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416・ギルドに押し掛けた者

前回のあらすじ


バルブリックの登場により窮地を脱したアネット達は、ペレディアが加担する説明を問われる。それについてペレディアが冒険者ギルドの元締めワルワイズに淡々と応えるのだった。

「祝勝会・・・ですか?」



 しばらく頭を抱えたギルド総長は我に返るなり「祝勝会を開こう」と言い出した。確かにあれだけの惨状を乗り越えたんだ。死者には慰霊と鎮魂を。生者には労いを込めて催すことに間違いはないと思う。



「そうだ ペレディアはギルドにとって最重要機密となったわけだが それを知るものが我々だけではないことが問題だ」


「人の噂に戸は立てられないと言うからな」


「でも・・・噂 ですよね?」


「君も冒険者なら噂の持つ意味を考えたまえ」



 確かにハルメリーの冒険者も情報収集には余念がない。知ると知らないのとでは一寸先が分水嶺になることを彼等は知っている。


 まさに情報とは冒険者にとっての生命線と言える。



「それで祝勝会と僕に何の関係が?」


「祝勝会の折り君とギルドの結び付きを強く周囲にアピールする」


「はぁ・・・」


「・・・要するに 噂は止められないが我々との繋がりを示すことで君の身の安全と情報の漏洩を防ごうと言う目論見だ 加えてこの件は国全体にも広まるだろうから 少なくとも君は今後厄介事に巻き込まれる可能性が否めない」


「そのための後ろ盾ってことですね」


「ただ問題は 君がマイナス等級であることが多方面で本当にマイナスに働いてしまう点に留意してほしい」


〔貴族の口から直接それを聞くと マイナス等級は国民ではないと言われてるみたいね〕



 立場が弱い者こそ国はこれを守らなくてはならない。愛国心はそれが彼等の心に届くからこそ育まれると思うんだけど、国に連なる貴族の発言がこれではミストリアのような言葉が出てしまうのも仕方がない。



「つまりそこをつついてくる人がいるかもしれないと ・・・いざとなったら 貴方はどうなんですか? 貴族・・・なんですよね」


「ギルドにとって益となるなら我々は君を守る そうでないなら貴族として振る舞う」


「何よそれっ! 汚いわっ!」


「だから くれぐれもギルドに背く行為はしないでくれたまえ」



 僕はチラリとペレディアを見やる。つまり彼はモンスター側に寄るなと言いたいんだろう。だって人とモンスターが共に手をとる可能性を、目の前で証明してしまったのだから。



「分かりました」



 でもふと考える。


 世の中には利害が一致すれば共闘関係を築けるモンスターや無償で人を助けて思いやってくれるモンスターもいる。


 皆が皆同じではない。


 だったら・・・仲良くできる者となら仲良くしたっていいんじゃないのかと。


 ギルド総長の言葉に脳内で反発していると部屋の外が騒がしいことに気が付いた。徐々に近付くドタドタドタと歩く足音は僅かな怒気を孕んでる。


 その周りには招かれざる客を阻もうと制止を促す声が重なり、しかしこの人物はそれすら意に介さない。無頼漢よろしく部屋の前までやって来るとノックもせず不躾な態度で部屋へと押し入った。


 バルブリックさんと同じことしても真逆の印象を受ける彼を前に、僕は直感的に肩のペレディアを懐に隠す。


 彼は部屋に入るなり僕に狙いを定めると喜び怒り、黒ずんだ感情を露(あらわ)にした。何となく察する。彼は軍関係者だと。



「へへへ 居るではないか そこの盲目の小僧を此方に渡してもらおう」


「ギャレズリー大佐! 貴方が何故ここに」


「っ!?」



 ギャレズリー大佐!? 本当に!? ハルメリーの外で戦ったあのギャレズリー大佐? 確かあの後ハルメリーを追われることになったけど・・・


 なる程。僕に対する思いはひとしおか。



「む? エルヴィラ騎士団長か 貴公こそここで何をしている ハルメリーの守備に当たっているのではないのか」


「・・・今は 所用で王都に滞在しております」


「大佐 部屋に入るなりこれはどういう了見かね」


「我が兵がそこの小僧とモンスターとの遣り取りを見たのよ これはもはや敵と通じてると言っても過言ではない」


「なる程 我々もそれについて問い質していたところだ 取り調べはギルドでするので 然る後 書面にて結果を報告しよう」


「取り調べ? 手緩い そやつは超危険人物なのだぞ 鎖に繋ぎ口を割るまで拷問にかけねばならん」


「これは・・ハハ 大佐ともあろう人物が マイナス等級の しかも盲目の子供相手に危険人物と 随分と高く評価するものだ」


「ぐぬ・・・ 貴殿は知らんだろうが そやつはマイナス等級のくせにいっぱしにスキルを使いよる 冒険者を続けているのがその証拠ではないか」


「確かに稀有な存在ではあるな しかし今回の件の重要な点はモンスターとの会話だ 知っての通りモンスターが喋るのだから他に会話をした者がいてもおかしくはないだろう」


「チッ ・・・兎に角 そやつは重要参考人として軍部が預かる 渡してもらおうか」


「彼は冒険者だ 参考人が必要ならあの場にいた兵士でも構わないだろう?」


「フン 相変わらず屁理屈だけは達者だな 我々はどんな情報でも集め多角的に戦略を考えなくてはならんのだ では訊くが今回の件 その発端は何か ギルドはどう考えている」



 その質問に僕の心臓がドキリと跳ねる。



「・・・ ・・・そうだな 喋るモンスターと会う機会があれば直接訊いてみるさ」



 ギャレズリー大佐はギルドに渡す意思が無いことと、自身の根拠、証拠の不十分さを鑑みて潔く身を引いた。


 できれば僕もこのまま身を引きたいところだけど、彼の質問は僕を鎖よりも頑丈なもので縛り付けた。


 これはきっと何処にも逃げられないやつだ。逃げてはいけないやつなんだと、僕の心の無意識が逃げたい気持ちの心臓に警鐘を鳴らす。



「で 大佐の言っていたこと 実際のところどうなのかね」



 直に訊かれると言葉に詰まる。詰まるのは僕の行いが発端となったその責任から逃れる言い訳を考えたいからか。


 それとも本当のことを知られて責任を追求されるのが怖いからか。



「・・・それは────」

「おっと アネットを責めたってどうにもなんねぇぜ」


「どういうことかね」


「言葉の通りさ 俺等ん中に精霊さん探しに相当入れ込んでる奴がいてよ そいつの声かけで連中は動いたんだ」


「分からんな 精霊さんを探すことと人間を襲うこと それに何か関係があるのかね」


「さぁ? それを調べる手段の1つとして人間を襲わせたんだろ 言っとくが アネット達はそれを知らせる為に馬かっ飛ばして王都まで戻ったんだぜ? 責められるべきじゃねぇな」


「フム 随分と肩を持つじゃないか」


「そりゃ利害が一致してる内は仲間だからな」


「ペレディア・・・ ありがとう」


「いいってことよ」


「いい感じに纏められても困るんだがね」



 救われる。


 でも目を背けてよい問題ではない。結果はどうあれ僕の選択が招いた事実は変わりはないのだから。そもそもの原因は少女の拉致から始まるけど、もしあの時コルトア達と一緒にハルメリー戻っていたら。


 もし植生ダンジョンで少女を押さえることができていたら。


 ・・・・・・


 ・・・・・


 ・・・


 うん無理。僕1人であの子は止められない。僕が逃げたらあの子はきっと追ってくる。周りの人間食べながら。


 荒れるモンスター達も止められない。草モンスターが居てくれたから何とかなっただけで僕は何もできなかった。


 あれ?


 案外僕のせいってだけでもない?



「なぁちょっといいか アネット 君とモンスター達が精霊さんに興味があるのは分かった しかしそこにイーブル騎士団の団長殿がわざわざ加担する理由はなんだ ペレディア 君もだ 何故アネットに味方する もしかして君達・・・本当は精霊さんを見たんじゃないか?」





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