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スキルさんが意思を持った世界で盲目の少年は冒険を夢見る  作者: 猫かるちゃー


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388/426

388・ルディアの源泉

前回のあらすじ


牢屋に捕らえられたアネット達の元にやって来たルディアは一行と会話を交わす。そこで突き付けたのはアネットとベネデット・ブランディーゴとの一騎討ちだった。

 ルディアと言う名の貴族の発した言葉はきっと覆らないんだろう。正直言うと貴族の何たるかなんて分からないけど、ここまで自信に裏打ちされた言動は本当に力を得なければできないように思う。


 僕達とはほぼ同い年なのにこの歴然とした差は何なのか。権力ってそこまで凄まじいものなのかな。


 そんな彼女は言いたい事を言うだけ言って、この淀んだ牢獄から立ち去っていった。残された僕達の中には蟠りだけが残る。拒絶が許されないこの環境こそ不自由と言うのだろう。


 逃れたい・・・



「何なのよアイツ!」


「首の皮一枚繋がったと見るべきなんかな」

「頭が体とおさらばしないだけマシかもだけどよ 首に鎖は確実だろうな」


「納得いかねぇぜ 結局金と権力持ってる奴が勝つ仕組みかよ」


「この国にだって法律はあるわっ」


「その法破ったの俺等だけどな」


「う・・・」



 ど正論。しかも街のあちこちに迷惑を描けたのは事実で罪は贖って然るべき。但し釈然とはしない。


 う~ん・・・度し難い。



「何とか仕返しできねぇかな」

「こっから出された時にでも暴れるか?」


「よせよせ どうせ手枷は嵌められんだ 暴れるだけ手を痛める それよか何であの嬢ちゃんはアネットに固執するんだ?」


「きっとアネットが可愛いからだわ 狙ってるのよっ」


〔それは分かるけど ふざけてる場合でもないわ〕



 彼女が僕に固執する理由は1つしかない。それは“精霊さん”だ。でもここでそれを明かしても平気だろうか。とは言え訊かれた以上応えなきゃ話は進まない。


 8人集まれば何とやら。もしかしたら何か対策を練れるかもしれないし。



「・・・ルディアは 精霊さんを信じてるんです」


「は? マジかよ」

「おとぎ話信じてんのか? マジで?」

「貴族の考える事は分かんねぇな」



 まぁそうだよね。寝物語とかの話だし普通は信じない。でもジョストンさんは“盲目さん”の発言から“精霊さん”の存在を認めてる。


 本当に信じてるかは別として現状を何とかしたい観点からいたって真面目だ。



「どうしてそう思うようになったんだ? ただ単純に見付けたいとか思ってんならアネットが出てくる筈もねぇ お前何かしたか?」


「僕が と言うより 魔物さんを連れた女の子が精霊さんを探してたからなんです ルディアはその子に拐われて それで影響を受けて・・・その 精霊さんに会う為に僕が必要だって・・・」


「・・・それを本気にした訳か」


「みたいです・・・」


「バカバカしい 貴族の道楽に付き合わされたって訳か」

「まぁでもそのお陰で延命してんのも確かだけどな」


「まぁ貴族の考える事なんか俺等が想像したところで理解は追い付かねぇ で? 勝てるのか その戦う相手ってのに」


「分かりません 以前みんなで一度戦った事があるんですけど その時は勝負がつきませんでした」


「てか押されてたよな実際 1対複数だったのに」

「ああ 格闘家ってみんなあんななんかな」


〔魔法も弾かれたわ アネットのスキルも消されていたし〕


「力もそうだけど動きも速かったわね 体の使い方が上手いのかしら」


「はぁ~ そんなのが相手か ・・・あの嬢ちゃんはアネットにご執心なんだよな? だったら負けても手心を加えてくれるかもしれない 今はそれに期待しよう」



 複数相手に一歩も引かない実力の持ち主だ。下手なスキルは悪手だし『ダークビジョン』対策もしてくるだろう。それでもまだスキルのストックがあるとは言え、相手は遥か格上。


「もしかしたら助かるかも」なんて甘い考えは捨てないと速攻で地面に叩き付けられそうだ。


 でも・・・



「あの・・・僕が負ける前提ですか?」



 ★



 ガヤガヤガヤ・・・ザワザワザワ・・・


 私の眼下には殺戮を楽しむ連中の下劣な騒めきが闘技場狭しと埋め尽くしている。何がそんなに嬉しいのか獲物の登場を今か今かとよだれを滴し、期待に胸を膨らませながら待っているのが理解に苦しい。


 何せ「物珍しいスキルの使えるマイナス等級」と言う触れ込みで、アネットがなぶられるのを嘲笑う余興としてこの場はセッティングされているのだから。


 まるで珍獣でも見に来たかような闘技場の雰囲気は、これから行われるのが人と人と真剣勝負などではなく、一方的ななぶり殺しの場と思ってるに違いない。


 ここは闘技場の上部にある貴賓席。


 ルディアは約束通りアネット以外の私達全員を特等席に招待し、これ見よがしに処刑を見せ付ける魂胆だ。


 まったく悪趣味ここに極まれりね。



「見てごらんなさい これだけの人が催しに集まったわ ・・・圧巻よね これが今の私よ どう? 凄いでしょう」


〔人が傷付くのを見て喜ぶ連中がこれだけ街にいたと言うだけの話だわ 寧ろ嘆くべきよ もっと別の事で人を惹き付けられないの?〕


「傷付くわね 私はただ需要を満たしただけなのに でもこれが人の本質だからしょうがないんじゃない? 自分にできない事をやってくれる人に畏敬の念を抱いたり 叩かれる人を見て全能感に浸ったり


 心の形は人それぞれだけど 心の隙間を埋める事ができたのだから事業としては成功よね」

『生来の善と悪なんて アタチに言わせればそんなもの人によるのよね 問題は成長と共に人生の過程が紡がれて人格が形成されてく点


 ここに集まる人達も 彼等なりの集約がこの手の趣向を娯楽に転嫁させてるだけで そこを指摘しても意味はないの パンが好きかパスタが好きかと同じ事』


〔なる程 染み付いた感性は変わらないと言いたい訳 さすが貴女のスキルさんね〕


「ありがとう 私は人の運命って生まれ持った時から決められてると思うクチなの ねぇ思いでして 学園に入学した当初は皆仲良かったのに 同じ学舎で過ごしてく内に不思議と繋がりが固定化されていくでしょ? でもそれが自然なんだと思う 結局は同じステータスを持つもの通しで纏まるのよ 


 だけど教師は表面上平等だとか言う けど本当は平等じゃないから 平等 だなんて口頭で発言するしかないの 真実を嘘ってヴェールで隠すだなんて学園もずいぶん残酷よね」


〔そうね 確かに立場や能力の差で周りにいる人間は変わるわ でも学園が貴族だけじゃなく平民も受け入れてるのかを考えれば 共通の認識を持たせる事で意識の解離を防いでると思わない? つまり分裂を生まない為の教育の一環よ〕


「だったらこの催しは成功ね だって貴族が主催したものに平民が嬉々として群がっているのだもの これこそ共通認識 意識の平等じゃない」


〔だったらそれを弱者にも向けたらどう? たったそれだけの事よ それだけで貴女も変われるわ〕


「それってタダで施せって事? こっちとしても見返りがなくちゃ ねぇ~」


〔そう言う事を言いたいんじゃないわ・・・ 単に気持ちの問題よ〕



 法を執行できる権力も人を動かす財力もあるのに、自己利益を優先するから平民との軋轢が生まれるのよ。良くなりたいと言う意識をほんの少しでも彼等に分けてあげられたら見える景色も変わるでしょうに。



「「「おおぉぉ・・・」」」



 闘技場に対戦者2人が入場した事で騒めきが響動(どよ)めきへと変わる。元々身長の高くないアネットが対戦相手と並ぶとどうしても公開処刑される子供のように写ってしまう。


 今直ぐにでも助けてあげたいけど、私達の手足には枷が嵌められ身動きがとれない。本当に悪趣味だわ。



「おい 始まったぞ」

「・・・ん? マイナス等級って 相手まだガキじゃねぇか」

「こりゃ 一方的にやられて終わるな」

「で 相手の男 ありゃ誰だ? ここじゃ見かけねぇな」

「お前ベネデット・ブランディーゴ知らねぇの?」

「ブランディーゴって・・・あのブランディーゴファミリーか? 俺初めて見たわ」

「以前はここにも出てたんだがなぁ 組織が纏まりはじめてからは姿を見せなくなったんだ」

「ほ~ん で? 強いの?」

「腕っぷし1つでこの街をのし上がったんだ 強くない訳ないだろ」



 私の耳に届く観衆の声は、アネットを只のマイナス等級としか捉えてない。彼等は決闘を見に来たんじゃない。本当に弱者がいたぶられる様を楽しむ為に集まったんだ。


 正に類は友を呼ぶよね。



〔ほんと この場所は貴女に相応しいわね ・・・ところで アネットが勝った場合と負けた場合を訊きたいのだけど〕


「前も話したけど 私はアネットに期待を寄せてるわ 彼が特別なら負ける筈がないもの もし負けるようなら・・・本物じゃなかったって事ね その時の判断は観衆に任せるわ


 でも勝った時は私のものよ 魔物さんなんて化け物が彼を欲しがるんですもの 絶対に何かある 絶対に手放さないわ」


〔盲信し過ぎよ マイナス等級でスキルを使えると言う条件なら私も満たしてるし 他にも数人知ってるわ 自分の事ばかりじゃなくてもう少し周りを見たらどう?〕


「何を言ってるの 私があの子のところで何を見たか分かる? あの絶対的な絶望が 暴力がっ 多くの命を奪うのをこの目で見たわっ!


 ・・・誰も抗えない ただ無慈悲に理不尽に食べられるだけ そこに人の尊厳なんてものはなかったわ 力自慢も組織も 皿に盛られた料理と同じ 私はそこで給仕をやらされたわ 食事の準備に後片付け どんなものを見させられたか想像できる? できないでしょう


 私はもう十分耐えたわ だから褒美があってもいいじゃない あの災害が残したアネットが特別でない筈ないのよっ!」



 ああ・・そうか。この子の源泉が分かった。自分が不幸にあったから救われて当然と思いたいのね。


 でもだからってアネットは貴女になんてあげないわ。





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