405・王都の冒険者ギルド
前回のあらすじ
学食でトラブルに巻き込まれたアネットだったがそれを蹴散らしファムエルの待つ職員室へ行く。ミストリアの体調不良について話す中で“精霊さん”に関する記述に単くつコドリンの名があることを知るのだった。
「コドリン・・・そう言えばコドリンは精霊さんと契約したから数々の偉業を成し遂げた・・・何て噂もあったような気がします」
「きっと人柄も良かった筈よ だってコドリン洞穴発見を記念して町の人と一緒に剣を作ったんですものっ まぁその後悪党共に汚されたけどね・・・」
〔歴史の授業にもコドリンの名前は出てきたわ コドリン洞穴みたいに名前が付けられてるものからそうでないものまで〕
国の学園の授業でも習う程にコドリンは偉大だったらしい。そんな人物の発見したダンジョンが地元にあって、国と人の生活を支える基盤となっている。
僕自身はご相伴にあずかる身だけど地元民として誇らしい。
「コドリンに対する見解は多岐に渡るよ 探窟家の側面もあれば研究者 建築家 経済学者 他にも影響を及ぼした分野は多い」
「凄いわね ・・・何か盛りすぎな気もするけど」
「じゃあ コドリン本人を探せば精霊さんがいるかの確認ができるってことですね」
「いいや 残念ながら彼は逝去されている」
「そうなんですか・・・ ご存命なら本人に直接聞けばいい話ですもんね」
どんな偉人でも亡くなるものなんだな。冒険者は死と隣り合わせだけど、だからこそ彼等の半生はどのようなものだったのかが気になる。
彼は満足して逝けたのだろうか。僕達に生きる足跡を残してくれた人物だからこそ強くそう願う。
「まぁあれだ 人は困ったり理解できないことがあると神秘とか呪いとか 何かと超常的なことのせいにしがちだけど それだと思考が止まってしまう
例え人知を超える現象だとしてもそれには必ず理由があって 大切なのは起きている事象の1つ1つ手探ることなんだ そうすれば別の角度から見えてくることもある」
ファムエル教諭の言葉は上手に生きる上での大切な考え方を言ってるんだと思う。理解不能な1つの物事も俯瞰すると意外な解決策が目端に写ったり。客観的に捉えることで柔軟に対処できたりと、これはこれで先達からの重要な意見だろう。
でも僕等の抱える問題は“精霊さん”と直接関わる『鍵』となってしまったことで、これを話してもきっと協力はしてくれるだろうけど、それはあくまで研究の対象であり超常的事例を人の思考レベルまで落とし込む学問では到達するかが疑わしい。
やっぱり『予見の目』に従って直接現地に行くしかないか・・・
それでも彼の助言がヒントになったのか僕の中にフト浮かんだものがあった。
ファムエル教諭との話を終えた僕達は宿舎の一室に集まった。そこで今後の予定と教諭の話の考察をしてみることにする。その際僕の頭に浮かんだ「ある違い」を思いきって話してみることにした。
「ねぇミストリア もしかして『鍵』を2つ持ってたりしない?」
〔え・・・それは 分からないわ でも何と無く予感はあると言うか でもハッキリしないと言うか そもそも形なんて無いのだし〕
「どう言うこと?」
「うん あくまで仮説なんだけど 盲目の僕は人の内面を色で見分けられるんだ それに対してミストリアは言葉で事象を変えてしまう それは失語さんのスキルだと思う
だったら人やモンスターの思考まで聞き取れるスキルって誰のスキル? それたぶん難聴さんのスキルなんじゃないかなって」
「ちょ ちょっと待って 何で別のスキルさんのスキルが使えるようになるのよ」
「あくまで仮説だよ ちゃんとした理由があるわけじゃないんだ ただ何と無くそう思っただけ」
〔そう そうよね 考えてみたらそうだわ 今まで疑いもしなかったけど 言われてみたら変よ 失語さん 何か分かる?〕
『〔それはミスティーの思いがスキルの形になったからだと思うよ? あるショックがミスティーの心を閉ざして 周りの人から聞くことも話すことも拒んだ そこでたまたま出会ったのがボクだっただけ 出会いが違えば難聴さんとも契約できたんじゃないかな〕』
「別にスキルさんをどうこう言うわけじゃないんだけど それだと日常生活すら儘ならなくなるんじゃないかしら いくらスキルがあったとしても・・・」
『〔そうかもしれないね でもボク達は誰かとパートナーになるのが当たり前に思われているけど その前にスキルと言う1つの存在でもあるんだ そしてボク達にはボク達なりの繋がりがある それはたぶん君達には理解の及ばないものかもしれない〕』
〔個人個人で性格も能力も違うのに スキルさん通しでケンカしるところなんて見たことないものね それを考えると人間通しの繋がりとは違うみたい〕
「確かに・・・」
「待て待て さっきから黙って話を聞いてたが『鍵』が何だとか意味が分からん 取り敢えず妹の予見の通りダンジョンに潜るってことでいいんだな?」
「そうなりますね 2人ともそれでいい?」
「構わないわよ と言うかそう言う話だったでしょ?」
〔そうね でも戦闘は期待しないでね ちょっと足下が覚束ないの〕
そうなると本格的なダンジョン対策の準備が必要となる。以前はペレディアと草モンスターと言う2体の喋るモンスターの戦力があったから順調に出口まで辿れた。
けれど今回だって冒険者3人に騎士団長の布陣だ。ちゃんと内部の道も覚えている。やってやれない筈がない。
「と言う訳で 冒険者ギルドの場所知ってたら教えてほしいんだ 後できればダンジョン潜るためのお店とか・・・ それでできたら一緒に来てもらえると心強いと言うか・・・」
昼食時、僕は情報通かもしれない現地の若人である見知った学生達に声をかけた。そしてあわよくば案内してもらおうと言う算段でもある。
木を隠すなら森の中。似た背丈の人達に紛れてしまえば僕等が変に注目されるされることもないと、後ろ指指される環境から学んだこれも処世術だ。
後できれば軽く観光なんかもしてみたい。
「お いいねぇ 冒険者ギルドか 場所は知ってるぜ」
「俺も付いてっていい? こんなことでもないと冒険者ギルドなんて行くことないからさ」
「あ 私もー」
そんなノリで決定した王都冒険者ギルド行きは彼等の授業終了後の放課後に複数人で纏まって向かうこととなった。ついでに彼等の買い物もあるとのことなので、都ならではの商品に触れる機会でもある。
僕はともかくマルティナには良い刺激になるかもしれない。
「え? そんな制度があるの?」
「制度と言っても強制ってわけでもない ただ王都ダンジョンって広いからたまに行方不明者が出る そうなった時のために事前に捜索の依頼を出しておくんだ 決まった日数を越えた場合 捜索専門のチームがダンジョンに入るって仕組みだ」
「へぇ~ ハルメリーにはないね」
放課後になってギルドに向かう最中、話を聞いて飛び入り参加したロダリオに王都のギルドのあれこれについて教えてもらった。貴族なんだからダンジョンとは縁遠いと思われがちだけど、彼は自己研鑽のため仲間と集ってダンジョンに潜る努力家だ。
それにあの時彼と出会わなければコルトア達はずっと奴隷のままだったかもしれない。偶然と彼の人柄に感謝。
「登録にはそれなりの額とられるが 予定通りに戻れば全額ではないにせよ お金もちゃんと戻ってくるからな」
「面白い制度ね 何でハルメリーで普及しないんだろ」
〔冒険と言うより資源採掘がメインだからじゃない? 掘るのは採掘師だし それを護衛するのが冒険者 決められたルーティンを熟すだけだから 制度を作る必要性がないのよ〕
「冒険者ってなんだろうね・・・」
王都の冒険者ギルドの戸を開く。その瞬間「ドッ」と押し寄せる人のざわめきがあった。時刻は夕刻。仕事から戻ってきた冒険者達なのか、それともこれが平時なのか。音の感触からも伝わる。
広っ! 人多っ!
「凄い・・・ハルメリーと全然違うわ」
〔圧巻ね〕
「冒険者ギルド初めて来たけどマジ凄いな」
「うわ 強そ・・・」
「歴戦の強者揃いって感じね」
「おいあの女の冒険者 露出すごっ」
「でも普通そうな人も多くない?」
「ここに集まるのは何も冒険者達だけじゃないんだ 何せ複合ダンジョンだからな その手の専門家なんかもギルドと繋がってる」
館内ホールは3階まで吹き抜けになってるらしく、上の方まで人を表す色が見えている。ここだけ見ても僕には1つの町のように感じだ。
これが王都。町や街ではない。王都と銘打たれるだけあって他との格の違いを思い知らされた。
「受付はこっちだ」
ロダリオの案内で受付カウンターへ。ハルメリーではここでポリアンナさんの応対となる。場所が違うのだから当然別の女性だったけど他ギルドに慣れてるわけではないので何だか変な感じがする。
慣れって怖い。
「あら? アネットさん・・・? 貴方がアネットさんですか? ハルメリーの?」
登録のために名前を書いてギルド証を見せたところで受付の女性は僕の名前を見て驚く。何だろう初対面の筈だけど?
彼女は何を思ったのか手元の書類をパラパラしてこう言った。
「アネットさんに会いたいと仰る方がいるのですが」
・・・はい? 僕に? 馴染みのない王都で? いったい誰だろう。心当たりは全くない。もしかして・・・
「あの その人 僕と決闘したいとか そう言うんじゃないですよね?」
「いえ違いますよ 当ギルドの冒険者チーム 深淵の担い手のリーダー バルブリック様が 貴方に興味をお持ちみたいです」
え・・・誰。




