↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルさんが意思を持った世界で盲目の少年は冒険を夢見る  作者: 猫かるちゃー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

397/426

397・終着点

前回のあらすじ


アズリに従って町中を逃げ隠れするアネットは道中ルミウスと遭遇する。話を聞くとどうやら誰かに追われてるらしい事を知るアネットだったが隠れるよりアズリの意思を尊重したアネットは引き続き町中を行くのだった。

 まだまだ逃走は終わらない。と言うより人混みの中を走ってるこの状況は、隠さなければならない自身の身を晒してるのと同じなので、自ら危機的状況に安否を投じてるとさえ言えなくもない。


 アズリの「相変わらず」はもう自分でも何をしてるのかグチャグチャになってるんじゃないかとさえ思えるくらい心は形を崩している。


 でもこうして人の錯乱状態を端から見ていると不思議と冷静になるもので、僕は後ろから追ってくる人達のある変化に気が付いた。



「おいアイツだ! ほらっ ア・・ア アミット?」

「違う! アメット・・? いや 違うか?」

「んなんどうでもいい! アネ・・ア ア っ・・・ほらあのちっこい・・・ 兎に角! アイツを追え!」

「アイツってどれだよ! 沢山いるぞ!」

「ああクソ! いいから俺に付いて来い!」



 そう。追っ手の言動に変化が起き始めているのだ。「それ」「あれ」「そいつ」どれも僕を指した言葉だけど定まらない。


 一言で言えば主語がないんだ。


 そしてその相手にはアズリの“失語さん”から出る色付いた鱗粉が降り掛かってる人達全員に見られる共通点でもある。


 これは想像だけど、嫌な事から逃げたいアズリが、自分に向けられる人の意識を曖昧にする為に発現したスキルなんじゃないかなって・・・ う~んアズリらしい。


 そしてもう1つの問題。


 僕もある方ではないけれど、普段どんな事をして過ごしてるのか分からないアズリにも体力の限界がある点だ。


 彼女にとってのゴールに辿り着けたのか道半ばで終わってしまうのか、残念ながら大通りの往来の真ん中で彼女のその足は走るのを止めてしまった。



「アズリ 大丈夫?」


「・・・・・・」



 直接答えは返ってこないけど感情による返答もない。どうやら本当に限界のようだ。



「はぁはぁ やっと止まったか お前 あの ・・・アイツだな! スプリントノーゼの闘技場で戦った!」



 やっぱりスプリントノーゼ関連の人達らしい。あまり良い人達とは言い難い面々が闊歩する街スプリントノーゼ。悪漢にも似た心情の彼等が複数で僕達2人を取り囲む。


 そして時間が進むにつれて続々と僕達の周囲に彼等の仲間が集まってきた。どれくらいかって言うと町中に僕の噂を短時間で広められる程の人数。


 これが僕の抱える問題の解決になるんだろうか。それとも人生終わって解決・・・なんて落ちじゃないよね?



「あなた達はブランディーゴファミリーの人達なんですか? それとも貴族の・・・ どうして僕を追うんですっ」


「あいにくファミリーでも貴族でもねぇ 俺達は名前を売る為にお前を探してたんだ」


「名前を・・・分かりませんね 僕を探してどうしてそれが名前を売る事に繋がるんです?」


「分からねぇか? 単純な話だ お前はあの街の闘技場でベネデット・ブランディーゴって言うネームバリューを倒した だから俺達がお前を倒す な? 単純だろ?」


「・・・僕は 盲目ですよ? 世間ではマイナス等級って言われてる そんな相手を倒したからってあなた方の自慢になるとも思えませんが」


「あぁ 自慢するつもりはねぇ だが何もしなくても功績なんざ周りが勝手に評価するもんだろ? そして何もしなくても自然と力と金と高みに登るチャンスが集まる こんな旨い話 逃す方がどうかしている」


「・・・噂は 怖いですよ? あなたの言う通り望まなくても自然と力が集まる 例えば今の僕みたいに そして明日のあなたかもしれない」


「かもな だが俺とお前の決定的な違いは お前は一身でそれを浴びちまったってところだ」


「なる程 あなた・・あなた達はやっぱり何かの組織って訳ですか」


「ま そう言う事だ お前は俺達と立ち合ってもらう 証人が大勢いるこの中でな もちろん俺等が勝つまでだ 絶対に逃がさねぇぜ」



 公衆の面前だと言うのに躊躇なく剣を抜き放つ彼。その瞬間周りから「抜きやがった」「キャー」等々の声が上がる。やっぱり気遣いのできる人達ではなかったみたいだ。


 これは僕も覚悟を決めなくちゃダメかもしれない「場所を変えよう」と提案しても聞いてはくれなさそうだし。








「待てっ!!!」



 僕が剣に手をかけようとした瞬間、聞き覚えのある女性の大声がざわめく大通りを支配した。何事かとその声量に皆の意識が流れていく。



「貴様等 往来の真ん中で何をしている!」



 エルヴィラさん。彼女だけじゃない。その後ろには幾人もの騎士達の足音が連なっていた。



「おいおい待ってくれ騎士さん達 これはちょっと大袈裟だぜ 俺達はただそいつと話をしてただけだ なぁ?」


「抜き身の剣を放っておいて何が話だ しかもこんな大勢で囲うような真似をして 騎士団にも苦情が来ていたぞ!」


「そりゃ悪かったよ だけど逃げられちゃ追うしかないだろ? でなきゃ話もできやしねぇ」


「それは一理あるな だがお前等の風体の輩に大勢で追われれば普通の感性の持ち主なら逃げるのは当たり前だ 話がしたければやり方など幾らでもあっただろう その言い訳ともども気に食わないな」


「かもしれねぇ 冒険者ギルドでも随分トゲのある視線に晒されたしな だが話し合いなんてものはよぉ それこそ何処ででもできるんだぜ? 例えは仕事中も 飯食ってる時も 帰宅中も そいつの家の中だってなぁ


 ヘヘヘ こっちはあんた等騎士団がいてもらっても一向に構わないんだ 何せ俺達がそいつに勝ったって事実の 信憑性が上がるだけだからなぁ」


「そうか 話し合いがしたいのなら私もまぜてもらおうか」


「おいおいおい そんな見え透いた脅しが通用すると思ってるのか? こっちは善良な一般国民だぜ? まだ何もしてねぇ俺等に口出しするのはよくねぇなぁ~ 騎士団なら騎士団らしい理由がなくっちゃよ? そいつは只の職権乱用だ~」



 国に遣える騎士団相手にこの言い様。随分と口が達者なようだ。スプリントノーゼでもそんな調子で世渡りしてきたに違いない。それでも組織として成立してきた訳だから軽く見てはいけないのだろう。


 でもそんな軽薄な態度が彼女の沸点に怒りを押し上げたのか「やる気」になろうとしたその瞬間。彼女等の頭上に色のある何かが湧きだした。


 それはどんどん大きくなっていくと終いには騎士団の頭上に落ちてくる。


 バシャーーーー・・・・!


 それは水だった。色の着いた僕の目にも見える大量の水。



「うおっ!」

「何だ・・」

「水!? いったい何処からっ」


「・・・これは あれか? お前等の 我々に対する攻撃か?」


「へ? 何言って・・・ハッ! 違う! 俺等じゃねぇよ!」


「総員! 抜剣っ!!」

「「「「ハッ!!」」」」


「ちょまっ!!」

「違ぇって! ホントに俺等じゃねぇって!」



 正に水を得た魚のように生き生きと動く騎士団員達。追っ手の人達も本物の騎士団まで敵に回すつもりじゃなかったのか急な展開に四苦八苦アワアワするしかなく、戦ってよいものか逃げるべきなのかで統制がとれず、町を騒がせた集団は数の割りに呆気なく捕縛されていった。



「アネット!」


「マルティナ! それに・・・ミストリア」



 騎士団に水をぶっかけ強行に走らせない、かつ面子を潰さない動機付け。それを体よく利用するエルヴィラさんのファインプレー。流石だ。


 でも何にせよ先ずは助かった。



「ミストリア もう平気なの?」


〔お陰さまで ちょっと寝過ぎてしまったみたいだけど〕


「寝過ぎなんてものじゃないわよ こっちは本気で心配のし通しだったんだからね!」


「でも2人ともどうしてここに?」


「ルミウスが家に来たのよ それで事情を説明されて で ミストリアまで同時に起きて 大変だったんだから しかも寝起きで自分も行くってきかないの! 強情にも程があるわっ」


「そんな事が・・・ 2人ともありがとう ルミウスにもお礼言わなくちゃね アズリ・・・ そうだアズリは大丈夫? もしかして君の言ってた解決への道って・・・ アズリ? アズリ大丈夫? 何か 様子が変だよ?」



 問題は解決された筈なのにアズリの感情は過呼吸を起こしながら、より良くないものへと変わってしまっている。まるで世界の終わりでも見たような死を間近にしたような。


 そんな絶望にも似た感情が彼女を支配していた。そしてアズリの全ての意識は何故かミストリア一身に強く向けられている。


 もしかしてミストリアにも不安の原因が? それとも僕を取り巻く問題はまだ終わりを迎えてないのだろうか・・・





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。