37・貴族街での出会い
前回のあらすじ
アネットがギルドに行くと大通りにはすし詰め状態の人混みができていた。貴族の御触れで金貨600枚で異変の調査をせよと言う。一方話に乗らなかったアネットはジョストン等と共にコドリン洞穴に行くが、そこでも異変が起きていた。
コドリン洞穴からは「それ」を目撃した以外これといったトラブルも無く帰還する事ができた。
「おい ギルド長は居るかっ」
「え? ジョストンさん?」
異様な事態に僕達は採掘師達を連れ立ってギルドに戻ってきた。ベテラン冒険者でもあの光景は無視できるものではないらしく、カウンターのポリアンナさんに詰め寄った。
「ちょ・・・何かあったんですか? と 取り敢えず応接室に・・・ 今ギルド長呼んできますんで」
只ならない僕等の雰囲気に飲まれたポリアンナさんは慌てた様子でランドルフさんを呼びに駆けていく。報告、連絡、相談の義務はこれで果たせるだろう。
ひとまず一段落と言ったところか。
「どうしたい そんな慌てて」
応接室で待機していると報告を受けたランドルフさんが然程時間も開けずにやって来た。今朝の出来事に警戒してたのか彼も彼で神妙な色になっている。
「じじい 洞穴の様子がいつもと違う・・・変な奴を見た」
「変なヤツ? いまいち要領を得んな それはモンスターか?」
「正直分からねぇ・・・ 外見は人間の女で 革製の軽装 腰にはナイフを装備してた 俺も最初は冒険者かと思ったが・・・ そいつには獣の耳と尻尾が生えてやがった」
「・・・見間違い 装備がそう見えただけじゃないのか?」
「んん・・どうだかな ただ そいつが採掘師達の中に紛れるまで俺等全員そいつの存在に気付けなかった」
「ほう お主でもか・・・ ちなみに それは誰かに似ていた と言う事はなかったかの?」
「はぁ? ・・・分かる訳ねぇだろそんなもん!」
「あのランドルフさん 何故知っているかではなく 似ているか と聞くのです?」
「ん ん~・・・」
「おいおい もしかしたら今起きてる状況に関係してるかもしれないんだぞ? 何か知ってんなら冒険者に情報を開示すべきなんじゃねぇのか!?」
僕達に聞いておきながら彼は言いにくい事でもあるのかゴニョゴニョしている。でもこれ気まずい時の人特有の色なんだよね。絶対何か隠してるやつだ。
バツが悪そうにしているランドルフさんに変わって、隣で待機していたポリアンナさんは口に出しづらそうにしながらも説明してくれた。
「あのですねジョストンさん その事に関しては過去何件か報告が入っているんです ・・・ですがその どれも曖昧な目撃情報で要領を得なくて
それに被害が出たと言う報告もありませんでしたので 取り敢えずは静観と言う形で調査する事はありませんでした
ただその容姿があまりにも人に似た外見である事から あくまで憶測と・・して・・ですが その・・・そう言う事・・・なのではと・・・」
「・・・は? 何だよそう言う事って ちゃんと説明してくれないと分からないぜ」
「ですから・・・その 人間と・・モンスターとの間に産まれた子供なんじゃないかって・・事 です」
「は?」
「洞穴に潜った冒険者パーティーが未帰還になる事ってあるじゃないですか その内の女性はモンスターに捕まって その・・・無理やりそう言う事をされるんじゃないかって・・・ あくまで憶測! 噂ですからねっ!」
「あるのか? そんな事 人とモンスターだぞ あり得ねぇよ!」
「言っときますけど 私が出した結論じゃないですからね!」
「つ~か まぁ 実際に見ちまうとなぁ でもよくよく考えてみりゃ耳と尻尾なんざ 後からでもくっ付けられるもんなぁ やっぱイタズラか?」
「いえ・・・ 本物だと思います それに何と無くですけど 人じゃ無い気がしました」
「ま イタズラかどうかは兎も角やべぇ相手であったのは確かだな あれだけの手練れなら名前が知られてない方がおかしい
そいつのせいかは知らないが 洞穴の様子も変だったぜ? モンスターは出ねぇし 出たとしても怯えてどっか行っちまうしよ」
「洞穴も・・ となると悠長に事を構える訳にもいかなくなったな ギルドの前で演説ぶっこいたアホンダラにいよいよ説明を求めねばならなくなったわ」
「どうせ適当にモンスターを討伐させて危機は去ったとか口外するつもりだろう んなもんただの自演だよ 箔をつけて町の連中を囲い込む口実なんだろう」
「だとしても・・・ 木っ端貴族ならいざ知らず相手はそこそこの爵位じゃからな 無視する訳にもいかん ワシが出向くしかあるまいよ」
厄介事は向こうからやって来る。ギルド長も気苦労が絶えなそうだ。老骨に鞭うって僕達の為に動いてくれる彼に感謝を。
「だったらアネット連れてけよ」
「・・・え?」
「後はギルドが何とかしてくれる安心安心」と思っていたらジョストンさんは唐突に僕を崖から突き落とした。
「ん? 何故じゃ」
「アネット 今はこんな事態だ 自分の能力をみなまで言う必要はないが お前・・・ 普通の人間では見えないものが見えるだろ」
「!」
もしかして人の感情が見えてるのがバレた? 誰にも言ってはいない筈だけど・・・ でもどうして分かったんだろう。当てずっぽうとも思えない。
「その・・ どうしてそう思うのです?」
「以前手合わせした時だよ ただ耳が良いってだけじゃ説明つかない動きしてたからな それに今日だって 音の無い相手にキョロキョロ辺りを見回してたろ ありゃぁ まんま目で何かを探す仕草だぜ? お前らしくもない」
「う・・・確かに・・・そう・・ですね」
「しかしジョストン それが貴族との問答に役に立つかって話よ 小僧 どうなんじゃ?」
良かった・・・単純に何かが見える程度の認識だ。人の感情が色で見えてるなんて知られれば多分あちこちに引っ張り凧にされる。そしてトラブルに巻き込まれるのが目に見える・・・目は見えないけど。
「何か不信な点があれば気付けると思います 例えば嘘をついてるとか やましい点があるとか・・・」
「なるほど それは音か 見えない目で判断しとるのか・・・ まぁ無粋な詮索はせんのがワシ等の不文律じゃからの
良いだろう 今は少しでも情報が欲しい段階だ 腹黒貴族が素直に話すとも思えんし 小僧の力で少しでも何かを引き出せれば御の字じゃ」
いきなり巻き込まれて文句の1つも言いたいとこだけど、もしかしたら緊急事態になるかもしれないし、出し惜しんで被害が出ては僕も目覚めが悪い。
なので快くとはいかないもののギルドの手伝いをする事を承諾した。僕なんかの手が必要になる程、洞穴での出来事は彼等にインパクトがあったのだろう。
面倒事は兎も角としてダンジョンの秘密が詳らかになる。その一端を担えるのはちょっとワクワクする。
その貴族のお屋敷にはすぐに向かう事となった。相手は一応上級貴族なので失礼があってはならないとポリアンナさんに腕を引っ張られた。
どうやら着替えさせられるらしいのだけど「ごめんね~ アネット君のサイズだと 女性用しかないのよ~」とか言われた。
僕は今どんな格好をしているんだろう。太股から上がスースーするんだけど・・・
貴族のお屋敷がある貴族街まではランドルフさんと2人馬車で向かう事となった。資源採掘で賑わう町の近くには商人と馴染みの深い貴族達が別宅を構えていると聞いた事がある。
「小僧は貴族街に行くのは初めてか?」
「はい お屋敷が軒を連ねていると聞いた事はありますが 実際行くのは初めてです」
「まぁそうじゃろうな 普通の冒険者ならまず用のない場所じゃろ お前も洞穴に入るなら覚えておけ 貴族も資源獲得の為に私兵を洞穴に潜らせるが それはギルドとは別枠じゃ
国に仕える貴族に仕える自分達は偉い・・と 勘違いする輩も多いからな しばしば冒険者と衝突する事もあるから気を付けるのじゃぞ?」
「採掘師に一任するんじゃダメなんですかね?」
「貴族も納税の義務があるからの 自治領にダンジョンが少ないとどうしても経済に格差が生じる そこでダンジョンのある領地の貴族と契約をして私兵を送り込んどるのよ 契約をした貴族やその私兵の住居として貴族街が出来たと言うのがあらましじゃな」
「貴族も貴族でやる事があるんですね 税金で悠々自適に暮らしているものとばかり思っていました」
「言うなれば経営だからな 中には失敗する奴もおる」
僕にとっての世界は自宅周辺の旧市街から大通り沿い。コドリン洞穴までとその反対方向の牧場までの一本道。
後は近間の雑木林が精々だったのが、こうして話を聞く内に段々と頭の中の地図が広がりをみせていくのを感じる。
それにしても・・・
「馬車に乗ってから大分経つと思うんですが まだ着かないのですか?」
「庶民と共に生活するのは貴族の沽券に関わるのだそうだ 連中は連中で固まって町を作っとる感じじゃな
実際中には商店もあるし 生活に欠かせないものは大体揃っとるよ
お主に見せられんのが残念だが この前まで小さかった建物が今日には立派になっておる そうすれば今度は隣 つまるとこ貴族街とは見栄と対抗意識で肥大化した区画よ きっとこれからも変わらんじゃろうな」
馬車が目的地に停車するとランドルフさんはズカズカと降りて半ば苛立たしげに扉を叩きだした。たぶん相手方を快く思っていないのだろう。それが態度に表れている。
激しいノックからさほど間を置かず1人の男性が扉を開けると「どちら様ですか?」と聞いてきた。その色は「面倒な客が来た」みたいな色になっている。まぁ仕方ないよね・・・
「ギルド長ランドルフがバウゼン伯爵に面会を求めてやって来た 取り次ぎ願いたい」
「アポイントメントはおとりになられておりますでしょうか? 基本的に約束のない方を当主様に取り次ぐ訳にはまいりませんので」
「冒険者のギルド長の立場は基本には当てはまらん それに此方は緊急の用件じゃ」
「・・・左様ですか ではそちらで少々お待ちください」
と言うと扉はばたりと閉じられた。別に恭しく歓迎されたい訳ではないのだけど、客なら客で部屋に案内するなりしないのだろうか。平民の僕でも「どうだろう」とは思う。
そのやや薄情な態度に嫌な予感はしてたけど、結局僕達が屋敷の中に招かれたのは僕の肌から日の暖かさ消えた時刻だった。
「旦那様がお会いになるそうです」
僕が屋敷に足を踏み入れて最初に気になったのが複数のスパイスの香りだ。大通りにある香辛料を扱う店と同程度が備蓄されてるのか、一瞬露店でもあるのかと勘違いした。
ちなみにハルメリーにとって香辛料とは輸入品である為、店舗に並ぶ際には中々良い価格になっている。それだけでここの財力を知るには充分だ。
伯爵様はグルメなのかな・・・
半円を描く様な階段を登ると今度は地面が柔らかく沈み込む感覚に変わった。1階とは違いおそらく絨毯が敷き詰められているのだろう。それがずっと長い廊下となって続いている。管理が大変そうだ。
「旦那様 ギルド長ランドルフ様がお見えになりました」
数度のノックの後通されたその部屋は巣窟だった。
一際大きな部屋に四方を取り囲む様に人が配置され、そのどれもが鉄で出来た何かを身に付けている。
こんな大勢で出迎えてくれるのは痛み入るけど、敵意やら嘲笑やらの感情をもう少し抑えていただけると有難い。
しかしその中心にいる人物。この中でも彼の感情だけは重い何かだと言う印象。例えるなら頑固な汚れとか錆とかそんな感じ。
「これはこれは お待たせしてしまって申し訳ない ちょうど食事の時間だったので そちらを優先させていただいた」
「此方は緊急と申し上げた筈じゃが?」
「ふむ もしそちらが言うところの緊急が 此方の思う緊急と同義であるなら そちらの言う緊急は緊急足り得ない 何故ならその緊急が起こる前に 私が行動を起こしたのだからな」
ややお歳を召した声。しかし途轍もなく不遜な感情。人を待たせた事に何とも思ってないようだ。
むしろそんな僕達の様子を楽しむまである。
「ならばせめて事前に説明があってもよかったのではないかの ギルドの玄関先であの様なパフォーマンスを披露してくれたお陰で ギルドでは依頼が滞って難儀しているのじゃが?」
「然り それは商人町民も同じ事 ギルドが昨今の事情を解決しないが為に 彼等も生活に喘いでおる
普段報酬がどうのと宣う愚鈍な冒険者共も 金の延べ棒でひっぱたけばホレ見た事か 喜び勇む犬の様に駆けずり回りおる」
「その犬が褒美の餌欲しさに勝手に走り回っとるお陰で此方の仕事が捗らん 貴殿の行いは 店先で客を奪う行為と同じじゃ こうなった以上その間の穴埋めは それなりにしてくれるのじゃろうな」
「これは異な事を 冒険者の本分は冒険にこそある 洞穴に行って帰って来るなど それこそ私の私兵でも出来る事 そなたは自分の飼い犬が 獲物を咥えて帰って来るのをただ待てばよい」
「ほうほう金貨600枚に相当する獲物か それはどんな怪物か 是非ともお教え願いたいものじゃ」
「モンスターの異常行動を引き起こす元凶よ さぞ珍しい珍獣であるに違いあるまい おらぬならおらぬで モンスターどもが一掃されればそれで善し どの道ハルメリーが抱える問題はこれで解決されるであろう?」
「つまり 他意はなくただ一心に町の為 乗り出してくださったと・・・ そう言う事でよろしいのかな?」
「左様 であるな?
─────────プルトン」
バウゼン伯爵が隣にいた人物をそう呼んだ時。僕は自分の耳を疑った。ここ最近の僕の中の気になる人物トップが今目の前にいる。
先程の言葉は聞き間違いでないか。僕は何度も何度もたった今耳にした言葉を頭の中で反芻した。
「は・・はい! その通りで御座いますバウゼン卿! 私も自分の荷を冒険者に護衛させても 失敗に終わる事が何度あった事か!
にも拘わらずギルドは雀の涙ばかりの保証しかしない! この事態をなかなか注視しないギルド そして物資の届かない民の悲鳴に業を煮やした伯爵様の御手が 多くの冒険者を突き動かしたのです
本来なら伯爵様の御心に感謝し 感涙に咽び泣き頭を垂れるべきところを 客を奪われた穴埋めをしろとは よくもまぁ いけしゃあしゃあと口に出来たものだな!」
プルトンさんはここぞとばかりにギルドを捲し立てるけど、何だかご主人様に気に入られようとキャンキャン吠える犬みたいになっている。
たぶん彼も彼で切羽詰まった事情を抱えているのかもしれない。同情はできないけど。
本来ならラトリアの件について直ぐにでも言及したいところだけど、とてもそんな空気じゃない。
とは言え件の探し人ことプルトンは、バウゼン伯爵の別宅に引き篭もっている事実が判明した。まぁ取り敢えず一歩前進と言ったところか。
「確かに冒険者の失態は耳の痛い話だ・・・ ではどうじゃろう ワシからも提案だが金貨600枚の栄誉をここに居る私兵達にも分けてやったらどうじゃ?
存外早く解決するかもしれんぞ? それとも鬼の居ぬ間に穴掘りでそれどころではないか?」
「きっさま~・・・ よくもぬけぬけと! こやつらは伯爵様と伯爵様の財産を御守りする名うての強者達だ! お前ら冒険者がする土いじりに興じている暇など無いわっ!!」
「これこれ 熱くなるなプルトン ここの兵を使えば結果も違っていただろうが 過ぎた事をあれこれ言っても詮無い事よ
確かにそなたの言にも一理ある だが物事には優先順位があり 押し並べてもこやつらはここを守るのが相応しい
しかしいち早く情報が入る組織がギルドであるなら ギルドこそ先んじて何らかの対策を講じるべきではなかったのかな?」
「いやはやその通りじゃな ギルドもモンスター分布の報を受けてから騎士団に派遣を要請したのだが どうにも隣の領地で足止めを食っておって 中々此方に来れない状況らしい
しかし・・・
ここで1つ間違いを訂正したいのじゃが ギルドが守るのはあくまで冒険者とその家族 民を守るのが国であり そして国に支える貴族のお勤めと心得ていたが?」
「ぐぬぬ・・・ 貴様は! 伯爵様が自らの役目を放棄しているとでも言いたいのかっ!」
「はっはっは よいよいプルトン 此にて互いに聞くべき事は聞いた つまるところすべき事をした結果がこれなのだ 後は静観する他あるまい?」
「確かに・・・ 今はの」
こうして話し合いは両者の意見が一致したのか物別れに終わったのか曖昧なまま僕達は帰路につく事となった。
「それで お前の目にはどう映ったのだ?」
「そうですね バウゼン伯爵は終始僕達を嘲笑っていたと思います まるで理由など知ろうが知るまいがどうでも良い と言った感じの余裕がありました
一番気になったのが隣にいたプルトンさんです 彼は一見敵意を剥き出しにしていましたが その内心は酷く怯えていた様に感じました
それはモンスターが自分の荷を襲うのを恐れる と言うより まるで自ら犯した悪事が露見するのを恐れている と言った類いの当事者の怯えと同質です
後は・・・ プルトンさんがバウゼン伯爵に名前を呼ばれた時 彼の中の感情はバウゼン伯爵に対しての憎悪で彩られた事でしょうか・・
それを悟られまいと僕達に当たり散らす事で誤魔化している様でしたが そこら辺は商人の機転でしょうか」
帰りの馬車の中は互いの意見交換会となった。僕の答えに気を良くしたのかランドルフさんの口は幾分滑らかだった様に思う。
「どうにも腑に落ちんな・・・ ヤツの私兵が言う程の強者なら 自ら問題を解決して栄誉を我が物にすればよかろうに
かと言って冒険者を出払わせた間の洞穴の独占と言う訳でも無い プルトンに言わせれば それらを差し置いても屋敷にとどまり守りを堅固にする理由は何か・・・」
「仮に・・・ モンスターの行動に何か理由があったとしたらどうでしょう」
「その根拠は?」
「はい モンスターは何かを探している・・とした場合 辻褄の合う部分が生まれます
まず 伯爵は手柄をあげる好機にもかかわらず 私兵を使わず金貨600枚で冒険者を事にあたらせました
金貨600枚が貴族にとってどれ程の価値なのかは分かりませんが 私兵を使わずそれでいて何もせず屋敷を守らせている それではまるで襲撃に備えている様ではありませんか
プルトンさんの怯え方も今回の事件と関係しているとした場合 屋敷で伯爵の私兵が守っているのは財産ではなくプルトンさん
おそらく伯爵は金貨600枚を擲ってでもプルトンさんとの繋がりを重視した
奇しくも彼は問題の起こった件の領地の人間です やはりそこに問題の原点があるのではないでしょうか」
「成る程 やや強引ではあるがそう言われると説得力はある しかし小僧 よくプルトンが隣の領の出身と知っておったな
しかも冒険者に荷を護衛させるのは商人だけではないにもかかわらず ヤツを商人と断定した お前・・・いったい何を知っておる?」
これが重圧と言うものか。ランドルフさんの質量を持った空気が僕を馬車の隅へと押しやった。
「そ・・ それはですね・・・」
これは個人の恥部となるので話すべきではないのだけど、相手がギルド長と言う事もあったので僕はラトリアに関する話を打ち明ける事にした。
決して圧力に屈した訳ではない。
「ポリアンナのやつ 小僧がバードラットと関係をもったとやたら心配をしていたが そういう理由か・・・
その情報込みでの推測と言う事じゃな? 成る程プルトンも業が深い人間だ 何処で怨みを買っていてもおかしくはない」
「ランドルフさんはプルトンさんの事をご存知でしたか」
「当たり前じゃ 冒険者にも大なり小なり被害を被った者がおるからの ようやく裁けると思った矢先 したり顔であの伯爵がかっさらっていきおった これは今回の件も含め 貴族街にも目を光らせておいた方が良いのかもしれんな」
彼等に企てがあったとしてもギルドの目が注がれていれば下手な動きは出来なくなるだろう。
仮に僕の推測が正しかったとしてプルトンさんは何に怯えているのだろう。
プルトンさんとて壁に物をぶつければ跳ね返ってくる事は理解できるだろうに、ここに来て怯える彼の心情とは如何なるものか。
人に業が深いと言わしめる彼の人生は、もしかしたら僕の目と同じ様に暗闇に閉ざされているのかもしれない・・・




