心でもいったのか少しの間を置いてすんなりと受け入れてしまった。



「盲目さんのスキル・・・ 先が分かると言うことは 王は盲目さんを連れた人間を囲っていると言うことなのか?」


「はい 謁見の間からとある部屋に連れていかれて そこで会いました 他にも失語さん 難聴さんにも・・・」


「ちょっと待ってくれアネット 王はマイナス等級を嫌っているんじゃなかったのか? だから妹・・・シルヴィーも ミストリア嬢だって 居ない者のように扱うしかなったと言うのにっ」



 横で聞いていたエルヴィラさんはこの事実を知り狼狽して声を荒げた。まぁそうだよね。世にマイナス等級なんて概念さえ無ければ何かがちょっとは違ったのかもしれないのに。


 そう思ってふと考える。


 でもマイナス等級なんて名前が付いていなくても、未来が見えるスキルを前に人は平然としていられるのかと・・・



〔なる程 王はこれを危険と判断したわけね だからスキルを生み出さない為にマイナス等級と称して貶めた〕


「何よそれっ! 自分がそのスキルを独占したいだけのくせにっ それで周りに変な価値観を植え付けるなんて許せないわっ!」


「落ち着いてマルティナ 僕も思うところはあるけれど もし未来視に頼る人達ばかりになったらどうなるか・・・


 王様もスキルに振り回されてはならない 国は人の手で回さなければって言ってて それを聞いたら そうするのも仕方ないのかなって・・・」


「っ! そんなの王様が1人で勝手にやってたらいいんだわっ! 私達には関係ないっ! ・・・はぁ どうして・・・どうして予見の目なんて法外なスキルが存在してるのよっ スキルって何?」



 私生活に関連するスキルが数多溢れる中でポツンと突拍子もないスキルが存在する。何故? 何の為に? どうして彼だけ? 私だけ?


 何でスキルさんって色々な種類に分かれているんだろう。謎だ・・・



〔私は願いを叶えてくれる奇跡だと思ってるわ 現に水で文字を描けたからあなた達とコミュニケーションがとれるのだし 私がマイナス等級になったから こうして出会うことができたのよ?〕


「まぁそうだけど・・・ そうなんだけど・・・ うぅ~」


「それよりも これからどうするかだよ 逃げるにしたって考えないと」


「それに関しては既に幾つか考えてある あったが・・・ほぼボツだな 未来視の前では王都ダンジョンでの持久戦も無理だろう 同様に何処かの町もダメだろうな となると残された道は国外だ」



 国外・・・可能性は考えてはいたけれどバルブリックさんに言われると現実味を帯びる。同時に故郷を捨てなきゃいけない決断が僕の胸を締め付けた。



「せっかく・・・せっかく新しい家でスタートする決心をしたのに・・・っ 何でこんなことになるのよっ 許せないわ・・・っ」


「マルティナ ・・・僕達家族がいる場所こそ帰るべき家だよ」


〔仕方ないじゃない 相手は知識と権力と財力がある国家そのもの 国から出ただけで助かる保証はないけれど 今はそれしかないわ〕


「・・・・・」



 マルティナは自分の家に並々ならぬ思い入れがある。その形が崩れそうになっただけでも心を乱したのに今度はそれを捨てなきゃならないとなると、彼女につけられる傷は相当深いものになりそうだ。



「で これからどう動きます? 僕的には一度ハルメリーに帰りたいんですが・・・ まだ家族も残っているし」


「私も騎士団に合流しなくてはならないからな 分かってると思うが こうして王都を出たのにも理由がある 早々に行動しなくては追っ手も掛かるのは自明だからな」


「そう ですね」


「それなんだがアネット 護衛として俺達も同行することにした」


「バルブリックさん? でも・・・」


「いいんだ 俺達 深淵の担い手みんなで既に決めてあることだ」



 何でだろう。僕達に関わっても得どころか害しかないのに彼の心には決心にも似た色で満たされている。


 僕が捕まってる間色々と準備を進めていたのか、僕の乗っていた馬車以外から馬の嘶(いなな)きが聞こえた。






 ゴトゴトゴト・・・


 計3台の馬車に揺られる僕達は一路ハルメリーに向けて進んでる。1台目には僕達と2台目はバルブリックさん達。3台目には何かあった時の為の各種物資と抜かりがない。


 休憩は最低限。馬車の速度も速すぎずそれでいて早駆けでペース配分までちゃんと考えているのだそう。ラズフォートまでの区間は他の町には寄らずにそのまま通り過ぎていくとのことだ。


 何故ラズフォートか。


 僕達は今一度『予見の目』に尋ねなければならない。この道程は正しかったのかと。


 数少ない休憩の折り、僕はずっと疑問に思っていたあることをバルブリックさんに投げ掛けた。



「あの・・・バルブリックさんは どうして僕をここまで気に掛けてくれるんです? 只の親切には思えないんですが」


「うん? 後進を案ずるのは先達の役目だ こんなことで冒険者家業ができなくなるのは勿体ない」


〔あら アネットには内緒なの? 私達には話してくれたのに〕


「そうだぜ リーダーは気にし過ぎだ」

「もうかなり時間も経っているのだから そろそろ枷も外れていいんじゃない?」

「まったくだ 情に厚くてもそれに押し潰されてたんじゃ目も当てられない」


「マデュロ サーシャ ロンデル・・・」



 彼の感情の機微は僕は色で判断したけれど、彼の仲間達は常日頃からそれを感じていたようだ。僕に拘る辺りマイナス等級に何か思うところでもあるんだろうか。



「ん~・・ ランドルフだ 俺が気に掛けてるのは」


「え ランドルフさんって ハルメリーの? ギルド長の?」


「ああ 彼の冒険者時代だった頃 俺は彼のいたパーティーの新米だったんだ アネット 彼がギルド長になってもダンジョンに通ってる理由を知ってるか?」


「確か いなくなった奥さんを探しているんでしたっけ」


「彼の奥さん エレフィーネは当初パーティーのリーダーだったんだ 皆を率先して冒険に挑む御人でな・・・ それがどう言うわけかある日突然 盲目さんに魅入られた


 そうなれば当然冒険者なんて続けられない 当時は子供も小さかったしそこに来てああなってはな 支えが必要だった 


 だからランドルフとエレフィーネ 両者の抜けた穴を埋めてパーティー再開・・・となれば良かったんだが エレフィーネが消えた」


「消えたって ホントにフッと居なくなっちゃったんですか?」


「そうだ ランドルフに置き手紙もなくな だから最初は誘拐を疑った ところがしばらくしてダンジョン内で彼女の姿を見たと言う噂が出回ったんだ それからだ 彼がダンジョンに執着し始めたのは」



 確かに痕跡もなく居なくなってしまったのだからそれが噂1つだったとしても縋(すが)り付きたくはなる。



「本来なら皆でダンジョンを捜索するところなんだが時期が悪くてな 当時のギルドはあることでゴタついてたんだ 貴族がギルドを掌握しようと画策していてな 当然反発も多かった そこで人望も厚いトップランクのランドルフに白羽の矢が立ったんだ


 しかし彼の奥さんのこともある ダンジョンに行かせるべきと言う意見と ギルド長になってくれと切望する意見とで分かれた


 ・・・俺はそこで ギルドの長として冒険者達を纏めてくれと言ったんだ」



 それを今では後悔しているのかバルブリックさんの色がグニャリと歪む。



「もちろん俺の言葉1つで彼がそれを選んだなんて思ってない だけど彼に冒険を諦めさせ俺は悠々と冒険に明け暮れて 周りから英雄だとか持て囃される・・・ これで良い筈がないだろう それがずっと気になっているんだ 


 度々・・・ハルメリーの情報は仕入れていた その中に君のことが含まれていたんだよ マイナス等級が冒険者になったって そして支援施設までギルドが携わっていると言う


 胸が締め付けられた 彼は今でも諦めてないんだって突き付けられた気がしたよ だから確かめたくなったんだ 本気なのか 未練なのか だからもし君が王都に来たのなら俺に伝えるようギルドに言ってあったんだ


 もし未練であるのなら 例え恨まれても裁ち切ろうと思ってた 後進の為に長としての役目に専念してもらおうと思ってな ・・・まぁ杞憂だったが」


「回りくどいだろう? 会いたいなら直接会いに行けばいいのに この人ハルメリーには絶対に行かないんだ」

「でっかい図体の割りに繊細なんだよ」

「ランドルフ氏なら今のリーダーを見たら誉めてくれると思うけどな」


「ハハハ モンスターには挑めても これだけはな・・・」



 山のように聳えたバルブリックさん。それが今では丘のようになだらかになっている。英雄と言っても人なんだなって、ちょっと安心した自分がいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。