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スキルさんが意思を持った世界で盲目の少年は冒険を夢見る  作者: 猫かるちゃー


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411/426

411・検証?

前回のあらすじ


植生ダンジョンに到達したアネット一行はそこで知り合いの喋るモンスター3体と再会する。

「1つ1つか・・・」



 正直に言うと『鍵』としての役割を負ったのだからここに来れば“精霊さん”から「何かしらのアクションがあるのでは?」とちょっと期待した。


 だけど実際はうんともすんとも何の反応もない。であればここで何かしなくては“精霊さん”に会うことは適わないと言うことだ。


「スキルを使え」と言うけれど僕には相手を見る以外に有効なスキルがあるとは思えない。つまり“精霊さん”を目で探せと言うことになる。


 植生ダンジョンを踏破しろと? それも手段の1つならいずれやることになるだろうけど・・・そうなる前に何か見付けたい。


 僕も然ることながらミストリアもまた頭を抱えている。あるのかも分からない“精霊さん”からの呼び掛けに耳を傾けたり“失語さん”のスキルを使おうとしてみたり。


 でもこの様子だと収穫は無さそうだ。


 こうなった以上僕も皆も長期戦を覚悟するしかない。何せ誰も知らない未知に挑むんだ。一朝一夕で到達できるものではないだろう。


 できることなら腰を据えてじっくり取り組みたいところだけど、気心の知れないモンスター達に見られながらとなると衆人環視の中に放り込まれた感じで落ち着かない。


 中々進展しない状況に我慢の堰(せき)が切れ、不満が濁流となって押し寄せるとか普通にありそうなのが彼等モンスターだ。


 そう思うと餌を前にヨダレを垂らす犬みたいに見えてくる。ただし噛まれたら死ぬ。



「なぁアネット こいつ等本当に大丈夫なのか? 言葉が通じてもモンスターはモンスターだぞ」


「・・・大丈夫だと信じたいですね 何かあった時には頼りにしてます騎士団長」



 草モンスターにペレディアの強さは知っている。フュリアがどのくらいかは分からないけど同程度と見ていいだろう。


 1体でさえ十数人を圧倒できるのにそれが3体ともなれば・・・


 その「何か」が起こらないことを祈るしかない。



「盲目さん どう? 精霊さんは居そう?」

『ん~ ここに居て ここに居ない? みたいな感じ~』

「フワフワしてるね」

『包まれてる感じー』

「包まれてる・・・やっぱりダンジョン全体が精霊さん? だけど見えないし聞こえないし声も届かない でも・・・」 



 モンスター通しの殺し合いになった時にはちゃんと反応を示した。と言うことはダンジョンで起こることは把握しているってことだよね。つまり繋がりはある。


 じゃあ僕達からはどうアピールしたらいいんだろう。どうすれば届くのかな。



「精霊さんは僕等を見てるってことなんだろうけど 何を思ってるんだろうね」


「母 いつも側に居る オデ感じる」



 モンスターが“精霊さん”の産み出した子供なら見守る気持ちは分かる。だったらどうして家の『鍵』を彼等じゃなくて人に渡したんだろう。


 そこにヒントがある? 分からない・・・



「でも鍵を渡すってことは扉を開けて家に入ってもいいよってことだよね ってことは鍵穴はある それを見付けるのにも条件が必要なのかな もしくは精霊さんでもどうしようもないルールがある それとも僕達を試してるとか」


「精霊さんが未知なら 我々の理解の及ぶところではないのだろう しかし邂逅(かいこう)する為の手掛かりを残す以上 彼にも我々に望むものがあると考える であるならそこに至る可能性は0ではない」


「まどろっこしいよなぁ 言いたいことがあんなら直接言やぁいいのによ」



 確かに。


 人が普段気にもとめない虫を観察するのは興味を示した時だ。そう考えると“精霊さん”は『鍵』を与えパズルを解くのを眺めているようにも思う。


 となると試されてると捉えるのが一番しっくりくるのだけど、そうする意図は何だろう。


 “精霊さん”の望みか・・・


 未知の存在が僕達に望むもの。ますます分からない。その「分からない」を分かる為にここへやって来たわけだけど「分からない」の角度が更にネジ曲がっただけなのは分かった。


 それはそれとして、僕は未知の存在に対しての見積もりが甘かったんじゃないかと今になって思う。


 本来なら数ヶ月。数年。下手すれば生涯を懸けて取り組むべき難題なのではないかと。でなければ未知とか神秘とかの御大層な名詞は付いたりしない。



「ちょっと早まったかな・・・」



 でも違う。僕達の目的はミストリアの体調を治すことで未知とか神秘とかはそのついでだ。



「でもあれだ 『鍵』で開ける鍵穴探しゃいいだけだしな 自分が生きてる意味とか考えるよりかは楽だろ」


「モンス・・・ペレディアでもそんなこと考えたりするの?」


「稀にな 物心つく前から殺して食って 自分てもんを認識して その疑問を言葉が形にしたところでまた次の疑問だ 快楽さん(コイツ)と契約したって欲求が具現化したに過ぎねぇ 俺が俺である意味とはちと違う気がすんだよな」



 意外だ。モンスターも自我があれば自問自答みたいな心境になったりするんだ。でもそれに迷うってことは彼自身自分が何者かになれてないってことだよね・・・たぶん。



「それで悩んだりする人もいるみたいだよ? 案外僕達の思考は似てるのかもしれないね こうして普通に会話だってできてるんだし」


「私は逆に自身の意味より到達点に食指が動くね 結局今の自分は過去の集大成だ それを探ったところで過去も生まれも変わらない ならば未来にこそその重きを置くべきだろう もし自身に意味を問うのなら 何を成すかで意味が意義へと変わる それこそが価値であり自身の生きる意味と考える」


「お前の言うことはいちいち正しいと思うぜ? だが理屈より感情の方が強いかな 俺は」



 不思議な光景だ。マルティナ達の目にはきっと彼等はモンスターなんだろう。けど僕にはどうしても人のそれと同じに見えてしまう。もちろん色合いは全然違うんだけど・・・何でだろう。



「なぜ己に囚われるのか ペレディア その疑問の答えを出す為に私に協力しているのだろう? ならば今の君は少なくとも無意味ではない」


「拘ってるわけじゃねぇよ 喉元に引っ掛かって気持ち悪いってだけだ ホレ 他の連中連れてきたぜ」



 ・・・他の連中?


 ペレディアの言葉に耳を疑い周囲の音に耳を澄ます。するとゴゴゴゴゴと地鳴りのような音とガサガサガサと草を掻き分ける音が時間と共に大きくなってくるのが分かった。



「もしかして・・・他のモンスター達を呼んだのっ!?」


「アネット? どうしたの?」



 僕の大声に3人の空気も変わる。



「みんな気を付けて 沢山の喋るモンスターが 来る・・・」


「はあっ!? ちょっ! どう言うことよっ?」


「沢山って 何体だっ!」



 たぶん両手で数えられないくらい大勢。そんな数が押し寄せてきたら抗うどころか逃げることさえ敵わない。



「そう身構えなくてもいい 彼等は協力者だ」



 それを「分かれ」は無理だろう。僕達みんな彼等を知っている。


 こうして話をしている最中も音はどんどん大きく膨れ上がって、遂には絶望が僕達の周りをグルリ取り囲んだ。



「取り敢えず近間で集められる奴に声掛けてきたぜ」



 ペレディアの声が本人とは違う場所から聞こえてきた。それは色の感じから紛うことなく本人で、しかし体格は小さく加えてピョンピョン跳び跳ねながらペレディア本人の元まで来るとそのまま1つに同化した。



「便利だろ こいつは俺の分体だ」


「よぉ フュリアが話があるって聞いたから来てみたけど 飯でも奢ってくれんのか?」

「話って 前に言ってた精霊さんとかだろ」

「あ~ あれかぁ」

「何か進展でもあったのか?」


「進展と言うよりかは可能性が少しだけ高まった と言うのが正しいだろう」


「お前にしては煮え切らないな」


「少々手詰まりでね そこで君達の手を借りたい」


「協力? 此方から触れられない相手にどう協力すりゃいいんだよ」

「また草に絡まれるのはゴメンだぜ」

「んで そこの人間は食っていいのか?」


「君達の多くは精霊さんを感じた筈だ その時のことを思い出してほしい」


「その時って・・・妙な人間が外のモンスターけしかけて それで一戦交えた時のことか?」

「そこの草野郎がキレて俺等絡めとった時のことだよな その後確か・・・」

「あぁ その時だ 確かに感じたな」

「フュリア つまりあの時の再現をすりゃいいんだな?」


「ちょ ちょっと待って またモンスター達をいっぱい殺すって言うの? あの子はもういないんだよっ?」


「そんなことはしない 一瞬感じた精霊さんは同族の殺し合いに胸を痛めていた 彼の存在に意思がありそれを望まないならば同じ轍は悪手だろう ならば同族でなければいい 幸いダンジョンにはそれに代わる代替品が数多く見受けられるしね」



 その瞬間僕等に向けられるフュリアの感情に、起きてほしくなかった「何か」が起きたことを直感した。



「おいお前・・・何を言っている! くそっ! 言葉が通じてもやはりモンスターはモンスターだったなっ!」


〔やっぱり人とは根底が違うわね 殺めることに何の躊躇もない 白い紙が裏返って黒くなるみたいに簡単に変わるわ〕


「勘違いをしないでほしいのだが これは検証であって無意味な殺戮ではない 価値ある行いだ」


「ふざけるなっ! そんなことが許されるわけがないだろうっ!」


「許しの条件は他者との繋がりが自分とどう関係しているかで成立する 巨大なモンスターに襲われたとして相手に繋がりまたは共通点が無ければ大岩に潰されるのと同じだ


 立場を逆にしても同じことが言える 君達も腕試しやら気晴らしやら 生きるに不要な虐殺を狩りと称して正当化しているだろう? それも勝てそうな相手を選んでね


 だがそんなこと我々はいちいち気にしない 弱ければ食われる それこそが平等なルールであり世界の理だ そこに許しは存在しない」


「フュリア違う 人間だから大丈夫 違う 母 命を奪うこと悲しむ」


「言った筈だよ これは検証であると 違っていたのならまた別の角度からアプローチすれば良い」


「ハハハ 何でもいいさ 憂さ晴らしに大勢で狩りってのも悪くない」

「人食うのは久し振りだな」



 どうしよう・・・


 確かに『予見の目』で「モンスターとの対話」とあるけど、これで合ってるのだろうか。正直とてもそうとは思えない。





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