382・グループセラピー
前回のあらすじ
集落に馴染んできたアネットはふと賭け事に没頭する人達に気付く。この現状を何とかしようと決意するアネットと話を聞いたユシュタファは行動に移す為動く事にした。
「─────俺はシャーディア ギャンブルは友人に声を掛けられてからだな それが切っ掛けでハマるようになったんだ 負けた時は落ち込みもしたけれど 大勝する時だってあるんだ だから次こそイケるかもって・・・ それの繰り返しだ」
「私はディジュラ 私はハマったって言うより抜け出せなくなった感じ 借金があってさ それをギャンブルで取り替えそうと思ってね だってアーキア人ってだけで雇ってくれる所無くってさ 戦えるスキルさんでもないし冒険者も無理だから・・・」
「イクバールだ 俺は身を持ち崩してる訳じゃないけど 気付けば賭け事に走ってる 他に面白い事が無いからだ ・・・いや あるんだろうけど もう面白いとは思えなくなった みんな負けて落ち込むって言うけれど俺には刺激になっている でも奴隷から解放されてやれる事も増えた そろそろ卒業したい」
「名前はサーディー 俺は純粋に楽しいって思うから続けてるだけなんだけど 自分このままでもいいのかなって思い始めたら不安になっちゃって その不安を払拭しようと思ったらまたギャンブルやってんだ ・・・抜け出す切っ掛けが欲しい」
僕達は今何をしてるかと言うとミストリア提案のグループセラピーなるものを試している。
何でも同じ境遇同じ不幸を背負う者通しが話し合う事で不安が解消されるんだとか。効果があるのかは分からないけど、取り敢えずこうして4人が集まってくれた。
「なぁ この話し合いに何か意味あるのか? こんなんで抜け出せるとは思えないんだが」
〔私が学園にいた頃に反省会と言うものが開かれていました そこでは同じ失敗をした人が集まって何故失敗をしたのかを順に発言していくのです〕
彼女の話によれば「自分だけではない安心感」や「皆で話す事で気付きを得る」事が重要で話の最中決して否定しない事が話しやすい環境を作るんだとか。
それに関しては一定の効果があったのか皆思いの丈をこのセラピーで吐き出してくれた。
〔皆さんは現状を何とかしたい同じ悩みを抱えている それがもっとも重要です 私や周りの誰かではなく 同じ悩みを抱える人通しだから通じるものがある 他者の悩みを聞く事で俯瞰して自分の抱える問題を見る事ができる だから説得力も違うのです〕
「あ それ分かるわ 他人に何か言われても軽いなって思うのはそれね」
「そうそう お前はそんなに偉いんかってな」
「だけどさ 仮にギャンブルから足を洗えたって結局やりたい事とかやれる事とか見付かんなかったら また同じ事繰り返すだけだと思うんだけど 俺みたいに・・・」
こう言うのを依存って言うんだろう。よく意思が弱いと言われがちだけど、ストレスとか心理的な問題が絡み合って安易な報酬に意識が向いてしまうのが原因・・・だったかな?
でもそうなると彼等の言う「アーキア人だから」がやっぱり根幹になってしまう。
〔直ぐに何かが変わる訳ではありません しかし皆さんはグループです 集まって話し合って 少しづつ賭け事から距離を置くように意識するのが肝要です〕
「そうですよ もう奴隷じゃないんですから街から出ていく選択肢だってあるんです」
「・・・どうだかな 俺は他の町で受け入れられなかったからここに来たんだ 今さら出てっても上手くやれるイメージ湧かないな」
「俺は欲望の街って触れ込みに釣られてやって来た口だから いきなり外に出されても たぶん退屈になるんじゃないかな んで戻ると」
「私はとっとと抜け出したい でも皆の言うように外でやってける自信がないわ」
「他の奴等も言ってたけど アーキア人は何処でも歓迎されない感じだよな 同じ国の人間なのによ」
「あ~ 外が不安って部分は皆共通な感じなのね」
以前の彼等がどんな関係だったかは分からないけど、こうして話してみると共感と言う部分で4人とも同じ色になっている。
これを切っ掛けに他人じゃない繋がりになれば協力して賭け事から離れられるんじゃないかな。
後はこの輪を広げていく事と、集落以外の仕事や趣味を見付ける事。そうなれば少しづつでも賭場に目がいく事もなくなるかもしれない。
その中で「自分達で出来る事」が見付かれば、それが自立になるんだと思う。
★
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・ 走るだけ・・森の中を真っ直ぐ走るだけ・・・」
「おい落ち着け そんなガチガチに緊張してちゃ躓いて転ぶぞ」
「ユシュタファ・・だっけ お前は平気なのか? モンスターに追われるんだぞ・・・」
「冒険者だからな もっと大量のモンスターに追われた事もある」
「マジかよ・・・」
「怖いんだったら何でまたこの仕事選んだんだ? 別のにしときゃいいじゃねぇか」
「・・・まぁそうなんだけど せっかく戦士さん選んだんだから 今度は逃げずに向き合おうと思ってさ ・・・怖いけど」
「俺達の目的はモンスターを檻ヘ誘導する事 せいぜい1・2匹だ スッ転んでも俺が助けてやるから安心して走れ」
「あ あぁ・・・」
アネットのやつの話に乗るなんて事つい言っちまったけど・・・何やってんだかな。現状を変えられるなら何でもいいとは思ってたが・・・
“戦士さん”連れたコイツ俺より年上でモンスターに追い回される事にビビってやがる。
いったいどんな育ちかたしたらこんな戦士が出来上がるんだ? 明らかスキルさんの選択ミスじゃねぇか。
まぁ本人がやると言ったんだから無下にはしねぇが。この中で見込みのあるヤツは本当に居るんかな・・怪しくなってきたぜ。
「・・・ん? そろそろ時間みたいだぞ」
「え そう?」
「目じゃなく こう言う時は耳使え耳」
・・・カサ・・・ ・・・カサカサ・・
ガサガサ・・・ガサガサガサガサ・・ドドド・・・
「! おい嘘だろ・・・」
「何? 何っ!?」
「逃げるぞ! 1匹や2匹の音じゃねぇ! もっといる!」
「え? え?」
「いいから走れっ!」
くそが! 前の連中しくじりやがって! こっちに近付いて来るって事は誘引剤が移動してるって事だ。走者は無事だが檻に全部は入らねぇ。数を減らす為には戦って数を減らすか薬を捨てるか・・・
「テメェ等! 何やってる!!」
「すまん! しくった! ルートの近くにモンスターの群れがいたんだ!! そいつ等まで誘っちまった!!」
「誘引剤を捨てろっ! そうすりゃ連中そっちに行く!」
「とっくに捨てた! でも 追ってくるんだ!!」
「・・! そう言う・・・! 兎に角逃げて他の連中と合流だ! 全員で叩くか街の中に逃げ込むぞ!!」
「ああ!!」
効果を薄めたのが裏目に出たか。お陰で腹を空かせたモンスターの前に新鮮な肉をチラつかせちまった。冬場は餌が減る。そりゃ必死に追い掛ける訳だ。
今回は只逃げるだけと思って剣しか持ってきてねぇ。何もかもがツイてねぇなクソがよ!
「おい! 前の連中!! 逃げろ!! モンスターの群れだ!! 食われるぞ!!」
「は? 群れ? どう言う・・・ う うわああぁぁ!!」
足場の悪い獣道に加えて街までそれなりにある・・・こいつ等でもつか? 最悪俺だけでも・・・
ドサッ!
「うわっ! 痛ぇ!」
「おい何やってる! さっさと立て! 追い付かれるぞ!」
「待って! 枝が服に! ・・くそ! とれろ! とれろよ!!」
「~~~~! 良いから とっとと立って逃げろ・・・」
「お お前は・・!?」
「どの道このままじゃ追い付かれるんだ だったら 誰かがやるしかねぇだろ」
「・・す すまない・・・っ」
あ~あ・・・俺にもバカが移ったか? 見捨てりゃいいのに。ホント・・・何やってんだ俺。
シャッ・・・!
ガサガサガサガサ・・・
「ガルルルルルルル・・・」
「おうおう 大所帯じゃねぇか そいつ等全員家族か?」
ざっと見ただけで10匹以上か・・・藪の中にもっといそうだな。これ生きて帰れっかな。それとも木の上に逃げるか。
こんな事ならウェグナスに言いたい事言っときゃよかったぜ──────
「スラッシュ!!」
「ギャン!」
「!?」
「こっちだ! かなりの数いるぞ! 即席だが前衛後衛4・5人で組め!」
「気を付けてっ 藪の中に20匹は隠れてるっ」
「そっちは狩人に任せな! カルメン全体を把握しときなよ!」
「う うん!」
「っしゃ! かかって来いや!!」
何だ・・? 冒険者か?
「おう お前がユシュタファか? 武器色々こさえてるって聞いてたんだが」
「今は剣しか持ってねぇよ それよりあんたどっかで・・・」
「ハルメリーの冒険者のジョストンだ ミストリア嬢ちゃんから伝書を預かってな 大まかだがお前等の事情は把握している 詳しく話を聞きたいとこだが まずはモンスターの駆除が先だ いけるか?」
「当たり前だっ」




