↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
418/424

418・祝勝会

前回のあらすじ


ギルドの意向で祝勝会をやることに決まり、アネット達は護衛の意味を兼ねたバルブリックと共に学園へと戻ることにした。

「祝いの席で緊張するとかあるんですね・・・」


「そんなものは慣れさ 功績を打ち立てて陛下と貴族達に囲まれる地獄に比べればなんてことはない」



 誰もが認める大英雄ともなれば強大なモンスターにグルリ狙われても慣れちゃうものなんだ。知らなかった・・・


 祝勝会当日。


 僕は主催者陣営に組み込まれ、冒険者ギルドのお偉方の座る席に並ばされた。眼前に設えられた壇上では此方の気も知らず数々の出し物が披露されていく。


 あの事件から数日。会は負傷者の回復を待ってギルド主催で開かれることとなった。怪我の治りに関してはポーションがあるので相当な深傷でないのなら飲むなり掛けるなりすれば大体治る。


 そのお陰なのか元々の人口が多いのか、会場となった広場にはかなりの人が大挙していた。


 無礼講にも似たこの会はお祭りの様相を呈していて、周囲には出店も数多く出店されている。皆あの出来事を忘れるかのようにこの時ばかりは祭りの空気に酔いしれていた。


 そんな会場を僕は横目でチラリ隣に目をやる。冒険者ギルド用に置かれた長テーブルの横。そこには功労者の一角、軍部の面々が顔を揃えていた。


 中でもその内の1人は嫌でも僕の目に際立つ。


 だって今にも飛び掛かろうとする人物が凄い色して僕を意識し続けているのだから。そして彼を取り巻く兵士達も祭りを楽しもうとする気すらない完全仕事モード。


 いったい何をしに来たのだろうか。



「静粛に! 静粛に! 祝勝会に際し冒険者ギルドと騎士団から挨拶があるっ」



 司会の人の声が四方八方からブレて聞こえる。聞けば風魔法で音を拡散しているのだとか。「魔法にこんな使い方があるんだ」なんて思いつつ僕達は催しの進行に従って壇上へ。


 緊張しつつ階段を上がり僕達の顔が衆目に晒されると同時に、会場からはドッと体を押し倒すような歓声が上がった。バルブリックさんは言うに及ばずギルドの面々もきっと誰もが認める人達なんだろう。


 その中に1人紛れる僕・・・


 司会の人の「静粛に!」の連呼に次第に静かになる中、ギルドを代表してワルワイズ総長の挨拶が始まった。



「まずはモンスターの撃退ご苦労だった 数多の負傷者 犠牲者は出たものの こうして王都の平和が守られたのは一重に彼等の多大な貢献があったからだ」



 静かな会場でギルド総長の声が全体に響く。祭りの中誰もが彼の声に耳を傾けていた。言葉が紡がれるにつれ変化していく色の数々。今回の出来事はそれだけ皆の心に与えたものが大きかったんだ。



「彼等の功績を称え また犠牲となった者達への鎮魂の祈りを添えて 今日の平和を我々の声と共に彼等の御霊に届けよう」



 ギルド総長の言葉に死者への哀悼とでも言うのか、会場に集まった一人一人の感情が旅立った英雄達へと注がれた。


 ギルド側の挨拶が終わるといよいよ兵士側の挨拶となるのだけど、その場に立ったのは騎士団長ではなく騎士団内の一階級、大佐を預かるギャレズリー大佐その人だった。


 正直「ん?」と思ったけど、ギルドもそして聴衆も彼の登場に疑問を持つ人はいない。周りを見渡すと興味のない人とどこか諦めた様子の人達とで分かれてる。



「諸君 まずはこの場に集まってくれたこと感謝する 死んでいった者達も皆の無事に胸を撫で下ろしていることだろう しかし この場に彼等の魂を汚す者が紛れ込んでいる それはあろうことか自分の立場をわきまえず 皆の面前にとぼけた顔と恥を晒し 会を貶めるマイナス等級の存在だ」



 その台詞と共に会場に集まった人達の意識が一斉に僕に向けられる。「死者を弔う筈の会で堂々それを言うのか」と。聞いていた全員そう思ったに違いない。


 どうやらそこまでして僕を皆の目の敵にしたいらしい。多くの人がいるにも拘わらず壇上の僕を執拗に言葉で刺してきた。


 理由を知らない会場の多くは「どう言うこと?」と疑問符が浮かぶ。しかし公衆の面前での際立つ発言も折り込み済みなのか、ギルド総長はすぐさま反論を繰り出した。



「彼は歴とした冒険者であり 何より先の騒動でモンスターに立ち向かった功労者だ マイナス等級であろうとも そのような言葉を浴びせてよい相手ではない」


「皆の者 どうやら盲目でもギルドが認めれば冒険者になれるらしいぞ? 余程人手不足と見える だがそれは王の意向に逆らってまでする行いなのか?」


「それは違う 決意と努力が彼を冒険者の道へと進ませたのだ」


「フン 言いよるわ 登録申請が年齢と書類の明記で済んでしまう冒険者が決意に努力? 言葉1つで幾らでも飾れるな」



 死者と生者の為の祝勝会の筈がギルドと軍部の言い争いへと変わる。明らかにおかしい雰囲気に会場に集まった人達も困惑色を隠せない。



「そもそもマイナス等級になる者に問題があるのだ そのような欠陥品を通常の人として数えること自体間違っている」


「ほう 分からないな 本来騎士は国民を守る為に存在していると心得ているが? それではまるで彼等は国民でないと言っているようではないか」


「よう・・ではない そう言っている そのような社会のお荷物に割く時間も労力も金も無駄なのだ」


「無駄ではない 現に彼はスキルを用いて此度の件に貢献した それを無いものとして扱うなどできる筈もなかろう」


「今回のモンスター討伐に対処できたのは王命により事前に準備が整えられていたからだ マイナス等級であろうとなかろうと個人を称賛するものではない」



 そう言えばダンジョンに入る前に沢山の兵士達が入口に集められてたっけ。何かの訓練かと思ってたけどこの事件を見越してのことだったのかな。


 つまり王は知っていた?



「その否定はしない 我々から見ても王の采配は見事と言う他ないからな だが今議論してるのは貴殿が指摘した個人でありマイナス等級だ」


「議論か そんなものするまでもなかろう マイナス等級など即刻排除だ そう言えば・・・聞くところによればマイナス等級を支援している町があるそうではないか」



 そう言うとギャレズリー大佐は僕に嫌らしい感情を向ける。これはほぼ間違いなくマイナス等級支援施設を言っているのだろう。


 王都に来ても大佐はハルメリーの情報を集めてるみたいだ。仕事熱心なのかそれともまだ町を諦めてないのか。



「全くもって下らん そんなものに注力する余力があるのなら マイナス等級のスキルさんを追い払う組織を組めばよいのだ そうすれば間違いも起こらんでわないか」


「かもしれないが現実は違う 問題が起こってる以上それに対処することは間違ってはいない筈だ どう向き合うかの違いだけだろう」


「分かっとらんな 弱さを売りにし 支援に群がる連中の浅ましさを 自分はこんなに恵まれない助けてほしいと延々言って回るのだ 一生涯変わりはしないと言うのにな ならば奴隷と言う形で社会に放り込んだ方が合理的であろう? 売り手にも買い手にも利がある形で収まるのだからな」



 売られる方にも利があるとは? さすがマイナス等級は人じゃないと豪語するだけはある。どうやら彼にとって僕は人ではないらしい。それにしても清々しいまでの切り離しっぷりだ。


 だけど僕は言いたい。必死に生きようとする人の意思まで無視をしないでいただきたいと。



「あのっ 僕達は自分の足で歩こうとしています 確かに社会的ハンデを負って足を引っ張っる側面もあるでしょう ですが 僕達が普通になろうとすることはそんなにダメなんですか? 許せませんか? 僕は・・・マイナス等級と言う言葉を消したいです」



 勢いで出た言葉。言った後で確信に変わる。


「そうか これなんだ」と・・・



「貴様ぁ~・・! 王意を無下にする気かぁ? せっかく劣等種である貴様等にも奴隷と言う価値が与えられたのに 王の恩情に唾を吐く気かっ!」



 絶対者からの慈悲が奴隷とは泣けてくる。一色触発の空気にギャレズリー大佐は身を乗り出した。彼には周りが見えていないらしい。と言うか周りなんて気にしてないのだろう。


 場すらわきまえない罵詈雑言。一部会場の人達がどうして諦めた感じになったのか分かった気がした。


 どうしようもないんだ。この人は・・・



「大佐 ここは祝いと弔いの席だ デオドランズ卿も控えていただきたい」


「そうだな 申し訳ない」


「ぐぬぬ・・・!」



 さすがに看過できなくなったのか大佐は彼の側にいた人達によって止められた。たぶん制御役の彼等は1兵士ではなく権威ある騎士団長とかなんだろう。さしものギャレズリー大佐も権威の前には膝を折るしかないようだ。


 場も収まり冷静になったところで壇上から会場を見渡す。


 目に写る光景は空気に呑まれてハラハラする人と信を持って賛同する人、そして否定する人もちらほら見受けられた。


 もっともこう言った席で問う問題ではないけれど、僕や僕達が何を求めてるのかは伝わったと思う。


 挨拶も終わって壇上からテーブルへと移り出された食事に舌鼓をうつ。一般の人とお偉方とで分かたれているせいもあってギルドと軍部の席は近い。


 納得できないギャレズリー大佐は目の前の食事そっちのけで僕達を意識し続けてる。これではせっかくの味も分からないし、だんだん食事も喉を通らなくなってきた。


 見かねたギルド総長は補足も兼ねて僕に大佐の人となりを語り始める。聞きたいわけではないけれど・・・



「彼は王の意向に実直で曲がったことが嫌いな男だ 中途半端に権力もあるせいで策謀を巡らす貴族にとっては目の上のコブでもあるのだ つまりギャレズリー大佐とは制御の効かない正義の鉄槌であり融通の効かない厄介者として広く知られている だから誰も関わりたがらないのだ まぁその姿勢が一部信奉者を生んでいるんだがね」


「それは・・・厄介ですね」



 でも時として常軌を逸した存在が世を正すこともあるのだろうし、必要悪? みたいな存在として王はお許しになられてるのかもしれない。


 たぶん・・・分からないけど・・・





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。