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35・ミストリアのお悩み相談

前回のあらすじ


マルティナが本格的に冒険者デビューを果たした。

 どうしよう。


 私から溢れ出る本心が止まらない。


〔このベット硬いわね〕

〔この部屋もっと広くならないかしら〕


 お世話になってる身の上なのに心がどんどん頭上に浮かぶ。


〔でも皆と過ごす時間は楽しいわよね〕なんて言葉を付け足したところでもはや言い訳にしかならない。


 どうしてスキルがこんな事になっているのだろう。水の魔法なのは分かるけど・・・ もしかしたら“失語さん”の能力かしら?


 2人の合作って事?


 でも他人にまで害を及ぼしてしまったらそれこそマイナス等級になってしまう。何とかしなくては。


 でも・・・ 


 これが2人の合作だったとして良かれと思ってやってるのよね? 少なくとも困らせてやろうなんて気持ちは感じない。


 それに折角元気になったところに「それはダメよ」とは言い辛い。注意をしてしょんぼりさせてまた塞ぎ込んでしまったらどうしよう。


 こんな時こそ誰かに相談するべきだろうけど、オフェリナさんもアネット達もお出掛けしていて、今は私と小さなソフィリアしか家に居ない。


 してみるかソフィリアに。


 精神年齢もスキルさんと同じくらいだし。


 まぁ解決はしなくとも方向性は掴めるかもしれないし。


 私は言葉が話せない。ソフィリアも文字が読めないので“水魔法さん”に私の言葉を代弁してもらう事にした。


 目標はソフィリアと会話をさせる事で、これがいかに不味い状況であるとスキルさん達に自覚させる事。


 上手く誘導できると良いのだが、自分の都合に無垢な子供を利用するみたいで心苦しい。



〔ソフィー ギルドでお友達はできたー?〕

『ソフィー ギルドでお友達はできたー?』



 このように私が水文字を出して“水魔法さん”がそれを話す。成立するだろうか。



「うん!」


『みんな仲良しー?』


「う~ん キー君とかカイ君とはあまり仲良くないの」



 良かった。会話が成立した。


 しかし何故こんな切出し方をしたかと言うと、以前ギルドの託児所に私も放り込まれた事があったから。


 そこで目にした子供達の人間関係に、どうにも私の人生経験と符合した点が見られたからである。


 気の合う人とそうでない人。


 それがこんな小さな子供達の中にもしっかりと存在していたからだった。



『何でだろー お話ししたり遊んだりしないの~?』


「お話ししてもね 何だが意地悪するの だからいつもケンカになっちゃうんだ~」


『えー 何でだろー』


「わかんない」



 子供であるなら素直になれない照れ隠しもあるのかもしれないが、人はいつ人を嫌う感情を身に付けるのか疑問が浮かぶ。



『それはきっと仲良くしたくても恥ずかしいから 意地悪しないと素直にお話ができないんだよ~ ソフィー可愛いもんっ』


「そうなの?」


〔そうよ! ソフィリアとっても可愛いもの! このまま私の妹にしてしまいたいくらいだわ!〕



 おっと本音が・・・ 急いで頭の上の水を散らして会話に戻る。



『でも意地悪されるのは嫌だよね~ 嫌な事言われちゃうと つい自分も酷い事言い返しちゃうもん』


「うん・・・だってソフィーにはお父さんがいない とか アネットおにーちゃんのことも悪く言うんだよ?」


〔ちょっとその子お家に連れてきなさい? じっくりと腰を据えてお話ししなければならないわね・・・〕



 バシャバシャ・・・


 まぁそこら辺は子供だからか見たまま聞いたままをストレートに表現してしまうのだろう。


 良いか悪いかの二択。


 もっともその良し悪しも人によって変わるのだけど・・・



『でもそれが本当の事でも 言ってはいけない言葉ってあるもんね~


 ソフィーは嫌な事言われたからって~ 自分も酷い事言っちゃダメだよ~? そしたらもうその子と普通にお話出来なくなっちゃうから~』


「うん 分かった・・・・でも~・・・ 嫌なことを言われたとき ソフィーはどうしたら良いの?」



 そこが私の失敗した部分。


 正直今でも正解が分からない。でも答えは自分の中にしかない。思いの丈をぶつけるか。冷静に答えるか。はぐらかすか。


 私はぶつけた。


 その結果が今の状態だ。


 力任せに打ち返しては相手の思う壺でしかない。失敗から学べたのは唯一それだけ。



『そう言う時は 言われた事の良い部分を見付けるんだよ 例えお父さんがいなくっても ソフィーは毎日元気だし 目が見えないアネットおにーちゃんも 冒険者になれたんだって


 それを優しくやんわり言う事が出来たなら きっとケンカにならないと思うの~』



 私もそう願いたい・・・



「それってアネットおにーちゃんみたいだねっ おにーちゃんね いつも優しくしてくれるんだよっ」


『じゃ~ アネットお兄ちゃんはお手本だねっ』


「うん! ソフィーもおにーちゃんみたいに優しい子になって 大人になったらおにーちゃんとケッコンするんだ!」


〔え?〕


『え?』



 え?


 まぁ・・・結婚は兎も角。


 思い起こせばアネットも不思議な少年だ。


 自分の収入が減るにもかかわらず、薬草の大半を少女に分けたり、あの町長の息子相手にも思いやる気持ちを忘れない。


 そんな彼だからギルドの一室で差し出された手を私は無意識に握ったのかしら。


 私と話をする事でこの子の迷いが晴れたように、私も人と会話をする事で意志疎通の大切さを再確認する。


 そしてスキルさんは・・・



『〔ミストリアは心の声が文字になると困る?〕』



 どうやら“失語さん”が疑問を呈してくれたようだ。



〔それが優しい言葉なら差し障りがないのだけど 私の心根は自分が思っている程綺麗ではなかったわ


 それではいずれ誰かを傷付けてしまう 心は秘めるところがあるくらいで丁度良いのよ〕



 もしかしたら私も知らず人の気持ちを損ねる言動をとっていたのかもしれない。そんな私の無自覚が状況を悪化させた可能性だってある。



〔でも会話は重要だわ 人は言葉と表情や態度で心の機微(きび)を察するものだもの〕


『〔ボクね 声が怖かったんだ 虫や鳥の鳴き声にも意味はあるんだろうけど 人の言葉はね 複雑なの・・・


 優しい言葉の裏に悪意があったり 厳しい言葉の中に優しさが隠れていたり 怒号や罵声にも色んな感情が渦巻いて 言葉が理解出来ちゃう分 耳を塞ぐ事ができないの


 言葉はボクの心を惑わす絵筆で 見ている景色を歪めちゃうから ボクは口を(つぐ)むんだ


 だって僕の言葉が いつか誰かを傷付けちゃうかもしれないし・・・〕』



 マイナス等級と忌み嫌われた“失語さん”は繊細で心優しく、そして優しい分傷付きやすかった。



〔失語さんは・・・私の側にいて・・・辛くない?〕


『〔ボクはミストリアとなら側にいられるかもって思ったの 何と無く自分と同じなのかなって・・・ 僕も誰かと一緒にいたかったんだ


 でも・・そうする事でミストリアと水魔法さんとの絆を奪っちゃった 何度も何度も謝りたかったけど ボクの声が届かないのが悲しかった


 ボクの方こそミストリアに聞かなきゃいけない言葉なんだよ〕』


〔誰かと一緒にいたい気持ちなら分かるわ 学園にいた頃は頑なに周りを避けていたけれど


 本当は誰かと一緒にいたかった 私は失語さんと一緒なの 人の言葉が怖い でも嫌われたくない嫌いたくない


 辛かったのは昔の自分 それに失語さんと出会えたからこそ過去を改められる自分がいるの あなたがいなければこんな気持ちにはなれなかったわ


 だからあなたと出会えて良かったと思ってる むしろ今が幸せよ?〕


『〔ふ・・・ ふえぇぇぇ~~~~〕』

『ボクも~~~~~~~』









 時刻は夕刻となってオフェリナさんが帰宅した。今は可愛いソフィリアと一緒に家事に勤しんでいる。


 私も彼女達の輪に加わるが以前の様な疎外感を感じない。いつの間にかここが居場所になっているからだろうか。


 しかしそうなったらそうなったで今度は彼等の気持ちが気になり始めた。私の「嫌われたくない」と言う部分が出てしまったのか。


 それを自覚すると不安な気持ちが溢れてくる。



〔はぁ~ 人の心が分かれば 少しは気も楽なのに・・・〕


『〔ミストリアは人の気持ちが知りたいの?〕』


〔そうね・・・他人の心の奥底に何が潜んでいるのかそれを覗くのは怖いけど 相手の思っている事が分かれば不要ないざこざにならずに済むわ


 それは自分の為でもあるけれど 人の為でもあると思うの〕


『〔うん それが皆の為になるのなら ボクも頑張ってみる〕』

『お~~~!』



 スキルさん達と雑談をしていると、アネットとマルティナが冒険者の時間を終えて帰宅した。


 その際アネットと不意に目があった気がしたけれど、私は急いで目線をそらして見ないふりをする。


 どうしよう。


 執拗にアネットを意識しちゃう。


 彼は普段何を思っているんだろう。とても気になる・・・ 気になるけど・・・


 無理っ!


 無理無理無理無理無理無理無理~~~~!


 もしアネットの心が私の望まない答えで埋まっていたらどうしよう!


 知るのが怖い! 無理っ!


 そうだっ! マルティナ!


 彼女は普段何を思っているのだろうか!










 その後、私と彼女のジト目は互いに交錯する事になる。





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