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413・成功か失敗か

前回のあらすじ


順調に進むかと思われた“精霊さん”探しだったがフュリアの思惑で思いもよらない方向へと舵が切られる。しかしモンスター達に襲われるアネット達をミストリアの“失語さん”が助けることにより窮地を脱することには成功した。

 喋るモンスター達が止まってる隙に僕等はダンジョンを脱出した。チラリと後ろを向くとペレディア本体と草モンスターの色が遠ざかる僕達を見送ってくれてるように感じる。


 “精霊さん”にあれだけ固執したフュリアはミストリアのスキルが効いているのか追っては来ない。これで諦めるとは思えないけど、僕も当分あそこに戻る気にはなれない。


 ただ問題があるとすれば僕達の旅は失敗してしまった可能性が高いこと。『予見の目』の通りモンスターとの対話はあったものの、あれでは一方的な要求の突き付けで対話ではないように思う。


 つまり予見で見えた光景は今日じゃない?


 そんなことで頭がグルグルしていると、ダンジョンから出た先が森のような木々のざわめきで塞がれているのに気が付いた。



「あれ? ここの木って確か全部切り払われてた筈なのに・・・」


「ここで間違いない・・・のよね? うん アネットを助けた時は木が全部切られていたわ」


「木ってこんな早く成長するものなのかな」


「そんな訳ないだろ 植樹か何かのスキルだろうな 道らしい道もない これではまるでここを隠してるみたいじゃないか・・・」


「・・・もしかして まだそう言う目的で利用してる人達がいるってことかな」


「そう言うって何よ」


「シャドレイさんに聞いたんだ ダンジョンの植物を使って良くない薬作ってるって」


「お前を助けに来た時に戦ったあいつ等か ・・・なる程 残党が残ってたわけだな 派閥と言うものはカビのようにしぶとい」


「・・・外ってこうなってたのか」



 これからどうしようかと考え込んでると僕の肩の上でペレディアの分体がボソッと呟いた。彼は初めて見る外の景色にとても感銘を受けているみたいだった。


 僕の記憶の中の外と建物の中とでは景色が全然違うように、彼もまたその違いに驚いてる様子だ。



「青い・・・ 上はどうなってるんだ? 何処まで続いているんだ?」


「空のこと? 分からないけど ずっと高く続いてるんじゃないかな」


「そんな高く続いて 世界はいったいどうなってやがるんだ」


「たぶん不思議なことで繋がってるんじゃないかな 上も横もダンジョンも」



 横には未開の地が広がって下にはダンジョン。そう考えると上にも何かがあるのかもしれない。ペレディア同様、僕の心にもまだワクワクを取り入れる余地は残ってる。楽しみだ。



「そんなことより どうすんのよこれからっ この子も具合悪そうだわっ」



 強力なスキルの反動かミストリアは水で文字を描く気力も無いみたい。色からも伝わる、彼女には休息が必要だと。



「・・・植生ダンジョンで人の声を聞いたんだ たぶん戦ってる音」


「つまりここに出入りしてる連中がいるって言いたいのか? そしてそいつ等が根城にしているアジトも近くにあるかもしれないと」


「ええ」


「まさかと思うけど そんな連中に助けを求める気じゃないわよね こそこそ危ない薬作ってる連中よ? 見付かったら絶対襲ってくるわ」


「・・・前に来た時はそこまで危険な感じはしなかったよ ルディアが話を通したってとこもあるけれど 権力に対してはちゃんと理解はある感じだった」


「まぁ派閥の組織ならな」


「じゃあ 交渉も可能ってこと?」


「そうだね・・・チラ」


「・・・ ・・・おい まさかそれを私にやれと?」


「この中で権力持ってるの貴女だけじゃない」


「うっ・・・ ・・・はぁ 背に腹は代えられないか 仕方ない だがその前にプランを立てよう」











「あ? 何だって?」


「だから 急用だと言っている」



 僕達は慎重に森を探索し木々の外れに集落らしき人の営みを発見した。マルティナが言うにはパッと見、掘っ立て小屋にしては大きく村と言うには小さく、何処と無く集落と言う単語が出たと言う。


 森の中に隠れていないことから表向き開拓地の様相を呈してはいそうだ。これなら「偶然通り掛かりました」も通用するかもしれない。


 緊張しながらその集落に足を踏み入れると僕等を目にした人達は表には出さないものの明らかな警戒色を灯らせた。


 そんな彼等にエルヴィラさんが代表して話し掛ける。



「ここに伝書鳩を飛ばせる者はいるか それと馬も2頭借り受けたい」


「ははは いやいや 伝書鳩も馬も揃ってるが 何処の誰とも知らない連中に 大切な連絡手段をおいそれと貸すわけにはいかない」


「くっ・・・」



 規模が規模だし普通に考えれば連絡手段は命綱だ。彼等の言い分は理に適ってる。でもこの流れだと粘っても貸してはくれなさそうだ。お金を積めば何とかなるだろうか?


 ピチャピチャ・・・


 僅かに聞こえた水の音に目を向けるとミストリアが小さく細かくエルヴィラさんに何かを伝えていた。


 それを見た彼女は「突破口を見付けた!」みたいに明るくなったけど途端に重く苦々しい色へと変貌を遂げていく。どうやら心の葛藤があったらしい。



「・・・一応聞くが お前達はルンドレン伯爵家と同じ派閥の者だよな」


「!」



 それを聞いた途端男性の色が即座に変わった。それに伴って近間で話を聞いていた人達の空気も変わる。エルヴィラさんの指摘は正鵠を射たらしい。



「はぁ? いったい何のことだ? ここはしがない開拓村だ 何処ぞの貴族か知らないが 俺達に関係ねぇよ」


「事前に連絡が無いのだから信用できなくて当然か 私はルディア・ルンドレンの名代で植生ダンジョンまで来た イーブル騎士団団長のエルヴィラ・ストラディオだ」



 事前に考えたプランとして、もしここの人達がルディアの関係者だったら「このやり方で通そう」を今まさに実行している。


 当然嘘なわけだからエルヴィラさんが渋るわけだけど、彼女は騎士の徽章(きしょう)を見せながら自分のプライドと戦った。



「お前も派閥の人間ならこれが本物かどうかの見分けはつくだろう さっきも言ったが急を有する事態が発生した これをいち速く報告し彼女の手柄となった場合 それに協力したお前達の口利きをしてやろう」


「・・・ちょ ちょっと待ってろ」



 それを聞いた男性は仲間と共に奥へ引っ込む。この返答がどんなものになるのかは分からないけど彼等の心に響いたのは間違いない。


 僕達がドキドキしているのを余所にペレディアの呆れた声が聞こえた。



「人間って面倒臭ぇなぁ」



 結局のところ僕達のこの判断は正しく彼等は伝書鳩の手配と馬を2頭用意してくれた。


 この場所にいる自分をどう思ってるのか分からないけど、エルヴィラさんに期待の眼差しならぬ気持ちを寄せているのは色からして確かだった。


 彼等にも彼等なりの何かが内にあるのかもしれない。


 伝書鳩はエルヴィラさん名義で王都の兵士達に、僕達は馬2頭で急ぐわけだけどここで1つ問題が発生する。



「あの 僕とマルティナは馬乗れないんだけど・・・」


〔それなら 私が手綱を握るわ・・・〕


「ミストリア? 貴女具合悪いじゃない 無理しちゃダメでしょ」


〔そんなこと言ってる場合じゃないわ 伝書鳩は送れたけど それだけじゃ足らないかもしれないし モンスターより早く王都に着いて騎士団長の貴女が指揮しないと・・・〕


「その嬢ちゃんの指摘の通り 連中相手に生半可な人数揃えたって餌になるだけだぜ」


「・・・そうね って言うか貴女馬乗れたの?」


〔何を言ってるの 乗馬は貴族の嗜(たしな)みよ〕



 ミストリアの言葉を信じて僕達は2頭の馬に分かれて王都に向かうこととなった。鞍とか色々準備をしながらマルティナが言う。



「そう言えばお礼がまだだったわね ダンジョンで私達を助けてくれてありがとう」


「おっと 気にする必要はねぇぜ 結果助けける形にはなったが俺はこいつ等の監視が目的だ」


「ペレディアも精霊さんに会いたいの?」


「俺は精霊さんなんかどうでもいいんだよ でもダチがずっと探してんだ ・・・そろそろ決着つけてもいい頃合いだと思ってよ 居ても居なくても・・・な」



 ペレディアは探し物は見付かったと言い僕達もダンジョンに来た理由は正確に言えば“精霊さん”ではない。英雄を夢見る僕もそれを直接“精霊さん”に望んだりしない。


 だったら“精霊さん”に固執するフュリアは神秘に何を望むんだろう。それともただ知りたいだけなのか。



「ねぇミストリア 貴女本当に大丈夫? 走ってる馬から落ちたら相当痛そうよ」


〔だからアネットを乗せたいのを我慢して貴女に頼んでるじゃない 私が落ちそうなったら身を呈して守ってね〕


「・・・色々言いたいことがあるけれど 取り敢えず分かったわ」



 馬にはエルヴィラさんの後ろに僕が騎乗しミストリアとマルティナでもう1頭を駆ることとなった。


 ダンジョンのように入り組んでもないしモンスターの妨害もない。おまけに馬の速度も加算されるわけだから戻りは相当な時間的短縮が望めるけど相手方モンスターの戦力は強いのは分かってるとは言え未知だ。


 人なんてものともせず突き進んでいるかもしれない。


 僕達はいわゆる早駆けに近い速度で進んでいる。ミストリアの腕前と体調が途轍もなく気になるけど先頭を走る僕達にちゃんと付いてきていた。


 前に座って馬を操るエルヴィラさんは何やら釈然としない様子でブツブツと独り言を呟いている。


 馬の速度のせいで風切り音も凄いけど耳も武器な僕には彼女の呟きが普通に聞こえた。



「騎士のプライドを犠牲にしてまで選択したぞ モンスターとも会話した しかしダンジョンからは遠ざかっている ほんとにこれで合っているのか?」



『予見の目』は何を見たのか分からないけど言われた出来事は全て熟した。とは言えかなり怪しい感じだけど、これから結果が表れるんだろうか。それとも失敗か。


 何にせよモンスター達との対峙が残ってるわけだから「話し合い」の余地はまだ十分にある。もっとも言葉が通じるからと言って会話が成立するとは限らないんだけど・・・





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