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第六章 高級アイスの甘さは、敗北の味がする

「ピコん、とスマホが鳴った」



「……はぁ。この世のすべてを破壊する魔王を倒したのに、私の心は1ミリも救われないわ……」



「『あいり、あんたのその残念な脳みそ、GW中もずっとフル回転で後悔の自家発電してんの?』って、さっき一ノ瀬からLINEが来たけどさぁ! 当たり前でしょ! 私のGWの予定、画面の中のモンスター討伐しか入ってないんだから!」



「あーあ、期間限定の高級ピスタチオアイス、めちゃくちゃ美味しい……。五百円もしたのに、口の中で切なさの味がするわ。今頃みんなは、太陽くんが企画した山でBBQして、お肉とか焼きながらキャッキャウフフしてるのよね……。本当なら私もその中に混ざって、マシュマロとか焼いて『あ、焦げちゃった……』『ドジだな、貸してみろよ』みたいなイベントが発生してたはずなのに!」



「なのに私の口ときたら! 『山に埋めるぞ』って何よ!? 殺人予告じゃん! 完全に未解決事件の犯人側が吐くセリフじゃん! あんなに震えてた太陽くん、絶対に私のこと都市伝説のアレだと思ってるわよ! バカ! 私のバカ!」



「……っていうか、よくよく考えたら、私この一ヶ月で何人の男子を奈落の底に突き落としたのよ? 野球部の東雲くん、ヤンキーの荒金くん、チャラ男の神宮寺先輩、雨の日の速水くん、そして太陽くん……。全員ジャンルが違う超弩級のイケメンたちじゃないのよ! しかもみんな、私のこの指輪ジャラジャラで黒髪インナーカラーの、威圧感MAXの見た目に勇気を出して特攻してきてくれたのに……!」

「私の鉄壁の防衛システムのせいで、全員もれなくトラウマ植え付けられて終了よ。私、来期の生徒総会で『歩く害悪』として指名手配されるんじゃないかしら……。ゲームの私のキャラはこんなにレベル高いのに、現実の私の恋愛ステータス、マイナス一億よ! コミュ力低すぎて初期街から一歩も出られないわよ!」



「画面の中の魔王は、剣を振れば倒せるからいいわよね。なんで現実の『宜しくお願いします』の八文字は、どんなにコントローラーのボタンを連打しても口から出力されないのよ……!」



「……あ。でも、荒金くんに『フる時、顔赤い』って言われた件といい、今日のゲームのチャットで、クラスの男子が『山崎さん、意外と家では猫の動画とか見てそうだよな』って噂してたって一ノ瀬が言ってた件といい……。もしかして私の『中身のクソザコ乙女』、うっすら外に漏れ出してる……!?」



「……ひっ! 嘘でしょ、もしバレてたら『あいつ中身ピュアのくせに、あの見た目でイキって断ってんの?』って思われてる!? うわあああああああ恥ずかしい! アイスが溶ける! 恥ずかしすぎて頭がオーバーヒートして、ピスタチオアイスがドロドロの液体になっちゃう! もうGW明けても学校行けない、このままゲームの世界に永住するのよおおお!」



「パクッ……もぐもぐ……ふぅ。……ダメ、アイスが美味しすぎて現実逃避も捗らない。……よし、GWが明けたら、次こそは絶対に、相手が喋り終わる前に『はい!』って食い気味に言うのよ、あいり……!」


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